特別企画

人工呼吸器のヒヤリ・ハット事例 No.2

  • 掲載:2024年12月
  • 文責:安全管理
人工呼吸器のヒヤリ・ハット事例 No.2

公益財団法人 日本医療機能評価機構(JQ)では、医療事故収集等事業として、医療機関で発生した医療事故情報、ならびにヒヤリ・ハット事例の情報収集を行っており、その情報を公開しています。
今回、「事例検索」の機能を使用し、「呼吸器」をキーワードに事例検索を行い、その結果をデータ分析した内容をご紹介いたします。なお、過去(2018年掲載)にも「人工呼吸器のヒヤリ・ハット事例」として分析結果をお知らせしましたが、今回は2021年1月~2022年12月のデータを対象とした「人工呼吸器のヒヤリ・ハット事例 No.2」としてご紹介いたします。医療現場でのサポートとしてご活用いただければ幸いです。

elisa

主に上記の5つの箇所において、取り扱いに起因するトラブルが発生していることが確認されました。
過去のデータと同様、発生箇所のランキングに変動はなく、最も発生頻度が高かったのは呼吸回路で、次いで設定・操作、加温加湿器、酸素供給、電源の順でした。

【注意】

すべての人工呼吸器で発生した事例を確認しており、写真の弊社取り扱いのelisa 300ベンチレータはイメージ図です。また、発生率は弊社での確認・分類結果に基づくもので、発生傾向を把握するための参考値としてご利用ください。

発生頻度が高い「呼吸回路」「設定・操作」の傾向について

「呼吸回路」に関連したヒヤリ・ハット事例

以前の分析時は「回路の接続誤り」が呼吸回路全体の46%を占めていましたが、今回は61%と割合が増加しています。この「回路の接続誤り」を更に詳しく見てみると回路の「誤接続」「接続忘れ・交換忘れ」に分類でき、その中でも特にフィルタ類の「接続忘れ・交換忘れ」の割合が約2.5倍増えていました。これは、COVID-19により呼気フィルタ等のフィルタ・人工鼻を使用する頻度が増えたことで、フィルタ類の「接続忘れ・交換忘れ」の報告が増加していました。

円グラフ
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「回路の外れ・リーク」に関しては、「気管チューブ」箇所で最も多く発生していました。
気管チューブのカフリーク防止のため、カフ圧調整コントローラ等が使用されますが、弊社取り扱い製品のelisa500ではカフ圧を自動調整する機能が人工呼吸器に搭載されています。

「設定・操作」に関連したヒヤリ・ハット事例

設定・操作関連は、ほぼ全て「誤った設定をした」事例でした。

呼吸器の設定が医師の指示と異なっていた、もしくは気づいたら設定が変わっていた事例が多く報告されています。
設定項目は患者のサイズ、モード、換気設定(FiO2、PEEP、吸気時間)など多岐にわたり、どの項目でも誤設定や操作ミスが発生する可能性があります。特にFiO2については、採血等の処置や検査時に酸素化改善のため一時的に100%に設定した後、元の設定に戻し忘れる事例が複数報告されていました。(例として、採血だけでなく挿管チューブの長さ調整の際にもFiO2を100%に変更して戻し忘れるケースが挙げられています。)
また、スタンバイ状態のまま患者に呼吸器が接続され、アラームが作動せずに換気されなかった事例も報告されています。このような場合、数分以内に医療事故に発展する可能性があるため、特に注意が必要です。
誤って画面やキーに触れて設定が変更されないようパネルロック機能を使用したり、一時的な設定変更後は元に戻し忘れがないか確認したりすることが重要です。

COVID-19に関連したヒヤリ・ハット事例

2021~2022年の呼吸器関連ヒヤリ・ハット事例の中から、「COVID」「コロナ」「PCR」「SARS」を含む事例を抽出し、分析しました。

報告事例

上述の「呼吸回路」に関連したヒヤリ・ハット事例でご紹介した通り、フィルタ類の使用頻度が増えたことで「接続忘れ・交換忘れ」の報告件数が増えていました。他に、アラーム対応遅延院内ルールの不遵守が報告されています。

  • アラーム対応遅延
    感染対策として病室の扉を閉め切ったり、二重扉にしたりすることで、アラームが聞こえず、対応が遅れた事例や、呼気フィルタなど回路アクセサリの交換方法や頻度が曖昧になっていた事例が報告されています。
  • 院内ルールの不遵守
    コロナ陽性患者に使用した呼吸器を院内ルールで定められた72時間の間隔を空けずに次の患者に使用した事例等が報告されています。

環境の変化や手順・ルールの変更がある場合、ヒヤリ・ハットが起こりやすいことに留意が必要です。
また、COVID-19の影響で「高流量酸素療法(High Flow Oxygen Therapy)」の使用頻度が増加していますが、人工呼吸器でこの療法を選択する場合には、呼吸回路が外れてもアラームが鳴らないため、注意が必要です。実際にヒヤリ・ハット事例も報告されています。


弊社では、ヒヤリ・ハット事例を基にした人工呼吸器の事故防止に関する勉強会や、機種ごとの取り扱い方法・操作説明・使用上の注意などについてスタッフ教育のお手伝いを行っております。詳細につきましては最寄りの弊社CS(顧客サービスセンター)または担当者までご相談ください。

勉強会資料の例
勉強会資料の例
アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

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