ユーザーの声

急速輸液装置 SL One®
医療法人徳洲会 野崎徳洲会病院 副院長・麻酔科部長 武富 太郎 先生

  • 掲載:2022年04月
  • 文責:マーケティング部 急性期ケアエリアチーム
急速輸液装置 SL One®<br>医療法人徳洲会 野崎徳洲会病院 副院長・麻酔科部長 武富 太郎 先生

医工連携で開発された急速輸液(輸血)加温装置 SL Oneを、弊社は昨年4月から発売開始しましたが、SL Oneユーザーであり、開発に携わられた野崎徳洲会病院麻酔科部長・副院長 武富太郎先生より、開発の経緯、製品への思い、製品の特長や使用事例などを纏めていただきました。この記事により、SL Oneの有用性をご理解いただき、危機的出血例等の治療のお役に立てれば幸甚です。

武富 太郎(たけとみ たろう)先生 ご略歴 武富 先生
医療法人徳洲会 野崎徳洲会病院 副院長・麻酔科部長

武富 先生
[ 経歴 ]
2002年: 昭和大学医学部卒
2013年: 神戸大学経営大学院(MBA)卒
2004年: 帝京大学麻酔科にて麻酔科研修終了。米国医師免許(ECFMG)取得後、2005年より渡米し、Emory大学、Cleveland Clinicにて止血凝固研究、肝移植麻酔に従事。帰国後、岡山大学、加古川東市民病院などを経て2015年より医療法人徳洲会 野崎徳洲会病院へ。

[ 野崎徳洲会病院 webサイト ] https://nozaki.tokushukai.or.jp/

はじめに

実はSL Oneは、私が思い立って作ろうと発案してできた医療機器で、人一倍の思い入れを持っています。臨床に従事する医師が医療機器開発に深く携われる機会は多くはないと思いますので、今回はSL One開発のきっかけ、SL Oneにしかない優れた機能や魅力、SL Oneはこう使えばよい、といった実臨床で役に立つお話をしたいと思います。

野崎徳洲会病院の紹介

当院は大阪府でありながら生駒山のふもと近くに位置しており、とても風光明媚なところにあります。およそ車で30分山を跨げば奈良の東大寺などの仏閣を拝める一方、大阪の中心街まで電車で20分という都会派にもうれしい立地です。平日は仕事終わりに梅田や中之島のお洒落な場所でグラスを傾けることができ、週末には寝屋川河川敷の公園などでみなでバーベキューといろんな楽しみがあります。病院の隣には市営テニスコートがあり、仕事終わりに一汗かいて帰宅するというのが私のお気に入りです。また生駒山の山腹にある古いホテルで、花火大会を鑑賞しながらのビアガーデンはうちの手術室の恒例行事です。もっとも最近はコロナでずっと中止ですが..。

野崎徳洲会病院 野崎徳洲会病院

病院横に付属研究所も擁しています。

さて病院ですが、当院は219床を有する急性期総合病院です。脳外科、心臓血管外科、外科(消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、整形外科、歯科口腔外科)、循環器内科、消化器内科、泌尿器科、婦人科などを標榜し、ICU8床、HCU4床を擁します。このコロナ禍では徳洲会・大阪コロナ重症センターとして20床、軽症・中等症専用病床として36床を新規に開設して現在も運用しています(令和4年3月現在)。

徳洲会・大阪コロナ重症センター

徳洲会・大阪コロナ重症センター

徳洲会・大阪コロナ重症センター

徳洲会・大阪コロナ重症センター

手術室は6室と少ないですが、手術件数は年間1800件程度で緊急手術が約3割を占めるかなり多忙な手術室です。当法人の「生命だけは平等だ」の理念のもと、断らない医療を24時間365日提供しています。麻酔科は手術麻酔だけではなく、ICU管理やカテ室での麻酔や鎮静、救急外来での気道管理などのヘルプも行っています。ここ数年はコロナ禍でECMOや呼吸管理で非常に忙しくなってしまいました。今はコロナ終焉後に大好きな魚釣り旅行にいくことを楽しみに頑張っています。

手術室は6室と少ないですが、手術件数は年間1800件程度で緊急手術が約3割を占めるかなり多忙な手術室です。当法人の「生命だけは平等だ」の理念のもと、断らない医療を24時間365日提供しています。麻酔科は手術麻酔だけではなく、ICU管理やカテ室での麻酔や鎮静、救急外来での気道管理などのヘルプも行っています。ここ数年はコロナ禍でECMOや呼吸管理で非常に忙しくなってしまいました。今はコロナ終焉後に大好きな魚釣り旅行にいくことを楽しみに頑張っています。

急速輸液装置SL One 開発への思い

SL Oneを開発するきっかけになった出来事についてお話しします。それは私が研修を終えてようやく自立して麻酔をするようになってすぐのことだったと思います。当時、私は神奈川県にある葉山ハートセンターにおり、大腿動脈瘤の麻酔を担当していた時のことです。通常であれば何の問題もなく終わるはずの手術でしたが、不意の大量出血で突然、術野が血の海となったのです。それはあまりにも突然のことでした。外科的にも内科的にも止血に難渋し、いわゆる危機的大出血を宣告すべき状況に陥ったのです。輸液、輸血が間に合わず患者さんは術中に心筋梗塞を起こしました。急遽、追加で冠動脈バイパス術を行ったのですが、その甲斐もなく患者さんは翌朝に亡くなりました。

当時の葉山ハートセンター麻酔科の上司で院長でもあった小田利通先生に呼ばれ、症例管理の反省点などをご教示いただいたのですが、先生の話を聞きながら自分の医師としての未熟さからの羞恥心、罪悪感、そして無力感が入り混じった、言いようのない感情がこみ上げてきてしまいました。私は柄にもなく、迂闊にもうっすらと涙を浮かべてしまい、ごまかすように大きく目を見開いていたことを鮮明に覚えています。最後に小田先生より、「この経験はこれから麻酔科医をやっていくうえで絶対に忘れず心に刻んでおけ」と言われた一言が、その後SL Oneを開発するきっかけになったのです。いまでもその患者さんのお名前をしっかり覚えていますし、麻酔記録のコピーも大切にとってあります。

運命のいたずらなのかわかりませんが、その後は米国のEmory大学で2年にわたって止血凝固研究を行い、Cleveland Clinicでは肝臓移植麻酔フェローとして毎日のように大量出血と対峙し、大量出血の患者管理に欠かせない知識と経験を得ることになりました。そして帰国後に私は「ボリューム管理を手中に」することができる機器を頭に描き、「安全で使いやすい急速輸液・輸血装置の開発」提案を(株)メテクに打診しました。同時に経済産業省の課題解決型医療機器等開発助成事業にも応募したところ、運よく採択され、高額な開発助成金を2年間にわたっていただくことができました。

当時は大量出血時のローラーポンプの使用で空気混入による患者死亡事故が相次いでいたため、医療機器開発の大きな課題として認識・評価されたのでしょう。税金という公的なお金をいただくことで我々の開発に成功義務が生じ、尻に火がついたまではよかったのですが、多くの困難に阻まれ、結局は完成までにおよそ9年の歳月を要しました。(株)メテクの開発部の面々との打ち合わせは記録にあるだけで東京、埼玉、大阪、岡山、神戸などでおよそ60回近くにものぼり、時には私のいる手術室まで来ていただき、議論したこともありました。

初めて第1例目の患者さんにSL Oneを使用したときはちょっと緊張しましたが、メーカーの方もこられ、何の問題もなく使えたことを皆で喜びました。これまでの苦労が報われ、私もものづくりの感動を少し味わうことができました。なによりもようやく葉山ハートセンターでのあの患者さんの経験を大きなプラスに変えることができ、失った患者さんはもどりませんが、SL Oneが完成したことが私にとって心の免罪符になったことは間違いありません。

SL Oneの特徴

急速輸液装置 SL One
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SL Oneには臨床医が使う上で役に立つ仕様や機能を盛り込みました。最大の特徴はなんといっても、空気混入の心配がなく安全に使うことができる点です。以前は大量出血時にローラーポンプを使用した輸血時に誤って体内に空気を送ってしまう死亡事故が相次いだことを記憶しておられる方もいるでしょう。

SL Oneには臨床医が使う上で役に立つ仕様や機能を盛り込みました。最大の特徴はなんといっても、空気混入の心配がなく安全に使うことができる点です。以前は大量出血時にローラーポンプを使用した輸血時に誤って体内に空気を送ってしまう死亡事故が相次いだことを記憶しておられる方もいるでしょう。

急速輸液装置 SL One

SL Oneではエア抜きはリザーバーに十分な輸液量がある限り、運転を停止せずに自動で行ってくれます。これは開発部の方が考案した機能で画期的なものです。肝心な時にシリンジで回路からエアを抜いて…などという手間はありません。

セットアップも非常に容易です。画面の案内に従って行えば、だれもが迷わず確実に行うことができます。慣れれば2~3分ですぐに使う準備を整えることができるでしょう。

急速輸液装置 SL One
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リザーバーの採用もひとつの特徴に上げられます。大量出血時のFluid resuscitationではMAP、FFP、アルブミン、生食などの製剤を大量に使うことになりますが、これらを好きな割合で一度にリザーバーにためておくことができます。もちろん大量出血でない場合は各製剤を少しずつ投与することもできます。そして私のたっての要望としてボーラスボタン(最大200ml)と急速輸液ハンドルを採用してもらいました。

リザーバーの採用もひとつの特徴に上げられます。大量出血時のFluid resuscitationではMAP、FFP、アルブミン、生食などの製剤を大量に使うことになりますが、これらを好きな割合で一度にリザーバーにためておくことができます。もちろん大量出血でない場合は各製剤を少しずつ投与することもできます。そして私のたっての要望としてボーラスボタン(最大200ml)と急速輸液ハンドルを採用してもらいました。

急速輸液装置 SL One
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これまでの急速輸液装置は維持輸液もかなりの高流量で設定することができてしまい、時に戻し忘れで過剰輸液になってしまったという失敗談も聞いていました。過剰輸液は心不全を招く恐れもあり、そのリスクを減らすために急速輸液をボーラスボタンと急速輸液ハンドル(回している間だけ高流量で送液)に限定したのです。

ハンドル操作では、たとえば心臓手術の際には実際の心臓や心エコーを見ながらハンドルを回しながら必要な分だけ急速輸液するというこまやかな使い方を可能にしました。

また患者の投与側のルートは2又にしており、最大で2つの輸液ラインに同時に接続して使うことができます。予定された手術の出血で日本人程度の体格であれば1本で十分なことが多いはずですが、大きな患者さんや出血性ショックからの蘇生などには2つあった方が便利でしょう。点滴ラインは太いに越したことはありませんが、SL Oneは圧制御で送液をコントロールしていますので、細いルートでも運転を止めずに可及的に高流量で常時送液することが可能です。


また急速輸液に欠かせないのが加温器ですが、この十分な加温性能の達成には開発部も大変苦労したようです。なにぶん4度まで冷えたMAPを500ml/分もの流速で大量輸液する際にもしっかりと37度まで加温せねばなりません。見ればなんでもない回路なのですが、その素材や厚さの決定、間接的に温める回路の方向など、我々のような素人には全く気付かない技術が隠されています。

完成までには多くの実験と試行錯誤がなされました。SL Oneには私たち医療従事者とおなじような思いで、ものづくりに携わってくれた技術者の魂が込められています。


第1例目の使用を終えて開発に携わった(株)メテクの星野さん、吉岡さんと

SL Oneを実際に使用して

これまで術中の大量出血となると、輸血の手配やシリンジを使ったポンピングなどでスタッフがてんやわんやになってしまうことが多かったのですが、このSL Oneを使い始めてからは当然そんなことも無くなりました。わたしの病院では解離性大動脈瘤を扱うことが多く、大量輸液が必要な場面も多いのですが、このSL Oneを使用することで大量出血の際にも麻酔科医一人で十分に対応することができます。私にとっては大切な相棒といったところでしょうか。

ECMO患者での使用

もうひとつ当院ではVV-ECMOを使う際にもSL Oneが活躍してくれています。ECMO管理においては循環動態の管理もとても大切なポイントです。特に血管内脱水は脱血不良からECMOのフローが低下してしまい、酸素化した血液を送ることができず、危機的な状況を引き起こします。ECMO管理中は急に利尿がついてしまい、脱血不良となってしまうこともしばしばあります。

そんな時のために当院ではECMO患者には太い輸液ルートを確保し、SL Oneを常につないでおき、ボタン一つで輸液、輸血製剤をボーラス投与できるようにしています。これまで脱血不良の際には医師かCE が呼ばれ、ECMO回路から空気混入しないよう、鉗子で用手的にクランプしながら恐る恐る投与していましたが、SL One のおかげで脱血不良の際にもまずは看護師サイドですぐにボタン一つで初期対応できるようになりました。看護師にしてみたらマンパワーの乏しい夜間の脱血不良はとても怖かったようです。ぜひ他のECMO施行施設でも活用してほしいと思います。

危機的出血への対応ガイドラインについて

危機的出血への対応ガイドラインは2007年より改定がなされておらず、早急な改定が望まれます。特に急速輸液装置に関しては、このSL Oneをはじめとして空気混入リスクを排した安全な機器が登場しており、積極的に使える環境が整いました。また輸液だけでなく、引き続き起こる希釈性凝固障害に対する止血に関する記載もあれば、と感じます。近年では限定的ではあるものの、産科危機的出血でのフィブリノゲン製剤やクリオ製剤の使用も可能となりました。他にもリコンビナント第7因子製剤やプロトロンビン複合体製剤といった止血製剤のオフラベル使用の記載も参考になるでしょう。またトロンボエラストグラムといった周術期の血液粘弾性試験も普及しており、そちらも新しく記載がなされるかもしれません。いずれにせよ、今後は止血まで見据えた大量出血時の輸液・輸血戦略が大切になってくると思われます。

今後の目標

SL Oneが完成したことで私の麻酔科医としての大切な仕事をひとつ終えた気がしています。SL Oneで「ボリューム管理を手中に」はできましたが、大量輸液・輸血には止血面からのアプローチも欠かせません。SL Oneのさらなる発展の可能性について(株)メテクの開発部の方々とも話し合っています。

医学的なこと以外では、今回のSL Oneの開発で得た経験を通じて、医療機器開発のスキーム作りに寄与したいと思うようになりました。今ではAMEDやJOMDD(註)等の提供する開発スキームもありますが、日本全体ではまだまだ強い推進力を得ていません。医療機器開発はメーカーにとってビジネスとしての成功が必須であり、ボリュームゾーンにある医療機器でなければ開発に着手すらしてもらえません。一方で医療現場、とりわけ閉鎖性の高い手術室やICUなどにはビジネス的にあまり魅力的に映らないが置き去りにされた解決されるべきニーズがまだ多く眠っているのです。

日本には高い技術力をもつ中小企業が数多く存在し、大企業には作れなくても中小企業になら低コストで利益を確保しながら作れるものがあります。次の私の仕事は閉鎖性の高い医療現場に粘着しきって剥離されていないニーズを解決するスキームを作ることだと感じています。

註釈)

AMED(日本医療研究開発機構)は医薬品、医療機器、再生医療、ゲノム医療などの基礎研究から臨床への実用化を推進する環境整備を行う組織である。JOMDD(日本医療機器開発機構)は2012年に設立された医療機器インキュベーション事業を展開する会社法人で、米国のようなオープンな医療機器開発スキームを取り入れ、日本発のイノベーティブな医療機器の開発を目指している。

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