特別企画

令和8年度診療報酬改定の概要について①

  • 掲載:2026年04月
  • 文責:事業企画推進部
令和8年度診療報酬改定の概要について①

令和8年度診療報酬改定の概要が公開されました。

今回の診療報酬改定は、物価・賃金上昇や人口減少の中で、診療報酬を通じて医療機関の経営を下支えしつつ、医療従事者の賃上げ・人材確保を進めることを主な目的としています。同時に、2040年頃の生産年齢人口減少と高齢患者の増加を見据え、「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担を明確化し、ICT・AIなど医療DXを活用しながら、地域で必要な医療が完結する体制と、持続可能な働き方の実現を目指しています。

入院・外来・在宅・介護の連携強化や、かかりつけ医機能、在宅医療・訪問看護の充実、医療資源が乏しい地域への支援に加え、救急・小児・周産期・がん・精神・難病・感染症、歯科・薬局などの重点領域については、安心・安全やアウトカムに着目した評価を行うことで、質の高い医療を推進する内容となっており、特に急性期領域に対する評価が相対的に手厚い改定となっています。

こうした背景を踏まえ、本記事では改定の全体像を概観しつつ、とりわけ入院医療の中でも集中治療室および地域包括医療病棟に焦点を当てて、改定内容を整理していきます。

(図表:赤字は主な改定箇所を示します)

特定集中治療室、管理料区分の統合と施設基準の改定

特定集中治療室(以下、ICUと表記)に関して大きな見直しが行われます。広範囲熱傷の有無によって区分が分かれていた管理料を、簡素化の観点から統合されます。これまで1~6に区分されていましたが、1~3に改定されます。

ICUでの「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票に「蘇生術の施行」「抗不整脈剤の使用(注射剤)」「一般的ペーシング」が追加されます。重症者の受入基準は管理料1で80%以上、管理料2・3で70%以上となりました。A項目2点以上は変更ありません(図1参照)

図1:ICU用「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票

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これまでSOFAスコアについては、管理料1・2では入室日のSOFAスコア5点以上の患者10%以上、管理料3・4では入室日のSOFAスコア3点以上の患者10%以上が患者割合の要件でした。今回の改定で、管理料1・2において入室日のSOFAスコア5点以上の患者2割以上が要件となります。SOFAスコアは呼吸機能、凝固機能、肝機能、循環機能、中枢神経機能、腎機能の6項目を5段階(0~4点)でスコア化し、臓器障害の程度を判定するもので、患者の生命予後と一定の相関関係があるとされています(図2参照)

管理料と施設基準は図3の通りです。

図2:SOFAスコア一覧

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図3:ICU管理料・施設基準概要

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他に、ICUの施設基準に「救急搬送件数」と「全身麻酔手術件数」の実績要件が新たに導入されます。具体的には、年間の救急搬送件数が1,000件以上または全身麻酔手術件数が1,000件以上(医療資源の少ない地域ではいずれも800件以上)、小児病院では全身麻酔手術件数が年間500件以上(同400件以上)という基準が適用されます。重症患者対応体制強化加算の特定機能病院への拡大、特定集中治療室遠隔支援加算の施設基準見直しなどが行われます。ICU領域における重症患者対応の強化と機能集約、人材育成、遠隔ICUの適切な推進が図られる内容となっています。

地域包括医療病棟、高齢者救急幅広い受け入れを目指し、施設基準見直し

地域包括医療病棟について、大幅な見直しが行われます。まず入院料は、「急性期病棟との併設の有無」「緊急入院か予定入院か」「手術の有無」という3つの軸で細かく区分され、それぞれの点数が引き上げられます。これにより、特に内科系の症例や、誤嚥性肺炎・尿路感染症など、高齢で医療資源投入量が大きい患者の緊急入院を、より積極的に受け入れられるよう設計されています。また、休日リハビリテーションの提供割合やADL低下患者の割合などの要件について一部緩和が行われ、より多くの病棟が地域包括医療病棟として機能しやすいよう配慮されています。

さらに、「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票(図4)については、該当患者の定義を「A2点以上またはC1点以上」と見直すとともに、該当患者割合も必要度Ⅰで19%以上、必要度Ⅱで18%以上といった指数に基づいて評価する方式へと変更されます。加えて、平均在院日数およびADL低下患者割合の基準は、85歳以上の患者が占める割合に応じて段階的に緩和されることになり、高齢患者が多い病棟の実情を踏まえた、より柔軟な運用が可能となります。

なお、この入院料は前回の診療報酬改定で新設されたものであり、その背景には、高齢者特有の軽症〜中等症の増加や、急性期病棟に入院した高齢患者の一部で、急性期治療中に離床が進まずADLが低下し、その結果として在宅復帰が遅れてしまうという課題がありました。この新設入院料により、ADL低下や在宅復帰の遅れの改善が期待されましたが、実際には届出件数は十分には増加しませんでした。今回の点数引き上げと施設基準の見直しにより、地域包括医療病棟入院料の届出が増え、今後増加が見込まれる高齢者の救急ニーズに対して、地域でより的確かつ継続的に対応できる体制の整備が期待されています。

施設基準の概要については図5を参照してください。

「重症度、医療・看護必要度」の評価方法:「Ⅰ」は研修を受けた看護師等によるマニュアル評価、「Ⅱ」は診療実績データ(レセプト電算処理システム用コード)を用いた評価です。近年は「Ⅱ」による評価が義務化される傾向にあります。

図4:地域包括医療病棟用「重症度、医療・看護必要度」に係る評価票

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図5:地域包括医療病棟入院料と施設基準概要

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特掲診療料のJ処置における人工呼吸関連項目で、改定および新設があります。

J026-3およびJ026-4はそれぞれ点数が引き上げられます。

J045(人工呼吸)については、5時間を超える場合(14日目まで)の点数が950点から1,140点に改定されます。また、新設項目としてJ045-3「電気インピーダンス断層撮影」が追加されました(図6参照)

図6:J処置人工呼吸関連改定項目(一部)

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まとめ

今回は集中治療室と地域包括医療病棟について主な改定ポイントをまとめてみました。近年の傾向ではありますが、各病棟において医療従事者を確保し、その医療機能に応じた病床の確保、患者の受入れを促す改定内容となっています。それぞれの機能において重症度とその受入基準が明確化され、医療機能の明確化と集中がさらに進んでいくと考えられます。


<参考URL>

厚生労働省website[令和8年度診療報酬改定説明資料等について外部サイトが開きます

本文添付の図は上記資料を参考に作成しています。


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