第51回日本甲状腺外科学会学術集会 イブニングセミナー「甲状腺外科手術における蛍光Navigation Surgery -赤外線蛍光による術中副甲状腺検出法-」
- 掲載:2018年12月
- 文責:クリティカル・ケア部
日時 : |
2018年10月25日(木)17:35~18:25 |
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会場 : | 横浜ベイホテル東急 第2会場 |
演者 : |
西川 徹先生 昭和大学横浜市北部病院 外科講師 |
座長 : | 山下 弘幸先生 医療法人福甲会 やました甲状腺病院 院長 |
抄録 : |
福成 信博会長(昭和大学横浜市北部病院 外科教授)の下、第51回日本甲状腺外科学会学術集会が行われ、『赤外観察カメラシステム pde-neo』の製造元である浜松ホトニクス株式会社と共にイブニングセミナーに共催させていただきました。
座長に医療法人福甲会 やました甲状腺病院 山下 弘幸院長、演者に昭和大学横浜市北部病院 外科 西川 徹先生をお招きし、「甲状腺外科手術における蛍光Navigation Surgery-赤外線蛍光による術中副甲状腺検出法-」についてご講演を賜りました。
講演の概要
- 正常副甲状腺の温存の意義および、確認方法
- ICGの蛍光特性と副甲状腺の蛍光特性
- 赤外線蛍光による術中副甲状腺検出法の問題点・課題
[ 正常副甲状腺の温存の意義および、確認方法 ]
甲状腺、副甲状腺手術において、術後永続的な副甲状腺機能低下症を予防する上で、正常甲状腺の温存は患者のQOL管理上非常に重要であるが、副甲状腺の確認方法は、肉眼で確認を行っている施設が多く、術者の経験値により確認できる数に差が出てしまうという背景があるとのことです。
[ ICGの蛍光特性と副甲状腺の蛍光特性 ]
2011年PARAS※らにより、副甲状腺に820~830nmの近赤外線のエリアをピークとした蛍光特性を有していることが報告され、副甲状腺確認方法の一つとして注目されていることが示されました。
ICGの蛍光特性と副甲状腺の蛍光特性が非常近い蛍光波長帯であることを活用し、2017年より赤外線カメラpde-neoを用いて赤外線蛍光による術中副甲状腺検出を開始しておられ、セミナーでは実際の赤外線カメラで撮影した副甲状腺の蛍光映像を複数症例紹介されました。
本法は色素などを用いず、副甲状腺からの微弱な内因性の蛍光を検出する方法であり、人体への影響がなく、安全に簡便に行えることが利点であるとのこと。甲状腺全摘手術を行う甲状腺癌、甲状腺良性腫瘍、バセドウ病手術、および副甲状腺腫に対して併用されており、特に甲状腺全摘出術においては、in-situに温存することだけではなく、摘出された検体に付着した肉眼では脂肪と鑑別がしづらい副甲状腺組織を検出し、自家移植を実施できたケース等ご説明されました。
[ 赤外線蛍光による術中副甲状腺検出法の問題点・課題 ]
より日常臨床に導入しやすいように、有用性だけでなく問題点、課題についてもご説明されました。
- 外来光について
ICG蛍光法では、無影灯の消灯のみで観察可能であるが、副甲状腺の蛍光が弱い為、蛍光灯も消さなければ確認が困難であった。 - 縫合糸について
吸収糸(バイクリル)も蛍光を示すため、誤認する場合がある。 - 観察ディバイスについて
旧型のPDEでは観察が困難であり、現行のpde-neoのみ検出可能であった。 - 保険収載について
副甲状腺同定の目的で保険収載されていない状況であり、今後さらなるデータ集積と多施設研究が必要である。 - 内因性の蛍光のメカニズムの解析
現時点で、副甲状腺の何が蛍光を発しているのか解明がされていない。
まとめ
種々の臓器ではICGを用いて蛍光を検出する方法が報告されているが、本法は薬物を用いず近赤外光のみで描出可能であり、人体への影響がなく、誰でも容易で安全に行える。
現在までに、副甲状腺の蛍光が検出可能な理由については明確な報告がない為に、今後は赤外蛍光顕微鏡等を用いた病理学的、光学的研究を予定している。
pde-neoを用いて画像的に副甲状腺を検出し、血流温存または自家移植を増加させることが可能となったとご説明されました。
最後に今回のイブニングセミナー座長をお務めいただいた山下 弘幸先生、ご講演いただいた西川 徹先生にこの場をお借りして御礼申し上げます。
参考文献
※PARAS, Constantine, et al. Near-infrared autofluorescence for the detection of parathyroid glands. Journal of Biomedical Optics, 2011, 16.6: 067012.
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