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RTXレスピレータ(陽・陰圧体外式人工呼吸器)
東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 看護部さま

  • 掲載:2010年12月
  • 文責:レスピラトリ・ケア部
RTXレスピレータ(陽・陰圧体外式人工呼吸器)<br />東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 看護部さま

東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター看護部様では、2009年に呼吸ケアチームが設置され、看護部が中心になり運営し、現在、『呼吸ケアチーム出張サービス』を展開しておられます。
この出張サービスには陽陰圧体外式人工呼吸器RTXが欠かせないと看護師さんのRTXの使用方法、運営について剱持功看護師長、山崎早苗看護主任にインタビューさせて頂きました。

東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 看護師長

剱持 功 さま
[ ご略歴 ]
1990年: 東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 勤務
2003年: 同病院 看護師長

東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 看護主任

山崎 早苗 さま
[ ご略歴 ]
1994年: 東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 勤務
2001年: 同病院 看護主任 就任

■東海大学医学部付属病院HP http://www.u-tokai.ac.jp/hospital/fuzoku/index.html
■東海大学医学部付属病院 高度救命救急センターHP https://ems.med.u-tokai.ac.jp/

剱持
▲剱持 功 看護師長

山崎
▲山崎 早苗 看護主任


東海大学医学部付属病院について

東海大学医学部付属病院についてご紹介をお願い致します。

[ 剱持さま ]
剱持師長 東海大学医学部付属病院 高度救命救急センターは、全国に23施設ある高度救命救急センターの1つに指定されています。神奈川県には2つの高度救命救急センターがありますが、当院は神奈川県西部をカバーしています。
高度救命救急センターは三次救急のみを行うのが通常ですが、神奈川西部地域は医療過疎地域ですので、当院の「ヒューマニズムと科学の調和をはかり、新しい医療体制の確立をめざす」の理念に基づいて、ヒューマニズムの観点から一次、二次救急にも対応し、患者さんを受け入れています。また、プレホスピルケアとしてドクターヘリ、洋上救急、ドクターカーでの医療活動も積極的に行っています。

2009年の実績をご紹介させて頂くと、年間約20,000人の患者さんを受け入れております。救急車搬送件数は年間7,300件、ドクターヘリの出動回数は年間340件でした。これに一次、二次救急の年間12,000件が加わります。


救命救急センターには、174名の看護師が在籍しており、うち認定看護師は7名で、それぞれの専門分野に分かれて活動しています。ICUでは看護師1に対して、患者さん2の割合で配置されていますので、患者さんには丁寧なケアを実施できますし、看護師にとっても働きやすい職場といえるのではないでしょうか。看護師数は全国でも1番だと思います。
高度救命救急センターでは、ベッド数58床に対して毎日約10名の患者さんが入院してきますが救命センターの看護師の使命として「人工呼吸器を外して一般病棟に移って頂く」ことを掲げ、丁寧で迅速なケアを心がけています。現在、ベッドの稼働率は98%と非常に高い回転率を誇っています。


看護師数全国で1番、かつ98%は大変高い稼働率です。
58床がほとんど埋まっているわけですね。

[ 剱持さま ]

はい。この稼働率を維持するには入院患者さんを人工呼吸器から外せるまで回復させてあげなくてはなりません。その一助にRTXが挙げられるのではないでしょうか。


RTX導入のきっかけはスクイージングの禁止から

救命救急センターでは、現在5台ものRTXを導入頂いていますが、いつ頃からご存知でしたか。また、導入のきっかけを教えてください。

[ 山崎さま ]

最初に知ったのは、2003年頃でしょうか。IMIの担当者から換気補助として紹介されたのが最初です。学会でも目にする機会もありましたし、東海大学医学部付属八王子病院でも使用しているのも知っていました。以前から知ってはいましたが、本格的に使用するきっかけとなったのは、ICUの看護師にスクイージング注)を禁止したことだったかと思います。

新人看護師が多く入ってきた年のことでしたが、ICUで2年目の看護師が癖のようにスクイージングしているのを見かけました。その様子を見て、いつか患者さんの肋骨を折ってしまわないか心配になりました。このままでは危険だと直感しました。危機回避という点で、経験からくる直感力というのは非常に重要なのです。癖のようにスクイージングをしてしまう理由というのは、患者さんが良くなっている気がするという感覚があったからだと思いますが、どの看護師がやっても同じ効果が得られているか、また、本当に効果的なのかも疑問でした。
技術レベルでいいますと、2年目、3年目の看護師と剱持師長や私たちでは、全く違います。

ただ、これまでは経験の差という一言で、見過ごされていたことだったかもしれません。

注)軽く圧迫し、空気の出て行くスピードを速めることで、痰の移動を促す手技


この個人差によるバラツキをなくすためにRTXで圧を測って行うことが良いのではないかと考えたのです。経験の差をRTXで埋めようということですね。
当院では排痰を目的にRTXを使用していますが、早朝、深夜を問わず、ベテランやプロフェッショナルがいない時でも、患者さんが必要な時に、1年目の看護師でも排痰ケアができるようになりました。
2009年3月、救命救急センター58床、全ての患者さんの呼吸ケアに責任をもつことを目的に、呼吸ケアチームが看護師を中心に結成され、同月、RTXを2台正式導入しました。この呼吸ケアチームが、当院でのRTXの認知度を高めることになりました。


[ 剱持さま ]

医療器械を導入する際の基準の1つに、患者さんを「不快」から「快」へと変えるものでなければならないと考えています。
その中に体外式人工呼吸器「RTX」があったということです。


呼吸ケアチームの取り組み

今春、2010年度診療報酬の改定がなされ「呼吸ケアチーム加算」が新設されました。
貴院におかれましても呼吸ケアチームが結成されましたが、なぜ呼吸ケアチームの活動がRTXの認知度を上げることになったのでしょうか?

呼吸ケアチーム加算について

基本診療料 A242 呼吸ケアチーム加算(週1回) 150点
C2)加算の算定対象となる患者は、48時間以上継続して人工呼吸器を装着している患者であって、人工呼吸器を装着している状態で当該病棟に入院した日から1月以内の患者又は当該病棟に入院した後人工呼吸器を装着し、装着日から1月以内の患者である。
ただし、人工呼吸器離脱の過程において、一時的に短時間、人工呼吸器を装着していない時間については、継続して装着しているものとみなす。
「平成22年4月版医科診療報酬点数表」


[ 山崎さま ]

先程も申しましたが、呼吸ケアチームの主なミッションは、全ての患者さんの呼吸ケアについて責任をもつということです。
当院のICUでは、1年目も含め看護師はみな、RTXについて知っており、8割の入院患者さんに使用しています。
他2割はRTXが必要のない患者さんです。使用頻度はとても高いといえます。
患者さんが良好に向かいますと、ICUから病棟へと転棟されます。
RTX導入当初は、転棟の直前までRTXを使用していても、 転棟後は病棟の看護師がRTXをまだ知らなかったため、ケアが中止となっていました。
そうしますと、病棟にいる主治医から「ICUではRTXを使用していたのに、病棟では何故使用してくれないのか」と聞かれるわけです。

患者さんからも「病棟ではRTXはどうした?」という声もありました。確かに言われてみればその通りです。

その結果、RTXの継続が必要な患者さんには、“救急の呼吸ケアチームが病棟に出張します”、ということになりました。

呼吸ケアチームが出張する姿を目撃されることがしばしばあるものですから、それを見た救急に直接関係のない他科の先生や看護師からも依頼されるようになり、その活動が院内に広まりました。
これは、一部関係者だけが知っているというわけでなく、病院全体に知られております。


[ 剱持さま ]

ここまで認知度が増すまでになりましたが、その基礎となるRTX導入当初の成功があると考えています。 導入当初、山崎主任がRTXを使用すると決めた患者さんの容態が次々と良好に向かっていったのです。1つ1つの症例の積み重ねが周囲の人の理解を得られる結果につながった。そうでなければ、他科からの依頼も来ないでしょう。

RTXについて、他施設の方から質問されることがありましたが、その時申し上げるのは「導入が一番大切です」とお答えしています。これまで使ったことがないものを導入するわけですから、慣れるまで、やはり面倒だと感じてしまうものです。それが習慣化されるまで熱意ある教育を行うことが大事だと思います。

当院の場合、RTX導入が成功したのは、山崎主任を中心に、徹底した導入教育を行ったことだと考えています。
IMIの担当の方も一緒になってお手伝いいただいたことも非常に大きいですね。


[ 山崎さま ]

今では新人看護師を含め174名の看護師は全員使用することができます。今年の新人に対する教育も終えています。RTXを使用できるようになれば、装着している間はモニタリングをすればよいので看護師にとって負担も減りました。現在5台のRTXを運用していますが、RTXは取り合いになっている現状です。


RTXの使用方法

RTXの使用は排痰目的ということですが、その設定を教えて頂けますでしょうか。

[ 山崎さま ]

排痰目的としてコントロールモードでのバイブレーション(回数600、陰圧-10)の設定で、1日90分を2~3回に分けて使用しています。
初めて使用する患者さんは、コントロールモードから始めます。最初は、コフを入れると違和感を持たれ、10分も続けられないケースがあるからです。 慣れてきてからクリアランスモードでコフを入れていきます。
クリアランスモードは、1回5サイクル20-30分を3回。コントロールとあまり変わらないですね。
コンティニュアスネガティブモードについては、最近、使用することを始めました。

救命救急科の医師から頸椎損傷で首が不安定な状態にある患者さんに何かできることはないだろうかと聞かれた時に、首に振動が伝わらないコンティニュアスネガティブ(持続陰圧)モードはどうかと考えました。外傷で骨折という患者さんや、安静にしていなければならない人に対しても、コンティニュアスネガティブモードを肺拡張、無気肺予防目的で使用しています。

「モードを上手く使えば、用途も広がる」と実感しました。

 

使用上の注意点

RTXを使用する上で気をつけていることがありましたら教えてください。

[ 山崎さま ]

病棟で使用する場合は、必ず看護師が患者さんの側にいるということに注意しています。と申しますのは、ICUでは看護師の視界をさえぎる壁などがなく、RTXの使用中に患者さんの痰が移動してきたタイミングですぐに対応できます。しかし、病棟ではナースステーションの前であっても、壁で視界が遮られますので、患者さんの変化に気がつかないものです。特に人工気道の無い患者さんで分泌物が増加している時は気道閉塞の危険があります。
病棟ではRTX任せにせず、施行中は、患者さんの側にいて会話をしながら状態を観察することをお薦めします。


それともう1つ注意点として、以前一般病棟へ呼吸ケアチームが出張した際、呼吸状態の悪い患者さんがいるから診てほしいと依頼されました。モニターでSPO2が90~92%と低値でした。部屋に行って患者さんを見ますと、長時間、同じ姿勢で寝ているようでした。患者さんの体位を変えてあげると、サチュレーションがどんどん上がっていきました。何でもRTXを使用すれば良いというものではなく、ポジショニングなどをしっかりやって患者さんの問題に合わせた呼吸ケアを行い、正しい適応、必要な時にRTXを使用することが大事ですね。

当院での認知度が高いと申しましたが、院内の医療安全セミナーの場で正しい知識を得ていただくため、医師と私がRTXに関しての説明を行いました。また、院内のプロトコール・手順書にもRTXの使用方法を加えることになりました。


RTXを最初に患者さんに使用する時はコントロールモードからというお話でしたが。

[ 山崎さま ]

意識のある患者さんでRTXを使用する場合、違和感を訴えることがあります。

そういえば先週から病棟に来られた患者さんの場合もそうでした。患者さんは肺炎の恐れがあり、病棟に来まして、6号サイズのキュイラスを着けた際、やはり抵抗を感じておられました。コフが入ると若干抵抗感が増すので、コントロールモードでのバイブレーションのみの動作から使用を開始し、慣れて頂きました。初回は5分程で終了しましたが、現在はクリアランスモードで、コフを入れるまでになりました。その内、バイブレーションを始めると声を出して、ビブラートを響かせ楽しんでいる様子も見られました。

今日はその患者さんのレントゲンを撮り経過を見るので、気になっているんですよ。医師からは良くなったと聞いていますが・・・


[ 剱持さま ]

もうレントゲンは出来ていると思いますよ。

 

【インタビュー途中 レントゲンを見ることに・・・】

(レントゲンを見ながら)


[ 山崎さま ]

以前のレントゲンと比べると、肺がすごい綺麗になっている。
1週間、RTXを継続しました。

確かに綺麗になっていますね。どれくらいの時間、RTXを使用されたのでしょうか?

[ 山崎さま ]

毎日1時間施行しました。以前と何を変えたかと言えば、RTXを追加しただけですので。


[ 剱持さま ]

肺がシャープに映っていますよね。こういう症例の積み重ねがエビデンスに繋がっていくのでしょうね。われわれ看護師は、研究とは別に、患者さんが良くなっているという実感を大事にしたいですね。医師からの呼吸ケアチーム出張依頼は、このような症例を見ているから来るのかも知れませんね。
そして患者さんが良好に向かっている実感を持たれているのだと思います。


今後について

最後に、今後のRTXの展開やご要望、他施設へのアドバイスなどありましたらお聞かせください。

[ 山崎さま ]

これは感想になってしまいますが、先日、神奈川県の勉強会に当院の活動内容を発表する機会がありました。
RTXについても触れたのですが会場から質問があり、患者さんが転院した後の対応を何か考えていますか、と聞かれました。

なるほど裾野を広げていくというのは大切だなと思いました。患者さんが他施設へ移るケースもありますから、RTXがない施設、RTXを使用できる人がいない場合も考えられます。病院を超えた継続ケアというものが大切だということを考えさせられました。


[ 剱持さま ]

その勉強会での他施設の医師から「ICUに入院して初日から呼吸ケアをしているのは知らなかった。これを自分の病院でも広めたい」と言われました。RTXは使用し実感することで理解できることも多くあります。アドバイスがあるとすれば「まずは経験してください」、でしょうか。
今後の展望は、データを集め、どういう疾患が適応症例なのか、エビデンスを固めていきたいですね。その上で、きちんとした形で発表することですね。
最後に、RTX導入の際もそうですが、器械について、不明な点があれば、すぐに対応してくれるアイ・エム・アイのメンテナンスは安全管理の面でも非常に重要ですし、信頼しています。


本日はインタビューのお時間を頂き誠にありがとうございました。


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