カプノグラム(波形表示)付カプノメータ(呼気終末二酸化炭素ガス分圧モニター)活用のすすめ
- 掲載:2020年03月
- 文責:クリティカル・ケア部

カプノメータは、呼気に含まれる二酸化炭素ガス分圧を測定するモニターです。呼気から吸気に転換する直前の二酸化炭素ガス分圧(呼気終末二酸化炭素ガス分圧:End Tidal CO2:EtCO2)を測定値として表示します。単位はmmHg(ミリメートル水銀柱)あるいはkPa(キロパスカル)が用いられます。日本では主にmmHgで表示されるカプノメータが使用されています。
カプノグラム(下図)は測定された二酸化炭素ガス分圧の変化をグラフとしてあらわしたものです。

正常なカプノグラム
第Ⅰ相 : | 吸気が終わり呼気に転換、解剖学的死腔内のガスが呼出されるため二酸化炭素ガス分圧はほとんど上昇しない。 |
---|---|
第Ⅱ相 : | 肺胞内からのガスが呼出されはじめるため、急激に二酸化炭素ガス分圧が上昇。 |
第Ⅲ相 : |
肺胞からのガスがほとんどを占めるため二酸化炭素ガス分圧は緩徐に上昇。 |
第Ⅳ相 : |
呼気から吸気に転換、二酸化炭素ガス分圧は基線に戻る。 |
※第Ⅲ相の最後、吸気に転換する直前(赤丸部分)の二酸化炭素ガス分圧がEtCO2値として表示される。
体内で産生された二酸化炭素は血流により運搬され、肺胞でガス交換され呼気として排出されます。肺血流が正常であれば、動脈血二酸化炭素ガス分圧(PaCO2)と呼気終末二酸化炭素ガス分圧(EtCO2)は相関します。言い換えると、肺血流に異常がないにもかかわらずEtCO2の値が異常を示す場合は、換気に何らかの異常があるということになります。
血中の二酸化炭素ガス分圧を知りたい場合、血ガスの値がもっとも信頼できるため、採血して血ガスを分析する必要があります。特に重症の患者さん、急性期の患者さんでは頻繁に確認する必要がありますが、頻回に採血して血ガスを分析することは現実的ではありません。
また、救急処置中に頻回に採血して血ガスを分析することも時間的な問題などもあり現実的ではありません。カプノメータは非侵襲的・連続的にEtCO2を測定することができます。継続的に患者さんの呼吸状態や換気状態をモニタリングしたい場合には、血ガスの代用としてカプノメータが使用されます。
日本麻酔科学会の『安全な麻酔のためのモニター指針』では、全身麻酔ではカプノメータを使用することが推奨されており、麻酔科医は全身麻酔中には必ずカプノメータを使用し、カプノグラムを見て患者さんの呼吸状態や換気状態をチェックしています。
救急領域での活用
カプノメータや比色式二酸化炭素検出器を気管挿管時にチューブ位置確認のひとつの手順として使用することは広く実施されています。食道誤挿管は換気不全に直結し、放置されると致死的となり得ますので、確実に確認することが重要となります。
JRC蘇生ガイドライン2015でも、『CPR中の気管チューブの位置確認や連続モニターには、身体所見に加えて、波形表示のある呼気CO2モニターを用いることを推奨する(強い推奨、低いエビデンス)。』と記載されています(JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版、第2章成人の二次救命処置(ALS)24ページ)。
『波形表示のある呼気CO2モニターは、CPR中の他の用途(例えば、呼吸数のモニターやCPRの質の評価)にも使用できる可能性を鑑みて強い推奨とした(同26ページ)とも記載されています。
チューブの位置確認以外の用途には何が考えられるでしょうか?
- 1. バッグマスク換気中の換気確認
バッグマスク換気中でも、換気ができる程度のマスクフィットが得られれば、換気による呼気CO2分圧の変化をカプノグラムで確認することができます。ただし、一般的には死腔の増大によりEtCO2は低くなる傾向があります。 - 2. CPRの質の評価
CPRの質が低い(循環血流量が少ない)とEtCO2の値は上昇しません。
これによりCPRが適切か否かの判断ができる可能性があります。 - 3. 過換気の防止
呼吸回数(換気回数)が表示されますので、換気回数を確認しながら換気を行うことができます。
これにより過換気を防止できる可能性があります。 - 4. 気管チューブ位置の継続的なモニタリング
挿管時だけでなく、挿管後の継続的なチューブ位置のモニタリングが可能です。搬送時など気管チューブのずれや抜管が発生しやすい環境下では有用です。
確実な気管挿管による気道確保で、非同期CPRを行うことができますので、CCF*改善にも役立てることができます。(*CCF:胸骨圧迫施行時間) - 5. ROSCの推測
自己心拍再開によりCO2の値が急峻に上昇します。CPRを中断せずにROSCを判断できる可能性がありますので、胸骨圧迫中断時間の最小化が可能になります。

人工呼吸器を使用する部署での活用
人工呼吸器で呼吸管理を行っている病棟では、PaCO2を継続的にモニタリングする必要がある患者さんがいらっしゃいます。急性期や重症の患者さんが対象となりますが、血ガスの値がもっとも信頼性が高いため、このような患者さんでは、頻回に採血して血ガスを分析する必要が生じます。患者さんには侵襲が大きく苦痛を伴うものになります。経皮血液ガスモニタを使用することで、このような苦痛を軽減することができますが、一般的には複数台数を用意することが難しいので、複数の患者さんで同時に使用できず、患者さんを選択しなければならないこともあります。
カプノメータは簡便に呼気CO2値を測定でき、PaCO2との相関性もありますので、人工呼吸器管理下の患者さんの呼吸状態を把握する目的で、血ガスや経皮血液ガスモニタの代用として使用することも可能です。
また、短時間のスクリーニング的な使い方であれば、複数の患者さんで効率的に使用することも可能です。
在宅で人工呼吸管理をされている患者さんの呼吸管理でも、カプノメータは有用です。院内に比べさらに採血しづらい環境になります。また、訪問診療では大きなモニターを携行することは困難ですが、カプノメータであれば比較的携行しやすく、より簡便に患者さんの呼吸状態の把握ができます。
体位変換時やベッドとストレッチャー間の移乗・院内搬送時は気管チューブの抜去や事故抜管の危険性が高くなります。
このような時も、カプノメータを使用すれば、見かけだけではわかりにくいチューブの抜去や事故抜管を早期に発見できる可能性があります。
EMMAチラシ_事故抜管対処 ※pdfが開きます(940KB)
カプノグラムの重要性
カプノグラムをチェックすることで、EtCO2値だけでは判断がしづらい気道状態や呼吸状態を把握することが可能になります。
カプノグラムのパターンで気道状態を推測することができます。
![]() |
リーク(カフのエア漏れ、チューブの抜去など) |
![]() |
狭窄(痰の詰まり、チューブの閉塞など) |
![]() |
自発呼吸の出現(鎮静が浅い、人工呼吸器の設定が不適切など) |
※上記3つのカプノグラムではEtCO2の値は同じ値が表示されます。 |
|
![]() |
食道挿管 |
マシモEMMA
EMMAは小型・軽量カプノメータです。
小型でありながら、カプノグラムも表示します。
携帯性に優れ、様々な場所で使用することができます。
ケーブルやサンプリングチューブもありませんので、
セッティングも容易です。
新着一覧
イベントスケジュール
保守点検技術講習会スケジュール
現在開催の予定はございません
展示会・セミナースケジュール
日本蛍光ガイド手術研究会第5回学術集会
2022年9月16日 ~ 9月17日
コングレススクエア日本橋
第25回⽇本脳低温療法・体温管理学会学術集会
2022年9月23日 ~ 9月24日
ティアットスカイホール(羽田空港第3ターミナル 4階)
第13回日本臨床睡眠医学会学術集会
2022年10月7日 ~ 10月8日
奈良春日野国際フォーラム
第31回日本形成外科学会基礎学術集会
2022年10月13日 ~ 10月14日
岡山コンベンションセンター
第50回日本救急医学会総会・学術集会
2022年10月19日 ~ 10月21日
京王プラザホテル