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平成21年 医療事故、ヒヤリ・ハット事例の紹介

  • 掲載:2011年01月

先般、財団法人 日本医療機能評価機構(JCQHC)より、平成21年1月1日~12月31日までに医療機関より報告されたヒヤリ・ハット事例、および医療事故情報の報告を取り纏めた「医療事故情報収集等事業 平成21年年報」が公開されました。

対象期間中、ヒヤリ・ハット事例は全国の1,210病院(参加登録医療機関)から、245,291件が報告され、また、医療事故についても、273病院(報告義務対象医療機関)から1,895件が報告されたとのことです。

これらの報告事例は、実際に発生した実例、リアルな体験ですから、これらの事例、発生傾向を知ることは、注意すべきポイントの把握、リスク回避につながるものと考えます。そこで、本報告書の中から人工呼吸器にスポットを当て、発生傾向、具体的な事例についてご紹介いたします。

人工呼吸器の医療事故、ヒヤリハット事例の発生分類

(財)日本医療機能評価機構による医療事故情報収集等事業年報では、医療機器毎に異なる発生事例について分類(コード化)をしており、例えば、人工呼吸器については、次のように分類して集計しています。

1.電源、2.酸素供給、3.回路、4.加温加湿器、5.設定・操作部、6.呼吸器本体、7.その他

平成21年年報によりますと、平成21年1月から12月末までの人工呼吸器の医療事故報告は31件、ヒヤリ・ハット事例の報告は94件あり、分類別では以下のとおりです。

件数/分類 電源 酸素供給 回路 加温加湿器 設定・操作部 呼吸器本体 その他 総計
ヒヤリハット 2 4 23 15 6 3 41 94
医療事故 2 2 16 0 2 2 7 31
合計 4 6 39 15 8 5 48 125

スタンバイ状態での患者への装着

平成21年度は回路(呼吸回路)に起因する医療事故、ヒヤリ・ハット事例が最も多いことがわかります。

回路に起因するヒヤリ・ハット(医療事故は除く)は、平成19年年報では全体の32%、平成20年も32%と毎年最も多く報告されている事象ですが、報告件数で見ると、平成19年は54件、平成20年は36件、平成21年は23件と、毎年減少していることがわかります。

これは、院内でのスタッフ教育、各企業による安全使用の案内、ならびに本報告書に代表されるヒヤリ・ハット事例の紹介や行政通知等によって、「人工呼吸器使用時は回路の取り扱いに注意する」との認識が浸透してきているものとも読み取れます。

弊社におきましても過去、人工呼吸器の回路に関するヒヤリ・ハット事例を取り上げておりますので、今回は回路以外の注意すべき事例を紹介させていただきます。

■ 呼吸回路図 「人工呼吸器VELA 呼吸回路の組立」動画

スタンバイ状態での患者への装着

本報告書で報告されている事例を確認したところ、「人工呼吸器をスタンバイ状態で患者に使用した」との事例が2件ありました。以下に発生事例を簡潔に纏め、紹介します。

stanby
  • 1.患者がトイレに行く際、一時的に人工呼吸器を外し、人工呼吸器のアラームが鳴りっぱなしになるため「スタンバイ」状態にした。患者がトイレから戻り、「スタンバイ」状態のまま患者に人工呼吸器を装着したが、換気の再開方法が分からなかった。
  • 2.患者の体位交換を実施する際、人工呼吸器のモードを一旦「スタンバイ」状態にした。体位変換後、ウォータートラップの水抜き等を行い、「スタンバイ」状態のまま退室してしまった。

上記事例は、人工呼吸器の「スタンバイ」状態に関する認識もしくは取り扱い方法の習熟が十分ではなかったこと、患者装着後の換気状態の確認が十分ではなかったことが推察されます。

人工呼吸器の中には「スタンバイ」状態にできる機能を有している機種があります()。

主電源OFFの状態からの起動と違い、プログラムの読み込みや自己診断(POST)を完了している「スタンバイ」状態は、直ぐに換気モードに移行できますが、反面「スタンバイ」の状態では換気もアラームも作動しません。また、液晶表示タイプの人工呼吸器では、「スタンバイ」状態で液晶画面が表示される機種もありますが、このような機種では液晶画面に表示されるメッセージから、人工呼吸器が換気状態かスタンバイ状態か、使用者が判別します。

先ずは、ご使用になられる人工呼吸器の取り扱い方法、操作方法について理解を深めると共に、患者が離床する時以外は「スタンバイ」状態にしない、人工呼吸器再装着時には胸部の動きを確認するなど、院内でルール付けをすることが再発防止につながると考えられます。

※弊社取扱機種では、AVEA、ベアーカブ750、LP6Plus、LP10、RTX、レジェンドエアに「スタンバイ」状態にできる機能があります。

新人看護職院内研修プログラム

弊社では人工呼吸器による医療事故、ヒヤリハットの院内研修プログラムを新人看護職向けに教育サービスをご提供しております。このプログラムでは人工呼吸器の基礎、構造解説に加えて、トラブル発生時の対処法をシミュレーションし短期間に経験を積んで頂ける実践型の研修プログラムとなっています。

平成21年年報について

平成21年年報に新しく追加されたものとして、具体的問題の共有として個別テーマが追加され、平成21年4月から薬局ヒヤリ・ハット事例の報告も公表されています。

報告件数の内訳ですが、患者さんと接触機会の多い、看護師・医師が上位を占めております。また、薬剤師も昨年同様、上位にあがってきております。このような状況から、職種別に対策、対応が必要と言えます。

平成20年

平成21年

医療事故・・・555施設 1,563件

ヒヤリ・ハット・・・1,137施設 223,981件

(報告義務医療機関及び参加登録申請医療機関)

医療事故報告件数・・・700施設 2,064件

ヒヤリ・ハット件数・・・1,210施設 245,291件

(報告義務医療機関及び参加登録申請医療機関)

■医療事故について

●発生場所

1.病室 913件 44.2%、 2.手術室 302件 14.6%、 3.廊下 77件 3.7%、
4.トイレ 66件 3.2%、 5.ICU 57件 2.8%

●当事者の職種(複数回答可能)

1.看護師 1,432件、 2.医師 1,164件、 3.准看護師 50件、 4.歯科医師 41件、
5.薬剤師 30件

(報告月に基づいた集計)

■ヒヤリ・ハットについて

●発生場所

1.病室 133,373件、 2.ナースステーション 25,703件、 3.病棟その他 9,746件
4.手術室 7,477件、 5.ICU 7,420件

●当事者の職種(複数回答可能)

1.看護師 198,208件、 2.医師 11,308件、 3.薬剤師 6,793件、
4.臨床検査技師 3,142件、 5. 診療放射線技師 3,035件

発生場所

発生要因

発生要因として多いのは、確認、観察に関する事項ですが、これらの要因は単一要素だけで医療事故、ヒヤリ・ハットとして顕在化するものばかりではありません。幾つかの要因が複合し、顕在化することが少なくありません。発生要因について広い視野から分析・評価のうえ、対策・対応を検討することが必要です。

●医療事故の主な発生要因(複数回答可能)

1.確認を怠った 15.2%、 2.観察を怠った 14.6%、 3.判断を誤った 14.1%、
4.連携が出来ていなかった 5.6%、 5.説明不足 5.5%

●ヒヤリ・ハットの主な発生要因:詳細(複数回答可能)

1. 確認 152,529件、 2. 観察 77,524件、 3. 心理的状況 84,575件、
4. 勤務状況 36,462件、 5. 判断 51,876件、 6. 患者・家族への説明 36,244件、
7. 連携 33,250件、 8. 知識 20,668件

安全管理教育

医療事故、ヒヤリ・ハット情報は、ケーススタディとして活用できるだけでなく、医療現場に求められる安全管理上必要なポイントが多々含まれております。寄せられた現場情報を元に、職員の教育内容を検討されてはいかがでしょうか?

また、弊社では安全管理教育に最適なシミュレーション教育プログラムをご用意しております。

シミュレーション教育では、疑似的な設定場面を作りだし、安全管理教育に臨場感をもたらします。

疑似的な設定場面とは、例えば、今回の年報に追加された個別テーマにある「全身麻酔におけるレミフェンタニル使用に関連した医療事故」の事例なども再現が可能です。

【9】全身麻酔におけるレミフェンタニル使用に関連した医療事故

【 事例1 】

全身麻酔を終了するためにレミフェンタニルの投与を中止した。手術終了後、レミフェンタニルの投与に使用していた静脈ラインにヘパリンロックをするために、少量のヘパリン入りの生食でフラッシュしてロックした。帰室1時間後、そのラインよりソルデム3Aを開始したところ、突然、患者は眼球上転、両上肢肘屈曲位で拘縮し呼吸停止した。挿管後、人工呼吸器による呼吸管理をしていたが、その後、自発呼吸を認めたため抜管した。

「医療事故情報収集等事業 平成21年年報」

シミュレーション教育とはどうようなものか、動画サイトよりご紹介させて頂きます。

全身管理を唯一再現できるMETI社の高機能患者シミュレータにレミフェンタニルの薬剤投与に反応し病態変化がおきます。

この際、呼吸循環モニタの波形も変化します。この状況にいかに対応するかといった学習が可能です。

安全管理教育にシミュレーション教育を取り入れてみようとお考えの教育担当者様は、ぜひ一度ご連絡ください。

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