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いま読みたい! 人工呼吸管理にまつわるギモン【人工呼吸管理/モード】
なぜ呼出障害のあるCOPD患者にPEEPをかけるの?

  • 掲載:2025年09月
  • 文責:メディカ出版
いま読みたい! 人工呼吸管理にまつわるギモン【人工呼吸管理/モード】<br> なぜ呼出障害のあるCOPD患者にPEEPをかけるの?

サクッとアンサー

  • PEEP(positive end-expiratory pressure)とは呼気終末陽圧のことであり、呼気終了時に気道内圧が0cmH2Oとなって肺胞が完全に虚脱してしまわないように、肺胞内に一定の陽圧をかけることをいいます。
  • 常に肺胞に一定の圧をかけることで肺胞虚脱を防ぎ、拡散能も向上するため、効率よく酸素の取り込みが可能となります。一定の圧により最高気道内圧(Pmax)までの駆動圧が少なくてすみ、呼吸仕事量が減り、呼吸困難も緩和されます。

じっくりアンサー

内因性PEEP

COPDの患者は、動的過膨張により労作時や、重症例では安静時にも末梢気道閉塞をきたします。呼気終末圧が、安静時の呼気の終わりの圧力と比較して上昇する圧力は「内因性呼気終末陽圧」(PEEPi)といい、内因性PEEPまたはオートPEEPと呼ばれます。本稿では内因性PEEPの方が日本語のイメージとしては合っているので、「内因性PEEP」を用語として使用します。

呼気終末では、肺は機能的残気量位まで縮まず、内因性PEEPが発生します。通常、呼気の間は肺は弾性収縮によって空になり、呼気終了時には肺胞圧は大気圧と同じになります。しかしCOPDでは肺胞の破壊があるため、次の呼吸が始まる前に肺が完全に収縮せず、圧力が上昇したままになることがあります。内因性PEEPがあるため末梢気道閉塞が起こり、肺胞は呼気終末時に膨張したままであるため、肺胞圧が上昇します。内因性PEEPは呼吸の仕事量を増やし、ガス交換を悪化させ、心拍出量を減少させます(図1)。

図1

〇 カウンターPEEP

気流閉塞と動的過膨張による内因性PEEPを有する患者では、呼吸の仕事を減らして呼吸困難を緩和するために外部PEEP(カウンターPEEP)を使用することで呼吸困難が改善します。口すぼめ呼吸では2~3cmH2Oくらいの圧しかかけられませんが、NPPVではEPAPにより4~10cmH2O程度の圧をかけられます。
COPD患者で動的過膨張があると、最大呼気流量は肺容量のみに依存するため、患者は適切な換気量を得るために、健常者(A)に比べて、より高い肺容量で呼吸する(B)必要があります(図21)


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カウンターPEEPをかけると呼吸仕事量が減る

吸気時に肺胞の陽圧に打ち勝つため、横隔膜が十分な負圧を発生させなければなりません。吸気筋の活動が始まった時点でも、まだ呼気が持続し、さらに吸気筋が等尺性収縮し、胸腔内圧が陰圧になって初めて吸気流が開始するため、吸気筋に対するthreshold loadが増します(図3)。

COPDの患者のPmaxが10cmH2Oあるとすると、カウンターPEEPがゼロではPmaxまで必要な圧は10cmH2Oですが、カウンターPEEPが5cmH2OかかっていればPmaxまで必要な圧は5cmH2Oとなり、呼吸仕事量が少なくてすみます(図4)。

図3

NPPVや人工呼吸器によりカウンターPEEPをかけてやることで、胸膜内圧のわずかな陰圧偏移を許容することで、横隔膜が空気を取り込むために行わなければならない仕事量を減らします。患者が呼吸を開始しようとすると、人工呼吸器がそれを感知します。内因性PEEPが10cmH2OあるCOPD患者ではEPAPを高く設定することにより、吸気トリガー感度が改善し、横隔膜も小さい仕事量ですみます。

図4

いま読むべき![ポイント]

非侵襲的換気(NIV)は、肺のガス交換を改善し、呼吸筋の負荷を軽減することを目的として、COPDの急性期の治療に一般的に使用されています。この治療中、外部からPEEPを適応することで内因性PEEPの有害な影響を打ち消すことができ、呼吸仕事量の減少、呼吸パターンの正常化、血中ガスの改善、患者と人工呼吸器の間の非同期の減少につながります3)
カウンターPEEPの効果を発揮するためには、PEEPを患者の内因性PEEPに合わせて調整する必要があります。人工呼吸器のPEEPが内因性PEEPよりも低い場合、その効果が損なわれます。逆に、内因性PEEPを超えると、呼気終末肺容量(EELV)がさらに増加するため、患者の呼吸仕事量が増加します。高すぎるPEEPにより胸腔内圧が上昇し、肺の圧損傷や気胸を起こすことがあります。また、心臓に戻る静脈還流が減少して右室の血液量が減少するので、血圧低下をきたすことがあります。さらに、肺血管抵抗が増大することにより右室後負荷が高くなり、左室への血液流入が阻害され、心拍出量低下、臓器・末梢組織の血流低下、尿量低下、肝機能低下が起こります。胸腔内圧上昇に伴う静脈還流低下により頭蓋内の血液量が増加することで、頭蓋内圧が上昇し、意識レベルが低下することもあります4)
したがって、カウンターPEEPの臨床使用には、個々の患者と状態に合わせた正確な調整が必要になります。EELVは時間と共に大きく変化するため、継続的に調整する必要があるだけでなく、患者が坐位から仰向けや側臥位に動くときなど、体の姿勢を変えるときにも発生します5)
Vivo 50などのNPPVでも、グラフィック波形でのモニタリングでEPAPの適正値を気道内圧、換気量ループで確認することができます。当初、EPAPは6cmH2Oでしたが、NPPV使用中にもかかわらず努力呼吸であり、呼気時に腹筋を使用していること、聴診にて呼気時のwheezeが聴かれることなどから、内因性PEEPが存在し、それに打ち勝つカウンターPEEPが必要であると考えられました。換気量ループ波形を確認しても、基線に戻らずに次の吸気が始まっていることから、吐ききれていないことが考えられ、EPAP 7cmH2Oに変更したところ、努力呼気の軽減、wheezeの消失、換気量ループが基線に戻ったことなどから、妥当なEPAPに設定できた症例を経験しました(図56)

図5

【 引用・参考文献 】

1. Wedzicha, JA. et al. The role of bronchodilator treatment in the prevention of exacerbations of COPD. Eur Respir J. 40(6), 2012, 1545–54.
2. Frutos-Vivar, F. et al. When to wean from a ventilator: an evidence-based strategy. Cleve Clin J Med. 70(5), 2003, 389, 392-3, 397 passim.
3. Milesi, I. et al. Automatic tailoring of the lowest PEEP to abolish tidal expiratory flow limitation in seated and supine COPD patients. Respir Med. 155, 2019, 13-8.
4. Ranieri, VM. et al. Intrinsic PEEP and cardiopulmonary interaction in patients with COPD and acute ventilatory failure. Eur Respir J. 9(6), 1996, 1283-92.
5. Lessard, MR. et al. Expiratory muscle activity increases intrinsic positive end-expiratory pressure independently of dynamic hyperinflation in mechanically ventilated patients. Am J Respir Crit Care Med. 151(2 Pt 1), 1995, 562-9.
6. 津田徹ほか.呼吸不全終末期-緩和医療としての呼吸管理とは?.呼吸器ジャーナル.67(1),2019,120-30.

提供元:みんなの呼吸器 Respica 2025 vol.23 no.1(メディカ出版)

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