令和6年度診療報酬改定の概要について①
- 掲載:2024年04月
- 文責:事業開発部
令和6年度 診療報酬改定の概要が公開されました。
本年4月から本格的に始動する「医師の働き方改革」を意識した内容になっています。入院料の引き上げや従来からの課題である「地域包括ケアシステムの深化・推進」や「医療機能の分化・強化・連携の推進」が大きな柱になっています。
この記事では入院医療、特に集中治療室、新設される地域包括医療病棟、療養病棟に絞って改定内容をまとめます。(図表:赤字は主な改定箇所を示します)
特定集中治療室、管理料値上げと施設基準の改定
特定集中治療室(以下、ICUと表記)に関して大きな動きがありました。ICUでの医師処遇改善を目的に管理料が165~195点上がります。宿日直許可医師を配置する管理料5・6が新設されます。ICUの病床確保が狙いです。
ICUでの「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票から「輸液ポンプの管理」が削除され、重傷者の定義が「A項目2点以上(従前は3点以上)」に改定。これに対応して重症者の受入基準が管理料1・2で80%以上、管理料3・4で70%以上に改定されました(図1参照)。
<図1>ICU用「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票
これまで測定のみ実施していた「SOFAスコア」については、SOFAスコアが一定以上の患者割合を指標として導入されます。管理料1・2では入室日のSOFAスコア5点以上の患者10%以上、管理料3・4では入室日のSOFAスコア3点以上の患者10%以上が基準となります。
SOFAスコアは呼吸機能、凝固機能、肝機能、循環機能、中枢神経機能、腎機能の6項目を5段階(0~4点)でスコア化し、臓器障害の程度を判定するもので、患者の生命予後と一定の相関関係があるとされています(図2参照)。管理料と施設基準は図3の通りです。
<図2>SOFAスコア一覧
<図3>ICU管理料・施設基準概要
地域包括医療病棟の新設、高齢者救急医療への対応と在宅復帰を目指す
高齢者人口の増加に伴う救急搬送者数の増加への対応として「地域包括医療病棟入院料」が新設されます。
背景としては、【①高齢者に特有の軽症・中等症が増加】【②急性期病棟に入院した高齢者の一部は急性期の治療を受けている間に離床が進まずADL低下・在宅復帰の遅れ】が指摘されています。
このため地域包括医療病棟での受け入れにより、早期のリハビリテーション実施による死亡率の低下とADLの改善・栄養状態の改善を実施し、確実な退院・在宅復帰が目指されます。入院料は3,050点/日、看護配置10対1以上、在院日数は21日以内となっています。
「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票(図4)により、「A項目3点以上又はA項目2点以上かつB項目3点以上又はC項目1点以上」に該当する患者割合が*Ⅰ:16%以上、Ⅱ:15%以上かつ入院初日に「B項目3点以上」に該当する患者割合が50%以上となります。
施設基準概要は図5を参照してください。中でもリハビリテーションの実施、在宅復帰が重視されています。入院料で包括評価するため、検査(検体検査料を除く)・処置(1,000点以上の項目は除く)は包括となります。高齢者急性期を主な対象患者として、「治す医療」とともに「支える医療(リハビリ等)」を提供することで早期の在宅復帰が期待されています。
*「重要度、医療・看護必要度」の評価方法:「Ⅰ」は研修を受けた看護師等によるマニュアル評価、「Ⅱ」は診療実績データ(レセプト電算処理システム用コード)を用いた評価。「Ⅱ」での評価が義務化される傾向にあります。
<図4>地域包括医療病棟用「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票
<図5>地域包括医療病棟入院料と施設基準概要
療養病棟、医療区分の見直し・細分化、重症患者の厳格化
慢性期領域では、療養病棟入院基本料の「医療区分」について見直しがありました。
医療区分は療養病棟における「医療の必要性」の基準で、「ADL区分(日常生活自立度の指標)」との組み合わせにより重症度を判定するものです。「疾患・状態」に係る3つの医療区分、「処置等」に係る3つの医療区分、3つのADL区分に基づく27分類及びスモンに関する3分類の合計30分類の評価に改定されます。
従前より厳格化が進められている「中心静脈栄養」については医療区分2・3に位置付けられているものの、医療区分3での評価は30日以内となりました(図6参照)。ここでも重症患者受入への基準が厳格化されていることが見て取れます。入院料は概ね増額となっており、医療従事者の人件費への充当が意識されています。
医療区分2・3の受入基準は入院料1で80%以上、入院料2で50%以上となっており従前通りです。
<図6>療養病棟「医療区分」一覧
細分化された入院料について図7にまとめました。
2023年度末まで猶予期間のあった療養病棟入院料経過措置1(看護配置20対1未満又は医療区分2・3患者割合50%未満)は廃止となりました。いわゆる介護療養病棟はなくなり、一部は介護医療院や老健等に移行しています。
医療区分2・3に該当する重症患者を集中的に受入れ、「重症度」を高めていく傾向になると推察されます。
<図7>療養病棟入院基本料一覧
まとめ
入院医療を中心に主な改定ポイントをまとめてみました。各病棟において医療従事者を確保し、その医療機能に応じた病床の確保、患者の受入れを促す改定内容となっています。それぞれの機能において重症度とその受入基準が明確化され、医療機能の明確化と集中が進んでいくと考えられます。
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