【術後】特集:呼吸管理
- 掲載:2025年07月
- 文責:メディカ出版


フェンタニル(鎮痛薬)
- 役割:術後疼痛管理のために使用。
- 副作用:悪心、腸蠕動運動の低下、呼吸抑制。
- 禁忌:薬剤成分に対して過敏症のある患者さん。
プロポフォール(鎮静薬)
- 役割:全身麻酔の導入と維持、集中治療における人工呼吸管理中の鎮静。
- 副作用:低血圧、プロポフォール注入症候群(徐脈、脂質異常症、横紋筋融解など)。
- 禁忌:薬剤成分に対して過敏症のある患者さん。
デクスメデトミジン(鎮静薬)
- 役割:集中治療における人工呼吸中および離脱後の鎮静。
- 副作用:低血圧、高血圧、徐脈、心室細動。
- 禁忌:薬剤成分に対して過敏症のある患者さん。


心臓血管手術後の呼吸管理の必要性を説明できる
心臓血管手術を受ける患者さんは術前からの心不全に加え、手術操作や人工心肺装着による影響で術後に肺血管抵抗が高くなるため、術直後は容易に急性循環不全に陥ります。呼吸管理で心臓への負担を減らすことは、心臓血管手術の術後管理において重要な項目の1つです。手術による心筋障害や心筋虚血、再灌流障害により心収縮力は低下していますが、術後6~12時間で改善しはじめます。この時間帯の心臓負荷を軽減するため、術直後は人工呼吸器を装着し、胸腔内を陽圧とすることで静脈還流を低下させて、前負荷軽減を図ります(図1)1)。

しかし抜管後は自然呼吸により胸腔内が陰圧となるため、静脈還流が促進され前負荷が増大します2)。中心静脈圧の経時的変化、肺動脈圧の上昇に注意し、血管内水分量が過剰とならないように、水分出納バランスを把握する必要があります。
もう1点、呼吸管理で重要なことは低酸素血症の回避です。低酸素血症は心筋虚血を助長し心拍出力低下につながるため、SpO2 94%、PaO2 80 mmHg以上を目標に管理します。麻酔覚醒に伴い自然呼吸が出現し、代謝が亢進することで酸素消費量は増加します。そのため抜管後は十分な酸素投与が必要となりますが、最近ではハイフローネーザルカニューラ(以下HFNC)を使用した高流量酸素投与システムを使用して、安定した酸素濃度と流量を投与する場合もあります。心臓血管手術後の患者さんにHFNCを使用することで再挿管やNPPVへの移行を減少させると報告されています3)。このように、術直後は心負荷軽減と低酸素血症を予防するために呼吸管理は重要な看護ケアだといえます。
呼吸回数を測定し、異常呼吸を発見できる
呼吸回数は急変を最も早く知らせてくれる体のサインといわれています。術後侵襲によって酸素消費量が増加すると、それを補うために呼吸回数を増加させて酸素を多く取り込みます。普段、呼吸回数はどのように測定していますか?人工呼吸中はEtCO2センサーによって、呼吸回数を正確に測定することができます。しかし、抜管後はどうでしょう。心電図モニターから測定される呼吸回数(図2)を信じていませんか?これはインピーダンス法といい、心電図電極の動きによって呼吸回数を測定する方法です。簡便かつ非侵襲的で常時測定することができますが、電極の貼りつける位置や筋肉量、体動などさまざまな要因が影響するため、測定誤差が大きいことが特徴です。
胸郭の挙上を目で確認する、または聴診器で呼吸音を聴診しながら正確に呼吸回数を測定し、経時的な変化も観察しながら異常の早期発見につなげることが重要だといえます。
肺合併症を発見し、対応できる
高齢化に伴い肺気腫やCOPDなど、呼吸機能が低下している患者さんの症例は増えています。心臓血管手術後に発症しやすい肺合併症を知り、フィジカルアセスメント(視診、聴診、触診)や胸部X線画像の確認を行い、術後の経時的変化を観察することで、肺合併症の早期発見に努める必要があります4)。
無気肺
原因:術中体位による荷重、痰の貯留、気道出血が原因となります。
治療と看護:荷重側肺障害による無気肺は仰臥位2~3時間で形成されるといわれています。気道の加温と加湿を徹底し、聴診で肺雑音が聴取された場合は気管吸引を行います。循環動態安定時は最低でも2時間ごとに体位変換による呼吸理学療法を行います。
肺水腫
原因:血管内水分量過剰、左心不全、手術侵襲による血管透過性の亢進によって起こります。
治療と看護:左心不全の治療、利尿薬使用(透析中は除水)による血管内水分量の適正化を行います。ピンク色の泡沫状の痰、水泡音の聴取、呼吸困難感、冷汗が観察され、酸素化の悪化を認める場合はNPPVも含めた人工呼吸管理が行われます。
気胸
原因:術中操作、陽圧換気(人工呼吸管理)、中心静脈カテーテル(CVC)挿入による合併症として発症します。
治療と看護:人工呼吸中は最高気道内圧が30 cmH2O以上になることで気胸が発生しやすくなるため、発見時は速やかに医師に報告し、酸素化に異常がない場合は換気圧を下げていきます。胸腔ドレーンが留置されている場合が多いため、エアリークの観察、皮下気腫の出現にも注意が必要です。
肺合併症を予防するための看護ケアを説明できる
心臓血管手術は長時間の手術となりやすく、術後出血や循環動態が不安定であるため体位変換ができない場合も多く、同一体位によって無気肺を形成することもあります5)。血圧や心拍数が目標範囲内であることを確認し、循環動態が安定していれば積極的に体位変換を行います。ヘッドアップは人工呼吸器関連肺炎の予防や肺容量の増加につながる30°以上を目標とし6)、挿管チューブやカテーテル類に注意して左右の体位変換も行います。体位変換後は呼吸仕事量が過剰に増えていないか確認するため、呼吸回数やSpO2の変化の有無を必ずチェックします。人工心肺や呼吸器の影響で術後は気道分泌物(痰)が増加します。円滑な痰の排出には体位変換や加湿が重要となります。創部痛により体位変換が困難な場面や、強く咳嗽ができない場面にも多く遭遇しますが、このようなときは鎮痛薬で疼痛コントロールを十分に行い、体動や咳嗽による痛みを軽減したうえで痰の排出を促します。このように加湿によって痰の粘稠性を低下させ、体位変換によるドレナージで主気管支に痰を集め、咳嗽によって痰を喀出する、という一連の流れを通してケアすることで肺合併症を予防することができます。循環動態が安定しない場合でも、抜管後や離床開始に備えて無気肺形成予防、気道浄化に努め、呼吸状態への悪影響を最小限にし、中長期的な視点をもって看護ケアを行うことで、肺合併症予防につなげることが大切です。
多職種からのワンポイントメッセージ


【 引用・参考文献 】
| 1. | TEIJIN Medical web.心不全に対する呼吸補助法.https://medical.teijin-pharma.co.jp/respiratory/asv.html(2024/11/14閲覧) |
| 2. | 石橋一馬.行ったり来たりでよくわかる 機器から入る 人工呼吸器管理.東京,中外医学社,2021,1-25. |
| 3. | Giulia,S.et al.Heated Humidified High-Flow Nasal Oxygen in Adults:Mechanisms of Action and Clinical Implications.Chest.2015,148(1),253-61. |
| 4. | 阿部和男ほか.ICU帰室から6時間~人工呼吸器離脱(抜管)前後まで.HEART nursing.31(1),21. |
| 5. | 道又元裕編.ICUディジーズ 改定第2版 クリティカルケアにおける看護実践.東京,Gakken,2015,16-27. |
| 6. | 清水孝宏編.一歩先を行く ICUナースの新スタンダード.東京,Gakken,2024,14-8. |
提供元:HEART nursing 2025 vol.38 no.1(メディカ出版)
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