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いま読みたい! 人工呼吸管理にまつわるギモン【NPPV/HFNC】
HFNCでの酸素使用量の考えかたについて教えて

  • 掲載:2025年11月
  • 文責:メディカ出版
いま読みたい! 人工呼吸管理にまつわるギモン【NPPV/HFNC】<br>HFNCでの酸素使用量の考えかたについて教えて

サクッとアンサー

  • HFNCは酸素と空気を混ぜ合わせてFlow 30L/min以上のガスを作り出すため、通常の酸素療法よりも酸素使用量が多くなります。
  • Flow 30L/min=酸素消費量30L/minではありません。例えばHFNC(Flow 30L/min FIO2 30%)のときの酸素使用量は約3.4L/min程度です。

じっくりアンサー

HFNCが酸素を多く必要とする理由

リザーバーマスクで酸素6L/minを投与すると、FIO2は概算で60%になります(表1)。一方、HFNCでFIO2 60%、Flow 30L/min設定のとき、酸素使用量は14.8L/minとリザーバーマスクの倍以上必要ですが、高濃度酸素を確実に投与できます。これはなぜでしょうか。この問いから、酸素投与のシステム、高濃度酸素療法の弊害、および酸素投与を経済面から考えてみます。


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低流量システムと高流量システムの違い

低流量システム:患者の一回換気量>酸素デバイスから供給される酸素流量
⇒ 不足分は酸素以外の外気を吸うため、呼吸パターンによってFIO2が変動する

高流量システム:患者の一回換気量<酸素デバイスから供給される酸素流量
⇒ 投与された酸素のみを吸うため、呼吸パターンに関係なく設定したFIO2が投与できる

酸素システムは、患者の一回換気量を超える30L/min以上の流量を供給できるか否かで、低流量システムと高流量システムに分けられます(表1)。30L/minという数字は、成人の分時換気量の目安から導かれます。呼吸回数はその時々で異なり、1分(60秒)間に何回呼吸をするかわかりませんが、どんな呼吸であっても毎秒(1回以上/秒)呼吸をすることは困難です。そのため、推定される一回換気量に60(秒)をかけると分時換気量が計算できます。
通常、成人の一回換気量は約500mLで、この換気を1秒間でしていると考えると500mL×60(秒)=30,000mL/minとなります。換気流速をmL/minからL/minに変換すると、30,000mL/min=30L/minになります(図1)。


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低流量システムである経鼻カニュラで4L/min投与する場合、30L/minから4L/minを差し引いた26L/minは外気を吸入するため、患者の呼吸パターンによってFIO2が変動します(図2)。一方で高流量システムは、酸素と空気を混ぜ合わせて30L/min以上のガスを作り出せることから、呼吸パターンが変化しても安定したFIO2となります。


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インスピロンネブライザーは高流量システムですが、酸素流量計の最大値は15L/minのためFIO2は50%が限界です。HFNCは酸素と空気を混合するタービンやブレンダーの改良によって、最大FIO2 100%の高濃度酸素が投与できるようになりました。

HFNCの酸素使用量の考えかた

安定したFIO2を提供するために、酸素と空気を混ぜ合わせて30L/min以上のガスを作り出す必要があるので、酸素消費量が多くなります。

酸素療法デバイスの中で最大FIO2 100%をほぼ確実に投与できるのはHFNCのみで、超急性期から慢性期、緩和ケアとその使用は拡大しています。

HFNCにおける1分間あたりの酸素使用量は下記で算出されます。

(吸入酸素濃度:FIO2[%]-21%)÷ 79% × Flow:総流量(L/min)= 1分間あたりの酸素使用量

この式にFIO2 60%、総流量30L/minを当てはめると、14.8L/minとなります。つまり、リザーバーマスクなどの低流量システムはFIO2を上昇させるのみで、Flowについては考慮しないため酸素使用量は少なくなります。それに対して、HFNCなどの高流量システムは30L/min以上の安定したFIO2を供給するために酸素と空気を混合したガスを送るので、どうしても酸素使用量が多くなるわけです(表2)。

表2

ICU患者における必要酸素量を比較した研究では、HFNCの酸素使用量は人工呼吸器よりも4.8倍多かったと報告されています1)。しかし、HFNCは高濃度酸素投与以外にもPEEP様効果やCO2ウォッシュアウト効果、加温加湿などメリットが多くあります。HFNC使用により挿管が回避できたり、息苦しさが和らぐ患者も多く、挿管前や抜管後、緩和ケアや在宅にまでその使用は拡大しています。

高濃度酸素投与の弊害

高濃度酸素投与の弊害は、大きく分けると気道・肺への影響と全身への影響があります。

ROX指数などを用いて最適なSpO2やPaO2を維持できるよう設定変更を行い、過剰な酸素投与を避けましょう。

臨床では安全域を確保するため比較的高いSpO2で管理する傾向にありますが、酸素投与の弊害を知り、過剰な酸素投与は控えるべきです。長時間の高濃度酸素投与は、活性酸素が過剰に発生し酸素中毒を引き起こすことがあります。酸素中毒の閾値に一定の見解はありませんが、人工呼吸管理中はFIO2が60%以下を維持できるようPEEPを増量し管理することが多いです。HFNCも同様に、FIO2が高い場合はPEEP様効果を期待してFlowを増量します。
酸素中毒の弊害は、高濃度酸素に曝露される気道・肺への影響と、高酸素血症による全身への影響の2点を考えます。気道・肺への影響は、ARDS様の組織学的変化(Lorrain Smith効果)や吸収性無気肺の形成、気道クリアランスの低下などがあります。全身への影響としては、血管収縮作用とそれに続く心拍数低下・心拍出量低下による心臓や脳などの重要臓器の低灌流があります。
HFNCにはCO2洗い流し効果がありますが、COPDなどのII型呼吸不全では、高二酸化炭素血症のリスクがあります。以前は高めの酸素濃度での管理が推奨されていた心筋梗塞や脳卒中患者においても、不要な酸素投与が有害である可能性が示唆されています。そのため、HFNCを漫然と使用するのではなく、各施設でのプロトコルやROX指数(図32)などを活用し、目標SpO2をもとに適宜設定調整を行います。

図3

コロナ禍で頻用されるようになったROX指数とは、P/F比と異なり血液ガス評価が不要で、SpO2値とFIO2、呼吸数のみで迅速に呼吸状態が評価できます。ROX指数は4.8以上の場合はいったんは安心できますが、3.85以下の場合はHFNC治療が失敗しやすいことが示唆されており、人工呼吸器への移行を検討します3)。ただし、ROX指数は呼吸状態の一部を反映しているにすぎないため、全身状態や臨床経過などを総合的に判断して解釈する必要があります。

酸素使用量の計算とコスト

酸素のコストについて、多くの施設で使用しているCEタンクで考えると、1Lあたり0.19円(離島を除く)となります。HFNCをFIO2 40%、Flow 40L/minで使用したとき、必要酸素量は約10L/minとなり(表2)、1日のコストは0.19円×10L×60分×24時間=2,736円になります。酸素吸入、人工呼吸、マスクまたは気管挿管による閉鎖循環式全身麻酔の酸素は、1分間10Lを基本に24時間で14,400Lを上限として酸素の薬価が算定できます。HFNCの診療報酬は酸素の算定とは別に、15歳未満の場合は1日につき282点、15歳以上の場合は192点が算定可能です。酸素消費量が多い機器ですが、挿管が回避できる患者も多く、費用対効果は高いと考えます。

表2

【 引用・参考文献 】

1. Botta, M. et al. Oxygen Consumption with High-Flow Nasal Oxygen versus Mechanical Ventilation- An International Multicenter Observational Study in COVID-19 Patients(PROXY–COVID). Am J Trop Med Hyg. 108(5), 2023, 1035-41.
2. Roca, O. et al. An Index Combining Respiratory Rate and Oxygenation to Predict Outcome of Nasal High-Flow Therapy. Am J Respir Crit Care Med. 199(11), 2019, 1368-76.
3. Praphruetkit, N. et al. ROX index versus HACOR scale in predicting success and failure of high-flow nasal cannula in the emergency department for patients with acute hypoxemic respiratory failure: a prospective observational study. Int J Emerg Med. 16(1), 2023, 3.

提供元:みんなの呼吸器 Respica 2025 vol.23 no.1(メディカ出版)

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