セミナー情報

IMIオンラインセミナー「PDE®-GEN3を使用した乳癌センチネルリンパ節生検の手技と乳癌腋窩手術の最新情報」ご報告 及びオンデマンド配信のご案内

  • 掲載:2024年04月
  • 文責:急性期ケアエリアチーム
IMIオンラインセミナー「PDE<sup>®</sup>-GEN3を使用した乳癌センチネルリンパ節生検の手技と乳癌腋窩手術の最新情報」ご報告 及びオンデマンド配信のご案内

2024年3月6日のWEBセミナーにおいて、関西医科大学附属病院乳腺外科 杉江 知治 先生より、PDE®-GEN3を用いた乳癌センチネルリンパ節生検のポイントについて動画を交えた解説、乳癌腋窩手術の最新情報についてご講演いただきました。

併せて、浜松ホトニクス株式会社 システム事業部 システム営業推進部 営業推進2G 医療応用機器 主任部員 前田 英樹様より、2023年に販売開始した【蛍光観察カメラシステム PDE®-GEN3】の特徴をご紹介いただきました。

なお、本セミナーは、期間限定でオンデマンド配信を行います。お申込方法は記事の最後にございます。少しでも多くの先生方にご視聴いただければ幸いです。

アイ・エム・アイ株式会社 
オンラインセミナー

杉江 知治 先生
開催日時 : 2024年3月6日(水)
講演 :

「PDE®-GEN3を使用した乳癌センチネルリンパ節生検の手技と乳癌腋窩手術の最新情報」
杉江 知治 先生
関西医科大学附属病院
乳腺外科 教授

近赤外蛍光による生体イメージング

インドシアニングリーン(以下 ICG)は、765nmの励起光によって、780~840nmの近赤外波長領域の蛍光を発します。近赤外蛍光イメージングシステムは、励起光源と近赤外光を検出するセンサー、特定の光を遮断するフィルターから構成され、835nmを中心波長とする蛍光を画像化しています。ICGの蛍光特性とイメージングシステムによって、体表下のリンパ流や血流の動態を観察することができます。

ICG投与のコツ

関西医科大学附属病院で行われているICG投与の手技は以下の通りです。

  • 2.5~5mg/mLに希釈したICGを準備する。
  • 投与量は、0.5~1mL程度。
  • 色素法を併用する場合にはインジゴカルミン1mLを投与する。
  • 放射性同位元素(以下RI)と併用する場合には色素法の代わりにICGを使用する。
  • 腫瘍の位置に関わらず、乳輪外縁の皮下または、真皮内に27Gの皮内針を用いて投与する。
  • 乳房部分切除で乳輪切開を行う場合には、腫瘍区域とは離れた部位に投与する(その後の手術操作が容易になる)。
  • ICG投与後は注入部位をよくマッサージする(5分程度)。
① ICGがリンパ管に流入するようにマッサージを行う。
② リンパ管の収束点より、約2㎝程度頭側の腋窩中線上の皮膚割線に沿って切開線を決定する。
③ 皮切を置き、皮下脂肪を剥離していく。この際は一気に切り込むことなく、丁寧に剥離していくことが重要である。
④ 剥離を進めていくと、筋膜下に蛍光シグナルを確認することができる。センチネルリンパ節はこの筋膜下にある為、あせらず丁寧に剥離を進めていく。
⑤ 開創器で創部を広げると強い蛍光を発するリンパ節が確認できる。
⑥ リンパ節把持鉗子にてリンパ節を把持しながら周囲を剥離していく。
⑦ 直角鉗子で根部を把持し、リンパ節を摘出した後、断端を結紮する。
⑧ 最後に摘出したリンパ節の蛍光を確認する。(OVERLAYモード)

RI法とICG蛍光法の比較

本試験では、RI法(テクネシウム)とICG蛍光法のセンチネルリンパ節生検の各手法による同定率を比較しました。
821例の検討では、センチネルリンパ節の平均摘出個数は、RI法で1.7個、ICG蛍光法で2.3個と、ICG蛍光法が多い傾向にありました。
センチネルリンパ節の同定率は、RI法で97%、ICG蛍光法で97.2%。リンパ節陽性転移例180例においても、RI法90%、ICG蛍光法93.3%と、ICG蛍光法はRI法と同等の高い同定率を示していました。また、RI法とICG蛍光法を併用するデュアルマッピング法では、単独法と比べて、同定率は有意に向上していました。

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各手法の同定率と偽陰性率

「新規及び従来の乳癌センチネルリンパ節生検の手法に関するネットワークメタ解析」では「ICG蛍光法」、「超常磁性酸化鉄を用いたMRI造影法」、「ナノ粒子超音波造影法」、「RI法(テクネシウム)」、「色素法」、「RI・色素併用法」によるセンチネルリンパ節同定率と偽陰性率を算出しています。
ICG蛍光法は、他の手法と比べ、高い同定率と低い偽陰性率を示しており(同定率;97.9%、偽陰性率;0.6%)、最も検査精度の高い検査方法であることを示しています。

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JSFGSガイドライン(2023年)

日本蛍光ガイド手術研究会では、2023年4月にICG蛍光法の手技についてガイドラインを公開しました。

CQ1:乳癌センチネルリンパ節生検におけるICGの至適投与量は?

• ICGの投与濃度は2.5~5mg/mLとし、0.5~1mL程度を投与する。症例によってはこれ以下の濃度に希釈することを考慮してもよい。(弱い推奨)

CQ2:乳癌センチネルリンパ節生検における、ICGの適切な投与部位と観察方法は?

• ICGは腋窩手術開始直前に乳輪下や傍乳輪部位に投与する。ICGの投与経路は皮内および/または皮下浅層とする。蛍光の観察は、国内で汎用されている近赤外線光観察システムを用いて行うことを推奨する。(弱い推奨)

CQ3:色素法にICG蛍光法を併用してセンチネルリンパ節生検を行うことは勧められるか?

• 色素法にICG蛍光法を併用してセンチネルリンパ節生検を行うことを推奨する。(強い推奨)

CQ4:ICG蛍光法単独でのセンチネルリンパ節生検を行うことは勧められるか?

• ICG蛍光法を単独でセンチネルリンパ節生検を行うことを推奨する。(弱い推奨)

CQ5:ICG蛍光法をRI法と併用してセンチネルリンパ節生検を行うことは勧められるか?

• ICG蛍光法をRI法と併用してセンチネルリンパ節生検を行うことを推奨する。(強い推奨)

乳癌の腋窩手術の縮小

「ASCOG Z011」や「AMAROUS試験」の結果から転移陽性のセンチネルリンパ節が2個までであれば、術後に放射線治療を行うことで、腋窩郭清を省略することが標準となっています。
また、「SOUND試験」では、超音波診断装置によって腋窩リンパ節転移が認められない早期乳癌症例では、センチネルリンパ節生検自体を省略することができる可能性が示されました。

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さらに、「ASCOG Z1071」、「SENTINA試験」では、腋窩センチネル陽性症例対象に、NAC(術前化学療法)によって、N0にダウンステージした場合、センチネルリンパ節生検によって腋窩リンパ節郭清省略の可能性が示されました。

SOUND試験概要

腫瘍径2㎝以下で、超音波診断装置及び細胞診でN0が確認された早期乳癌対象に乳房温存手術の際にセンチネルリンパ節生検を「行う群」と「行わない群」に割り当てられました。主要評価項目は、5年の無遠隔転移生存率(DDFS)、副次評価項目は累積遠隔転移数、累積腋窩再発数、無病生存期間、全生存期間が設定されました。
主要評価項目の5年の無遠隔転移生存率は、センチネルリンパ節生検群が97%、非手術群が98%。ハザード比:0.84。90%信頼区間(CI)の上限が非劣性マージン1.74を下回っており、非手術群の非劣性が検証されました。この結果からステージ1の早期乳癌では、術後放射線治療を行うことで、腋窩手術を省略できる可能性が示されました。

St. Gallen国際乳癌シンポジウム

昨年のSt. Gallen国際乳癌シンポジウムでは、内分泌療法の感受性が高い低リスクのルミナール型乳癌にて腋窩手術の省略が可能と思われる年齢について投票が行われました。パネリストの47%が70歳以上、12%が80歳以上を支持していました。一方、18%は年齢を問わず、センチネルリンパ節生検が必要と回答しています。

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cN+乳癌におけるNAC後のSN同定率

下の表は術前化学療法(NAC)によってN0にダウンステージングした、腋窩リンパ節転移陽性症例を対象にした海外の4つの臨床試験をまとめたものです。
4試験のセンチネルリンパ節の同定率は、80~93%で偽陰性率はいずれも10%を超えていました。しかし、デュアルマッピングやセンチネルリンパ節の摘出個数を3個以上にすることで、偽陰性率は10%未満となることが報告されています。

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メタ解析でも左側の図のように13%であった偽陰性率がデュアルマッピングを行うことで、10%に低下しています。また、右側の図のように、摘出個数が1個・2個・3個以上と増えることで、偽陰性率は23%・16%・7%と低下していることがわかります。

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乳癌診療ガイドライン(2022)

乳癌診療ガイドライン2022年版での推奨度は以下の通りとなっています。

CQ2a:術前化学療法の前後とも臨床的腋窩リンパ節転移陰性の乳癌に対してセンチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略は推奨されるか?

• センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略を強く推奨する。

CQ2b:臨床的腋窩リンパ節転移陽性乳癌が術前化学療法施後に臨床的腋窩リンパ節転移陰性と判断された場合、センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略は推奨されるか?

• C2b-1:センチネルリンパ節生検の結果のみによる腋窩リンパ節郭清省略を弱く推奨しない。

• C2b-2:TAS(Tailored axillary Surgery)*による腋窩リンパ節郭清省略は行うことを弱く推奨する。

TAS 偽陰性を可能な限り少なくすることを目的にTAD(Tailored axillary dissection) , SLNB, sampling等を複合的に行い、元来転移のあったリンパ節を含めて切除する腋窩縮小手術。

St Gallen 乳癌シンポジウム のパネルも腋窩リンパ節陽性乳癌が術前化学療法後に臨床的に転移陰性と判断された場合に、腋窩リンパ節のpCRを確認する方法として、TADとセンチネルリンパ節生検を行うことは妥当であるとしています。既に国内でもTASの有用性を検証する臨床試験が行われており、その結果が待たれます。

まとめ

  • ICG蛍光法によるセンチネルリンパ節の同定率はRI法と同等であり、その実施が勧められる。
  • cN0乳癌に対してセンチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清の省略は、腋窩の標準手術といえる。
  • PDE®-GEN3の鮮明な画像や分割画面表示機能等によって円滑な手術が可能となる。
  • cN1乳癌に対するTAS及び放射線治療によって腋窩リンパ節郭清を省略する試みが進められている。

―オンデマンド配信 視聴方法―

下記URLより視聴登録をお願いいたします。

https://x.gd/L8jsP

お申込み時のメールアドレスへご視聴用リンクをお送りいたします。


配信期間:2024年4月15日(月)~9月30日(月)

チラシ : ※pdfが開きます(1.1MB)


【 参考文献 】

  • Sugie, Tomoharu, et al. “Evaluation of the clinical utility of the ICG fluorescence method compared with the radioisotope method for sentinel lymph node biopsy in breast cancer.” Annals of surgical oncology 23 (2016): 44-50.
  • Mok, C. W., et al. “Network meta-analysis of novel and conventional sentinel lymph node biopsy techniques in breast cancer.” BJS open 3.4 (2019): 445-452.
  • 「術中蛍光イメージング ガイドライン 第1版」日本蛍光ガイド手術研究会(2023)
  • Balic, Marija, et al. “St. Gallen/Vienna 2023: Optimization of Treatment for Patients with Primary Breast Cancer–A Brief Summary of the Consensus Discussion.” Breast Care 18.3 (2023): 213-222.
  • Boughey, Judy C., et al. “Sentinel lymph node surgery after neoadjuvant chemotherapy in patients with node-positive breast cancer: the ACOSOG Z1071 (Alliance) clinical trial.” Jama 310.14 (2013): 1455-1461.Kuehn T, Lancet Oncol 2013;14:609
  • Boughey, Judy C., et al. “Sentinel lymph node surgery after neoadjuvant chemotherapy in patients with node-positive breast cancer: the ACOSOG Z1071 (Alliance) clinical trial.” Jama 310.14 (2013): 1455-1461.
  • Classe, Jean-Marc, et al. “Sentinel lymph node biopsy without axillary lymphadenectomy after neoadjuvant chemotherapy is accurate and safe for selected patients: the GANEA 2 study.” Breast Cancer Research and Treatment 173 (2019): 343-352.
  • Henke, Guido, et al. “Tailored axillary surgery with or without axillary lymph node dissection followed by radiotherapy in patients with clinically node-positive breast cancer (TAXIS): study protocol for a multicenter, randomized phase-III trial.” Trials 19.1 (2018): 1-28.
  • 乳癌診療ガイドライン(2022)、日本乳癌学会編、金原出版

PDE®-GEN3の概要

医療機器クラス
クラスⅡ
一般的名称
ICG蛍光観察装置
承認番号
30400BZX00161000
使用目的又は効果
本装置は、ICGの赤外蛍光画像を体表から観察することで、体表下のリンパ流路の確認や血流等の動態観察を目的とする。
アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

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