新型H1N1ウイルスを持った患者に対するHFOV
- 掲載:2010年04月
Written by Mark Rogers, BS, RCP, RRT
インフルエンザAウイルスは新しいものではなく、実際のところ人間にとって最も一般的なウイルスである。
H1N1菌株もまた極めて一般的であり、人間において常在流行しているものもある3。最も有名なH1N1の爆発的な流行は1918年のスペイン風邪である。記録の残っている限り最も深刻な自然災害と見なされており、ほぼ7500万人から1億人の死者が発生し、世界人口の3分の1が罹患し、約3%が死亡したと推定されている4。現在パンデミックを起こしているH1N1ウイルスはユニークで、新型インフルエンザ(H1N1)ウイルスと呼ばれている。H1N1の爆発的流行によるincidence及びその重篤性を予測することは、医学的attentionの欠如、確認検査の欠如に見られるように、様々な理由から困難である。
しかしながら欧州疾病対策予防センター(ECDC)及び世界保健機関(WHO)は、2009年4月にメキシコで初めて発生して以来、H1N1によると確認できた死者は世界で14,286人と発表している5。
現在のH1N1パンデミック患者の症例のいくつかの系統が最近公表されている6, 7, 8, 9, 10。
入院を要するH1N1感染の重篤な症例では、約60~80%の患者において機械換気が必要であった。公表された中で最も共通するテクニックは、非侵襲的換気、APRVやHFOVといった、肺保護換気法(lung protective conventional ventilation)、オープンラング換気法(open lung ventilation methods)である。HFOVは平均でこの期間のおおよそ15%で使われた。
HFOVはユニークな換気様式であり、通常の人工呼吸器とは異なり、肺の酸素化や換気の際に通常の換気量の呼吸を送ることはない。HFOV中、肺胞を開きかつ安定化させるために、肺は穏やかに加圧されている。HFOVではCO2を排出するために、喘ぎ呼吸をしている犬と同じように、非常に小さな呼吸によってガスを振動させる。肺はまさに小刻みに揺れるのである。病的肺を大きな換気量で換気することは、さらなる損傷を発生させ、死亡率を増加させる、あるいは肺を恒久的に損傷させる11, 12。
人工呼吸器に起因する肺損傷を避けるため、現在では肺胞のリクルートメントの達成及び維持と共に、肺胞の過剰な拡張及び肺胞の虚脱と再膨張の繰り返しを避けることに集中するよう推奨されている13, 14, 15。3100Aあるいは3100Bを使ったHFOVはこれらの勧告に適合している。H1N1患者への特定の人工呼吸テクニック及びその結果については殆ど発表されていない。過去数カ月における早い段階でのレポートの中には、オープンラング(open lung)及び肺保護換気(lung protective ventilation)の必要性が強調されている。チリにおけるレポート16によれば、HFOVにより管理された患者の死亡率は25%であったが、全体の死亡率は60%近くであった。要約すれば、HFOVを適切に使用すれば、直観的にはオープンラング(open lung)を、そして肺保護換気戦略(lung protective ventilation strategy)を促進するのである。
<参考文献>
3. | CDC Influenza (Flu): Weekly Report: Influenza Summary Update 20, 2004–2005 Season. |
4. | Emerging Infectious Diseases. Vol. 12, No. 1, January 2006. |
5. | ECDC Daily Update. 2009 influenza A(H1N1) Pandemic. January 18, 2010. |
6. |
The ANZIC Influenza Investigators. Critical Care Services and 2009 H1N1 Influenza in Australia and New Zealand. N Engl J Med 2009;361. |
7. |
Rello J, Rodriguez J, Ibanez P, et al. Intensive care adult patients with severe respiratory failure caused by Influenza A (H1N1)v in Spain. Critical Care 2009, 13:R148. |
8.
|
Intensive-care patients with severe novel influenza A (H1N1) virus infection — Michigan, June 2009. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2009;58:749-52. |
9. |
Ugarte s, Arancibia F, Soto R.Influenza A pandemics: Clinical and organizational aspects: The experience in Chile. Crit Care Med 2010; 38 [Suppl]. |
10. |
Kumar A, Zarychanski, R, Pinto R, et al. Critically Ill Patients With 2009 Influenza A(H1N1) Infection in Canada. JAMA. 2009;302(17):(doi:10.1001/jama.2009.1496. |
11. |
Dreyfuss D, Basset G, Soler P, Saumon G. Intermittent positive-pressure hyperventilation with high inflation pressures produces pulmonary microvascular injury in rats. Am Rev Respir Dis. 1985 Oct;132(4):880-4. |
12. |
Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome: The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 2000; 342: 1301–1308. |
13. |
Froese AB. High-frequency oscillatory ventilation for adult respiratory distress syndrome: let’s get it right this time! Crit Care Med 1997;25: 906–908. |
14. |
Hudson LD. Protective ventilation for patients with acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 1998;338:385–387. |
15. |
Derdak S, Mehta S, Stewart TE, et al. High-Frequency Oscillatory Ventilation for Acute Respiratory Distress Syndrome in Adults. Am J Respir Crit Care Med 2002;166:801–808. |
16. | Krishnan JA, Brower RG. High-frequency ventilation for acute lung injury and ARDS. Chest 2000;118:795–807. |
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