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血小板凝集能測定装置 全血式WBAカルナ
大館市立総合病院 脳神経外科部長 佐々木 正弘先生

  • 掲載:2008年07月
  • 文責:クリティカル・ケア部

大館市立総合病院 脳神経外科部長 佐々木正弘先生は、 2008年3月の日本脳卒中学会で「全血血小板凝集能測定装置を用いた外来抗血小板治療患者の特徴」の表題で、ポスター発表をされました。(P-2-2-07) 脳卒中の再発予防には、指標となるデータを測定することが必要であると提言。
そして、的確な予防策を患者さんに提示する事を目標とされています。

現在の活動や、WBAカルナの使用についてお聞きしました。

佐々木正弘先生 ご略歴
平成 5 年: 自治医科大学卒業
平成 7 年: 秋田大学脳神経外科医員
(中略)
平成13年: 公立角館総合病院 脳神経外科医長
平成15年: 秋田県立脳血管研究センター 脳神経外科研究員
平成17年: 大館市立総合病院 脳神経外科部長

[ 大館市立総合病院 webサイト ] http://www.odate-hp.odate.akita.jp/
大館市立
▲佐々木正弘 先生


大館市立総合病院についてご紹介いただけますでしょうか。

佐々木先生

大館市立総合病院は、秋田県の県北に位置し、医療圏は約12万人を想定している約500床の総合病院です。 標榜科は22 科あります。当院では、脳卒中急性期の患者さんのほとんどを受け入れ、治療に当たっております。その患者さんも高齢であり、他の疾患を合併していることが多いです。

 

秋田県は脳卒中が県民病と言われているようですが、非常に多いと感じますでしょうか?

確かに県民病と言われています。超高齢化社会をむかえている本県は高齢者が多いので、患者さんの総数は増え続けています。死亡原因としても多くなっています。それが秋田県の現状です。当院では、脳梗塞が6割ほどで、脳出血が3割、クモ膜下出血が1割と全国平均と同じような割合になっています。

大館市立病院


高齢者人口が増えていくと、益々大変になりますね。

秋田県の高齢者人口比率を見ると、4 分の1が75 歳以上だったと思います。

 

先生が大館市立病院に来られるまでを教えて頂けますでしょうか。

大館市立病院に来る前に、秋田県立脳血管研究センターの脳外科で、主に脳卒中の分野を診ていました。脳外科と脳卒中診療部をかけもちしながら、クモ膜下出血を除く脳卒中は脳卒中診療部で内科のドクターと一緒にチーム医療に取り組んでいました。クモ膜下出血と脳腫瘍は、脳外科として手術などを担当していました。大館市立病院には2005年8月に来ましたから、丸3年たちます。

 

大館市立病院に来られて大きく変わった点などございますか?

脳卒中急性期を中心に、患者さんを診ることにしました。それにより、年間で50人位の患者さんが増えました。この地区で脳卒中急性期を数多く専門的に診察しているのは私だと思いますし、脳外科医ではありますが、脳卒中全般を診ています。それがこの地区の患者さんにとって、利益になると考えています。脳外科という枠に縛られず、脳卒中で手術に回らない患者さんも診るようにしています。

 

これまでの研究分野について、前の病院から引き続いて行っているということになるのでしょうか?

そうですね。(秋田)脳研で調べていたことは、動脈瘤の放射線学的特徴、内頸動脈と狭窄の治療の違い、低侵襲手術による凝固・線溶系の変化、動脈瘤手術に関する血管内手術と開頭手術の違い、若年発生クモ膜下手術の特徴など臨床研究などでした。その研究の1つに凝固・線溶系が入っていました。以前から興味もあったため、今回発表した内容をまとめてみました。

 

2008年3月の日本脳卒中学会で全血血小板凝集能測定装置を用いた外来抗血小板治療患者の特徴を発表されましたが、この発表と「脳卒中ガイドライン2004」についてのご感想をお聞かせ頂きたいのですが。

全体的に色々な文献をまとめた、標準化医療のために作られたガイドラインであると思います。ただし、ガイドラインは2004年までの臨床研究の論文発表をもとにできたため、現在の治療とは変化している部分もあります。しかし、脳卒中診療を十分に知らない医師が治療するためには、良いガイドラインだと思います。薬の選択も一般的に行われているものを整理して、推奨文として書かれていると思っています。ガイドラインを参照しながら、自分の考えを取り入れていけるものだと思います。

 

脳卒中ガイドラインの中で、現在、変化している部分もあるかと思うのですが、
この点についてお感じに なることはありますでしょうか?

佐々木先生

抗血小板薬に限って言えば、チクロピジンに変わり、クロピドグレルに変更してきています。同じADP 抑制といっても副作用の面で、日本人の長期での臨床経過が得られていない部分があります。長期投与をした場合に副作用の問題はありますが、ただ、色々な文献を読むと、クロピトグレルは良さそうな感じはします。

私もチクロピジンからクレピドグレルの切換に限って言えば、わざわざチクロピジンが抑制至適凝集能に入っている外来通院患者さんに、再度、開始時の副作用のチェックをしながら変える必要があるのかなと思います。老人医療から考えると、チクロピジン長期投与で肝機能が悪くなると言われていますが、以前から言わ れている事ですから、定期的に肝機能検査をチェックして継続しても悪くないと思います。

新たに発症した患者さんには、わざわざチクロピジンを使用することはないと思いますが、クロピドグレルがチクロピジンと比べて、凝集能を測った時にキチンと反応を示してくれるかは未知のところです。現在、私は薬を変え変更した患者さんの凝固能の経過を検証しています。学会で発表した段階では、クロピドグレルは3例しか含まれていませんでした。2例は効いていますから、割合としては良いのだけれど、n数を増やしていけば、もしかしたらチクロピジンと同じ程度の効果になるかもしれないです。それは判りません。

 

アスピリンに関しては、薬価は低いのですが、凝集能を測った時に、至適凝集能に行っている割合が低いです。また、アスピリンジレンマの問題もあります。1回の定点測定で、良い悪いは判断できないので、私が行っているのは同じ患者さんを6ヶ月、1年毎に、2、3回と測定しています。薬が効いていないと思われている患者さんは本当に効いていないのか、薬が効いている患者さんは効き続けているのかを検証しなければなりません。あとは、後発薬品に変えたときに効いているのかどうかもチェックしていく必要があると思います。そして、3回計っても効いていないとなると変える大きな理由になります。それとは別に、抗血小板薬については出血のリスクもかなりありますから、効いているからと言って全てが良いと言えません。

 

患者さんと向き合いながら日々、検証していかなくてはならないという事ですね。

そうです。経過観察の時点でアスピリンが効いていないからチクロピジンやクロピドグレルに変えれば良いのか、アスピリンは効いていないのだけど薬をかぶせて使用して良いのか、難しいところだと思います。

アスピリンとチクロピジンの併用されている患者さんは、アスピリンまたはチクロピジン単独の患者さんよりも至適凝集能を満たすケースが多く、何によるものかは不明ですが相乗効果が生体に起こっている可能性があると思います。また、作用機序は不明ですが、チクロピジンでADPではなく、コラーゲンが抑制になっているケースもあります。

生体の反応は、教科書通りにはいかないという事でしょうか。だからこそ、3、4回と継続して測定する必要があります。現在、慢性期の通院されている脳卒中患者さんの約200人で、多い人では4回の計測まで行っています。これをきちんとまとめて、また 学会発表することにしています。

WBAカルナ

カルナによる抗血小板薬の再発予防の臨床的至適凝集能については、別の検証が必要になってくると思います。臨床的至適凝集能の検証に5年程度は、時間をかけなければいけないと思っています。これまでの経過中に私が診ていた再発例に関しては、4例ほどありましたが、至適凝集能であっても再発しているケースには、運命的なリスクファクターとして、回避できないものもあります。
年齢や喫煙の生活習慣だったり、頸動脈狭窄のように薬だけでは治らないものだったり、その人が持っているリスクファクターを考えながら、トータルとして脳卒中再発を予防しなければいけないと思います。

アスピリンを投与している患者さんが、至適凝集能に入っていない割合が多い事がどういう問題なのかを考え、必要であれば薬剤変更しないといけないし、他のリスクファクターもあわせて考えなければなりません。これが、外来診察の指標になってくれれば、他のリスク管理とあわせて、脳卒中の再発が限りなく0(ゼロ)に近い状態になるのではないかと期待しています。

だからこれをどんどん使って計測を続けています。
データの集積は、まだ2年で始まったばかりです。

心原性脳梗塞予防薬の指標としてワルファリンでINRを取っているように、抗血小板薬にも何か指標となるものが必要だと思います。非心原性の方が、患者さんの割合が多いのに、こちらの指標がないというのは、やはりおかしいと思います。その指標を考えて治療をしていかないと薬をただ飲ませていることになりますし、患者さんも薬をもらって満足していると良くないと思います。


※注:PT-INR(Prothrombin Time-International Normalized Ratio:プロトロンビ時間)


その測定に血小板凝集能測定装置WBAカルナを使用して頂いていますが、その理由を教えて頂けますでしょうか。

脳神経外科部長佐々木先生

大学や研究所レベルでやっている高感度の凝集能に関する評価は限られた人や地域でしか還元できないわけで、現場で患者さんたちに還元する事は絶対できないんです。還元できないものを待つよりは、検査室で使用されているもので何とかしたいと考えています。検査室で使用されているもので指標を作るには、全血で測定できるWBAカルナだと思います。カルナは全血で測定でき、より生体に近いので、患者さんの生体情報のデータとして反映していると考えています。患者さんのことを考えても、外来ですぐに採血して、すぐ計測できるので30分おきに予定を組むことが可能で、1日に最大で5人の患者さんを診ることができます。今は脳卒中の急患の場合でも、日勤帯であれば対応できます。以前の機械だったら1日2人位だったでしょう。

遠心分離をかけて、その中の血小板を採って・・・という作業がありました。
カルナは測定原理も使い方もかなり簡単に理解できます。今は検査室で技師さんたちが使っていますが、私でも使えると言われれば使えますから。みんなが測定原理まで知っているので、おかしな点があればすぐに判るし、使い易くて良いと思います。

脳卒中再発患者さんが来られた場合に、抗血小板薬を飲んでいたとしても、どのくらいの至適凝集能があったのか分かれば、次に行なうべき治療法の方針に役立てられます。服用していた薬の容量なのか、患者さんのコンプライアンスの問題なのかと言うふうに、抗血小板薬の選択の一つの指標にもなります。画像診断や形態的変化も重要ですから、あくまでも指標の1つですが。

WBA カルナは、患者さんからの採血で計測が行われますが、血液の情報も知らずに、あれこれやってもダメだろうと思います。

先生 学会では大学などからいろいろな発表がありますが、それを行なえるだけの血小板凝集能測定用の器械の普及が図られていません。現在、市販されているWBAカルナがあれば、すぐに測定できるわけですから、血小板凝集能測定が広まり易いと考えています。

血小板凝集能の測定は脳卒中の1次予防にはならないかもしれませんが、2次予防の指標になればよいと思います。現時点で、シロスタゾールの指標があれば完璧かなと思います。当院の臨床研究では、シロスタゾールを追加で投与すると、至適凝集能の割合が高くなるという間接的なデータしか示すことができません。
今の「脳卒中治療ガイドライン2004」では、アスピリンなどはグレードAですけれど、シロスタゾールはグレードBなんです。試薬の開発とより多くのデータを蓄積すれば、シロスタゾールもグレードAになる可能性もあります。

 

医薬品メーカーもデータの指標として使用していくことが可能になりますね。

ある程度、カルナが広まれば、検査も容易になりましたから、外来通院している2次予防患者さんの多くを測定することが可能になり、メーカーも積極的に情報を出してくることになると思います。実際に薬の容量が足りなくて、再発したケースもあります。その時点は薬が効いていないために再発したのであれば、他に原因がないかぎり、その薬の容量を増やせば適切に治療を行なうことに繋がります。これを外来通院中に行なうことが出来るなら、再発しない人が1人、2人と出てきます。
また、至適凝集能に入っている場合は、他のリスクファクターを治療することで、2次予防に繋がるという事が言えるかもしれません。年齢や性別などの運命的リスクファクターだけは取り除けません。凝集能の管理がしっかりしていれば、その他のリスクファクターを取り除くための外来治療を患者さんに提案ができるわけです。

 

新しい薬が出てきても測定できますね。

抗血小板薬について言えば、試薬が出来れば同じ原理で測定出来るので容易に可能だと思います。

 

最後に先生の目標を教えていただけますでしょうか。

先生とIMI

今後のテーマについては、今まで話した通りですが、地域病院で行える抗血小板薬の指標を作成し、地域に還元・普及させ、脳卒中の再発が減るなどの患者さんの利益の1つにつながればと考えています。血圧の薬を出せば血圧を測かり、高脂血症の薬を出せばコレステロールを測かり、ワーファリンを出したらPT-INRを測るように、抗血小板薬にはカルナを用いて全血測定血小板凝集能を測定することで、その結果を患者さんに示せ、その結果をもとに患者さんと相談ができるようになればいいなあと思っています。

貴重なお時間を頂戴しましてありがとうございました。

(2008年7月1日 インタビュー)

 

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