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第19回 新生児呼吸療法モニタリングフォーラム レポート
企業企画セッション8「CLiO2(FiO2自動調整機能)つかってみました!」

  • 掲載:2017年03月
  • 文責:レスピラトリ・ケア部
第19回 新生児呼吸療法モニタリングフォーラム レポート<br> 企業企画セッション8「CLiO<sub>2</sub>(FiO<sub>2</sub>自動調整機能)つかってみました!」

第19回新生児呼吸療法モニタリングフォーラムが、2017年2月16日~18日、大町市文化会館・大町公民館にて開催されました。弊社は2日目の17日、企業企画セッション8を共催いたしました。

今回のセッションは、「CLiO2(FiO2自動調整機能)つかってみました!」と題し、海外では既に使用されていますが、日本ではミステリアスな部分も多いと思われております、人工呼吸器AVEAの新機能CLiO2につきまして、実際にご使用頂いた先生方にご講演頂きました。

以下、ご講演要旨をご紹介いたします。
※タイトルをクリックすると要旨をご覧いただけます。

「ターゲットSpO2とCLiO2の基礎」
長 和俊先生(北海道大学病院周産母子センター)

早産児に対する酸素投与は動脈血酸素分圧を測定するという「点」の管理から、連続モニターの発達により、酸素化が目標値になるようFiO2を調整するという「線」の管理に移行し、ターゲットSpO2が導入されました。ターゲットSpO2の目標値が高い場合、未熟児網膜症、慢性肺疾患のリスクが高まり、一方、SpO2の目標値が低い場合には死亡率、壊死性腸炎のリスクが上昇し、長期的予後としては中枢障害のリスクが高まってしまいます。また、児の成熟度とSpO2の許容範囲には密接な関係があり、より早産児であるとターゲットSpO2の許容値は狭いため、厳格な管理が必要となります。

酸素解離曲線より、SpO2を90-95%で管理する場合と85-90%で管理する場合では、85-90%の方は曲線が急峻なため、PO2に換算すると振れ幅が小さくなってしまい、SpO2を低い所で管理するのは非常に難しいです。これらの特徴から、ターゲットSpO2を90-95%と高い所で管理した場合、ターゲットレンジ上限寄りで管理している時間が長くなり、一方、低い所にターゲットを置くと少しのPO2低下でSpO2が大きく下がってしまい、ターゲットレンジ下限より下側に逸脱している時間が長くなるという特徴があります。
SpO2の移動平均をリアルタイム、4秒、8秒、12秒平均に設定した場合の特徴をシミュレーションした場合、移動平均を長く設定すると反応が遅れ、SpO2の急峻な変化がマスクされてしまうため、移動平均をどれくらいで使用しているのかを意識して使用しなければなりません。

CLiO2によるAutoFiO2の原理

人工呼吸器AVEAのCLiO2では、まず、SpO2のターゲットレンジを設定します。するとCLiO2は、このレンジの中央値の上と下に分けてFiO2の挙動が変化します。レンジ内の下半分にSpO2がある場合ではFiO2は変化しません。一方、レンジの内の中央値より上にある場合では、FiO2は中央値を目指し、下降します。また、レンジを外れた場合には急速にレンジ内に入るように上昇、又は下降するように作動します。
CLiO2を使用した場合、FiO2は細かく変化するため、SpO2の変動幅が小さくなった、との報告があります。ただ、CLiO2はSpO2値を予測している訳ではなく、測定結果に基づいてFiO2を変化させるので、外れ値がゼロになるわけではありません。また、同じターゲットSpO2で管理をしても、CLiO2と手動ではSpO2の分布は異なり、ピーク値も異なるという特徴が考えられます。

SpO2のターゲットレンジとアウトカムに関する研究は多く行われていますが、それらは手動管理をした結果であるため、CLiO2を使用することでレンジ外のSpO2に暴露される時間が抑制されるものの、SpO2の分布が手動と異なる点を念頭に置いて使用しなければなりません。

「CLiO2がもたらす酸素調整の質の向上」
千葉 洋夫先生(仙台赤十字病院総合周産期母子医療センターNICU)

ターゲットSpO2のシステマティックレビューより、 高SpO2群(91-95%)に比較して低SpO2群(85-89%)では、退院時死亡率が18%増加し、ROPは25%減少し、良い面もあれば悪い面もあるという結果でした。両群のSpO2の中央値は87%(低SpO2群)、93%(高SpO2群)と6%の差があるはずが、実際には両群のSpO2中央値が上にずれて、低SpO2群では90%、高SpO2群では93%強であり、3%程度の差に縮まり酸素調節自体に問題のあることが推察されました。酸素濃度調節によるSpO2遵守のシステマティックレビューではSpO2が高くなる理由が示されました。酸素濃度調節の改善につながる方法がいくつか挙げられ、その中に自動酸素調節の導入が含まれます。2014年のSolaらによるレビューでは、ターゲットSpO2が85-89%では死亡率が増加し、91-95%ではROPやCLDが増加するという問題を抱え、いずれにしてもターゲットレンジが狭くhyperoxiaを来しやすいことが問題に挙げられています。そのため、ターゲットSpO2として87-94%や88-94%がほどほどに安全で、SpO2遵守を改善し合併症を減らせる可能性あることが示されました。我々の施設でも酸素濃度調節の質向上に取り組んでおり、1年前に現状把握と言う事でワークショップを行いました。さらに10月プロジェクトチームを結成し、改めて急性期・慢性期の呼吸管理とターゲットSpO2の提示を行いました。

人工呼吸器AVEAはMASIMO社製SpO2センサを搭載しており、酸素濃度自動調節(CLiO2)が可能で、patient triggered ventilationが可能でVolume Guaranteeも搭載しています。CLiO2の特徴として、(1)手動に比べ自動の酸素調節は 目標SpO2内の割合が高い(2)自動酸素調節はSpO2を低く、 酸素濃度を低く管理可能 という点が挙げられます。 実際にCLiO2を使用し、手動管理を比較したところ、酸素の調節が一番必要な時期に細かく酸素濃度を自動調節し、ターゲットレンジを維持しようと動き、素早く挙動しているという印象でした。さらに、酸素濃度を下げる様な動きも素早いため、hyperoxiaを避けるため酸素濃度を低く抑えようと働いていると考えられました。
◆ 症例:修正週数25週で700gの呼吸状態の悪い赤ちゃんで当初はHFOで管理しましたが、SIMVに変更し、その後酸素濃度が高くなってきた時期にCLiO2を使用しました。CLD合併しましたが、修正1カ月で酸素投与を中止でき、修正2カ月で退院できました。また、ROPに関しては重症化せず、レーザー治療を回避できました。

CLiO2を使うタイミングとして、(1)酸素濃度が高く、SpO2低下が頻回で細やかな酸素調節が必要な時期、(2)リークが多く、VGモードやSIMV/PSなど呼吸器の特性を活かした呼吸管理が難しい時期、が適切と考えられます。

CLiO2を使用すると看護師さんは赤ちゃんと接する時間は減りますが、それはただ単に楽になるという事ではなく、本来行わなければならない看護をしっかり集中してできるという事です。また、 酸素濃度の調節が実際はどのようになっているのか?という点も重要ですから、MASIMOのヒストグラムを用い、酸素調節の質を確認して“見える化”し、情報共有を良好にしたいと取り組んでいます。

まとめとして、教育を行う事で知識を深め、納得度が高まります。その結果、全スタッフの目標SpO2遵守の意識が高まります。好ましい受持ち患者は酸素濃度調節の質向上には必要な事ですが、自動酸素濃度調節機能の導入することで看護師の負担軽減につながり、手動酸素調節を含む、酸素濃度調節の質の向上につながります。また、アラーム対応の意識を向上することによって速やかで、適切な対応が出来るようになります。最終的に、ターゲットSpO2遵守につながる行動の自覚が当たり前のようになるよう、取り組んでいます。またそのためには情報共有は必須と考えます。

「CLiO2の使用で超早産児のSpO2は安定したのか」
関 聡子先生(長野県立こども病院 総合周産期母子医療センター)

ターゲットSpO2 85−89%群 VS 90−95%群の比較では、85−89%の群のほうが死亡率は高いという報告が多いことから、28週未満の児はターゲットSpO2を90−95%に保つ事が推奨されています。酸素投与が必要な超早産児の場合、実際には約50%がターゲットSpO2の範囲にありますが、30%はそれより高く、20%はそれより低いSpO2と報告されています。そのため、ターゲットSpO2を維持している時間を改善させなければ本当に適したターゲットSpO2は判断できないのではないか?という疑問点があります。
ターゲットSpO2を維持するための手動でのFiO2調整のガイドラインはあるものの、実際の酸素調整に関しては児の状態と看護師の経験年数などによってなかなかガイドライン通りにはいかないことを、皆さんも臨床現場で経験されているのではないでしょうか? また近くにいれば対応できますが、別の患者の対応中で酸素調整が遅れることもしばしばあると言われています。

CLiO2導入

そこで、CLiO2を使ってみることで管理がどのように変わるのかを検討しました。CLiO2システムは、児のSpO2を1秒ごとに更新し(1日86400回)、10秒以内に必要がある場合にはFiO2の変更を行う、という特徴があります。
在胎週数30週までの早産児を対象に、AVEAのTCPLモードを使用し、手動管理と比較しました。はじめて使用してみた感想ですが、ちょうどSpO2とFiO2のトレンドが向かい合った様な形になっており、SpO2が下がるとFiO2が上がり、SpO2が上がるとSpO2が速やかに下がりターゲットレンジを維持するように細かく動いているのが確認できました。通常手動管理では、看護師さんが2-3%程度しか上昇させないのではないかと感覚的に思われるケースでも、一気に10%度上昇させ、回復すると速やかに下げターゲットレンジを維持するように細かく調整していました。そのため、看護業務はかなり軽減されます。また手動管理では、一旦上げた酸素濃度を下げないまま維持している時間が多くみられました。 今回の使用経験で分かった事は、CLiO2をONにした後、OFF、そして再びONにしたケースでは、FiO2が高めで推移していました。これはCLiO2システムの一つの特徴で、それまで使用していたFiO2をAVEAが学習し、どれくらいのFiO2であればターゲットSpO2を維持できるかを自動で判断するためと考えられます。

利点と注意点

CLiO2システムを導入した利点として、(1)手動に比べSpO2目標値を維持する時間が多かった。 (2)CLiO2によってFiO2を低く保ちつつターゲットSpO2を維持することができた。 (3)CLiO2では看護師の受け持ち患者数や経験値などのバイアスに影響を受けずに同一の酸素管理ができた。 (4)FiO2の手動変更回数を大幅に減らす事ができた。 という点が挙げられます。
一方、注意点として(1)SpO2モニター数値とのかい離 がみられましたが、これはモニター側の移動平均を何秒表示するかの違いによるものです。当院では10秒平均に設定変更したところ、AVEAと電子カルテ用のモニター値とのかい離は改善がみられました。SpO2モニターの移動平均値についてですが、文献では8-12秒が推奨されています。(2)サーファクタント投与後の酸素濃度をどんどん下げたいケース では、CLiO2が投与前のトレンドを学習しているため、なかなか下がらないケースが見られました。こういった特殊なケースでは、一旦CLiO2をOFFにし、酸素濃度を調整後に再度ONにするとこで正常に作動しましたので、こういった点を留意して使用すると大きなメリットがあります。

CLiO2システムの今後の展望

CLiO2システムによるSpO2の厳格な管理はCLDの軽症化によって抜管が早くなるか? VG+CLiO2によるダブルクローズドループの効果によってよりやさしい呼吸管理が提供できるのではないか? nCPAPでCLiOは有効か? CLiO2を長期で使用することでCLD,ROP発症率は低減できるか?といった点が今後の検討課題と考えています。

「CLiO2を使用することで超早産児の看護ケアの質は向上したのか」
甕 啓江先生(長野県立こども病院 新生児病棟)

当院では、通常2人でケアを行う場合、片方の看護師がメインのケアを行い、もう片方の看護師がホールディングを行いながらケアのサポートを行います。その際、ケアのサポートをしている看護師が人工呼吸器側に立ち、SpO2の値に応じて酸素の調整を行います。ケアを行うメインの看護師とは反対側に人工呼吸器をセッティングすることが多いために、一人でケアを行うときに酸素を調整したいときはクベースを行ったり来たりするのが現状です。
看護師の経験値によって酸素濃度の調整にどのような差があるか調査するために「安静時、酸素をほぼ使用していない患者さんのSpO2が突然70%に低下したとき最初に何%酸素UPしますか?」というアンケートを実施しました。ほとんどの看護師が28~30%UPすると答えていますが、23~40%UPするという酸素調整に幅のある回答でした。 また、患者さんのSpO2がTargetから外れた時、それぞれ何%酸素濃度を調整するかアンケートを実施しました。85%の下限ぎりぎりでアラームがなった時は2~5%の微調整を行い、95%の上限でアラームがなった時は半数以上の人が酸素調整を行なわず調整しても2~3%の微調整でした。しかし、下限から10%下がった75%の時は、5~10%の調整と人によってばらつきが大きい結果となりました。アンケートはNICU経験1年目から21年目までの看護師から回答を得たため、経験値によって酸素調整に幅のある結果となったと考えられます。

CLiO2導入と看護ケア

深夜帯に3時間ずつCLiO2 ONとCLiO2 OFFした様子を定点ビデオカメラで撮影し児の様子を観察しました。どちらもCLiO2がOFFの時にはB児は17回、A児は46回と3時間でも頻回に酸素を調整していた一方、CLiO2をONの時は酸素調整が自動のため酸素調整を必要としませんでした。
CLiO2使用における看護ケアへの影響を調査したしたところ、(1)ケア中に児から手を離さなくて良いためケアが途切れずスムーズに行うことができ、他児のケア中にSpO2がふらついても、他児のケアを中断して対応しなくてよい。 (2)酸素調整をしてくれるため観察、ケアに集中できる。 (3)SpO2のふらつきにすぐ対応ができないときでも酸素濃度を調整してくれるため、低酸素になりにくい。 (4)受け持ちの経験の差による酸素濃度の差がでない。 (5)おむつ交換や、吸引など、ケア中に、人工呼吸器に触れる機会が減るため、 また、他児のケア中にケアを中断して酸素を調整する必要がないために感染予防になるのではないか、 という意見がありました。
一方、SpO2プローベを生体モニターと人工呼吸器のモニターと2つ装着する必要があるために児の負担になり、生体モニターとの差があるときにどちらを参考にしたら良いのか迷う、という声もありました。 当院で生体モニターとして使用されているフィリップスのモニターは5秒の平均時間でSpO2を算出しています。CLiO2のSpO2は8秒の平均時間で算出しているためその差がSpO2の差として出ているともではないかと考えられました。 結果として、生体モニターの平均時間を10秒にすることでモニター値の差が少なくなり、それまでSpO2の差で困っていた問題は解決されました。

CLiO2を使用することで超早産児の看護ケアの質は向上したのか

CLiO2を使用することで酸素濃度が自動で調整されるため、児のケアに集中することができケアが途切れることなくスムーズに行え、他児のケア中SpO2のふらつきにすぐ対応できない時でも 他児のケアを中断しなくてよい人工呼吸器による酸素調整の為受け持ちの経験差による酸素濃度の差がでないのではないかと考えられCLiO2の導入によって酸素の手動変更回数が減り、患者さんのSpO2が看護師の受け持ち患者さんの数、経験値等のバイアスに影響を受けずTarget SpO2範囲内に維持されることが期待されます。一方、自ら酸素調整を行わないため酸素濃度が常に把握できず酸素需要が増しても実感がない。いつの間にか酸素濃度が上がっている時があるため分泌物の貯留によるSpO2低下に気づきにくく吸引のタイミングが遅れる懸念があり人工呼吸器に表示される酸素濃度を受け持ち看護師が把握するための観察項目など、導入にあたり検討する課題があることがわかりました。

ご講演後にはディスカッションが行われ、活発な議論が行われました。弊社では、CLiO2はターゲットレンジを維持する時間が手動に比べ長くなるため、赤ちゃんにやさしい、そして酸素調節に費やす時間を大幅に減らすことで、看護ケアに集中できるという点でスタッフの皆様にとってもやさしい機能とご紹介してまいりました。今回、改めまして実際にご使用頂きました先生方の生の声を伺う事ができ、上記のようなメリットと共に使用上の注意点についても分かりやすくご解説頂き、ご参加いただきました先生方にもご好評頂きました。

最後にモデレーター及びスピーカーを務められた長先生並びに、千葉先生、関先生、甕先生に厚く御礼申し上げます。


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