セミナー情報

第23回日本臨床救急医学会総会・学術集会 Webセミナー8
「未来‐拡がる自動瞳孔計の可能性」ご報告

  • 掲載:2020年10月
  • 文責:クリティカル・ケア部
第23回日本臨床救急医学会総会・学術集会 Webセミナー8<br>「未来‐拡がる自動瞳孔計の可能性」ご報告

第23回日本臨床救急医学会総会・学術集会(2020年8月27日~28日 会長:国士舘大学大学院 救急システム研究科 教授 田中 秀治先生)が、WEB開催にて執り行われました。

Webセミナー8
視聴期間: 9月16日(水)~ 9月30日(水)
会場: 第23回日本臨床救急医学会総会・学術集会
学会HP
演者:

山口 順子先生

日本大学 医学部 救急医学系
救急集中治療医学分野 准教授

抄録:

※pdfが開きます(73KB)

学会HP:

第23回日本臨床救急医学会総会・学術集会
※外部サイトが開きます

本学会にて、WEBセミナー「未来-拡がる自動瞳孔計の可能性」(演者: 日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野 山口 順子先生)を共催させて頂きましたので、ご報告させて頂きます。

日本大学医学部附属板橋病院について 日本大学医学部附属板橋病院について
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演者の山口先生がご勤務されている日本大学医学部付属板橋病院は、38診療科、1025病床を持つ特定機能病院であり、救命救急センターは、救急初療からICU管理(ICU16床、CCU6床、計22床)に渡る診療を行っています。

また、救命救急センターは東京都における母体救命センター事業、こども救命事業、急性期脳卒中対応および大血管疾患の対応を行う脳卒中及び大動脈ネットワーク事業に参画し、幅広い年齢、疾患の患者様の救急医療に対応しています。

本セミナーでは、以下の5つのコンテンツに分けてご講演されました。

瞳孔反応を臨床で利用している現状
~救急集中治療領域では、主に中枢神経領域においてこれを利用してきた~

はじめに、「これまで私達は、瞳孔径や瞳孔反応を観察することで、患者様の危機を回避してきた」と救急集中治療領域における瞳孔観察の重要性についてご説明されました。そして、「瞳孔観察は、ベッドサイドで行うことができる重要かつ基本的な神経学的観察項目であるが、ペンライトを使用した従来の瞳孔観察法には誤診の可能性がある」ことを、文献1)を用いて説明され、「ペンライトによる瞳孔反応は主観的であり、これを定量的測定へ変えたのが自動瞳孔計である」とお話しされました。

自動瞳孔計については、機器の特徴についてもご説明されました。

自動瞳孔計 自動瞳孔計
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  • 赤外線を用い、瞳孔径、瞳孔の対光反射を測定し、数値化する。
  • 片手で持てる装置で、光刺激に対する瞳孔反応の写真を撮ることができる。
  • 一定の距離、一定の角度から一定の光量を照射し、瞳孔変化をキャプチャーして解析する。
  • ペンライトは観察者間に差異が出て、誤診の可能性が生じるが、自動瞳孔計は定量化した数値で評価できる。

中枢神経領域における自動瞳孔計測定の効果について

自動瞳孔計を使用した文献をいくつかご紹介されました。

頭蓋内圧上昇時における早期指標としての瞳孔反応性2)

頭部外傷患者を対象とし、ICPとNPi(神経学的瞳孔指数)は相関関係にあることを示した(ICP高値時、NPiは低値となる)。

CPA症例の赤外線瞳孔計における対光反射の変化3)

自動瞳孔計で心肺蘇生中の対光反射を経時的に測定し、転帰予測としての対光反射の信頼性を検討。自己心拍再開(以下:ROSC)した症例では消失していた瞳孔反応が出現しているが、ROSCしなかった症例では、心肺蘇生を開始した1分後にはみられていた瞳孔反応は、その後、徐々に消失した。蘇生中の対光反射の連続的な存在と5分未満の対光反射の消失は転帰良好と関連し、5分以上の対光反射の消失は転帰不良と関連していた。

そして、実際に日本大学医学部附属板橋病院 救命センターへ搬送された心停止後症候群(以下:PCAS)の患者様2例の転帰についてご説明されました。

救命救急センターへ搬送されたPCAS症例2例

  • ① 搬送時、ペンライトにて対光反射が消失しており、自動瞳孔計の測定値も全て異常値を示し、6時間後に死亡した。
  • ② 搬送時、ペンライトでは対光反射は見られなかったが、ICU入室時、瞳孔記録計では、CV(平均収縮速度)と%CH(収縮率)は正常値であった。NPiは一時的に低下したが、その後回復。治療後に生存退院された。

次に、自動瞳孔計を使用して、予後予測が行える可能性を示した文献についてもご紹介されました。

急性脳障害を有する患者における瞳孔計の臨床的有用性4)

予後不良群の初期NPiの平均は0.88、予後良好群のNPiは3.89と有意差があった。また、初期NPi 3.4が特異度、感度ともに最も高く、初期NPiが予後予測のCut off値となる可能性を示した。


瞳孔反応の仕組み/瞳孔の大きさおよび対光反応に影響を与える因子


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瞳孔反応の仕組みとともに、「瞳孔反応に影響を与える因子として、網膜の順応状態、刺激光の入射量、照射される網膜の部位、精神状態、年齢差などがあげられる」ことや、「瞳孔を正確に測定するためには、これらの条件を一定にすることが望まれる」とご説明されました。

また、「自動瞳孔計を用いた瞳孔観察を行うことによって、中枢神経系のモニタリングの精度を高めていくことだけでなく、昏睡患者の転帰予測を行うことや、鎮痛管理の精度をあげることなどの報告もされているため、中枢神経領域以外でも、瞳孔観察によって、患者様の危機を回避する情報を得ることができるのではないか」と自動瞳孔計の更なる可能性もお示しされました。


案外「小さい」瞳を私たちは相手にしているのかもしれない ~当院データから~

昨年、山口先生のご勤務される救命救急センター内のICUにて、瞳孔記録計NPi-200を5台使用した研究が行われました。1ヶ月間で28名の患者様に対し、合計1069回の瞳孔測定が行われ、併せてバイタルサインや血液ガス分析データも集積し、それらのデータから、オムニバス形式で症例をいくつかご報告されました。薬物中毒や糖尿病の方の瞳孔変化についてもご説明され、自律神経障害の患者様への瞳孔観察の有用性に関して、更に理解が深まりました。

また、「測定された瞳孔径を平均すると、ER、ICUともに半数以上が3mm未満であり、実診療のなかでは3mm未満という小さい瞳の患者様を観察していかなくてはいけない。ペンライトでの観察は、客観的な評価が困難であり、微細な変化を見逃す可能性もある」ということもご説明されました。


未来-拡がる ~自動瞳孔計の可能性~

  • 瞳孔観察は、これまで中枢神経領域の評価に主に用いられてきた。
  • 瞳孔は自律神経の窓でもある。
  • 重篤な疾病に対する様々な情報を、瞳孔所見から得ることができるかもしれない。
  • 瞳孔径や瞳孔反応は、リアルタイムで変動している。
  • 私達は瞳を十分に観察できているのだろうか、肉眼で観察するのは、精度が高くないのかもしれない。
  • 物言わぬ患者様は、絶えず瞳孔から我々が知らない多くの事実を語っているのかもしれない。

最後に、このように締めくくられました。

現在は、主に中枢神経疾患や心停止後症例の患者様に使用されている自動瞳孔計ですが、今後更に多くの病態の患者様の危機回避のために、少しでもお役に立てれば幸いです。山口先生のご講演により、自動瞳孔計の更なる可能性と、明るい未来への拡がりを見出すことができました。ご多忙の中、このような素晴らしいご講演をしていただいた山口先生に、心より厚く御礼申し上げます。


【文献】

  • 1) Du R, Meeker M, Bacchetti P, et al: Evaluation of portable infrared pupillometer. Neurosurgery, 57:198-203, 2005.
  • 2) Jeff W et al: Pupillary reactivity as an early indicator of increased intracranial pressure: The introduction of Neurological Pupil index. Surg Neurol int.82(2),2011
  • 3) Matthias B et al: Infrared pupillometry to detect the light reflex during cardiopulmonary resuscitation: A case series. Resuscitation 83:1223-28,2012
  • 4) Jeong G et al: Clinical Utility of an Automated Pupillometer in Patients with Acute Brain Lesion J Korean Neurosurg Soc 58(4):363-7,2015

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