セミナー情報

第23回日本脳低温療法・体温管理学会学術集会 特別講演共催
「新型コロナウイルス感染症蔓延下における熱中症予防と治療」ご報告

  • 掲載:2020年10月
  • 文責:クリティカル・ケア部
第23回日本脳低温療法・体温管理学会学術集会 特別講演共催<br>「新型コロナウイルス感染症蔓延下における熱中症予防と治療」ご報告

第23回日本脳低温療法・体温管理学会学術集会(2020年9月11日~12日、会長:富山大学医学部 救急・災害医学 教授 奥寺 敬先生)が、「新型コロナ感染と熱中症の体温管理を考える」をテーマに、ハイブリット方式(現地開催およびWeb開催の併用)で開催されました。

特別講演
日時:

2020年9月11日(金)15:00~15:40

会場:

富山大学五福キャンパス 黒田講堂

演者:

横堀 將司先生

日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野
日本医科大学 救急医学教室 教授

座長:

奥寺 敬先生

富山大学医学部 救急・災害医学 教授

抄録:

※pdfが開きます(903KB)

弊社はこの学会に関し、近年は毎回、招待講演、ランチョンセミナーなどを共催してきましたが、今年は特別講演1「新型コロナウイルス感染症蔓延下における熱中症予防と治療」を共催いたしました。

富山大学五福キャンパス 黒田講堂

今回の特別講演は、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会の学術団体から成る[新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ]が取りまとめた[新しい生活様式下における熱中症予防に関するコンセンサス・ステートメント]を基に、一般の方の熱中症予防への心得や、熱中症診療にかかわる医療従事者への手引きについて、同ワーキンググループの委員長を務められている日本医科大学 救急医学 教授 横堀将司先生にWeb講演をしていただきました。

横堀先生のご講演では、はじめに、体温調節の仕組みと熱中症の病態についてご説明され、熱中症に対する治療を行う上で、下記の2つが重要であるとお話しされました。

  • 深部体温を上昇させる環境因子を取り除くこと
  • 深部体温の上昇を避けるために迅速に冷やすこと

それを踏まえ、今年の夏の特徴である、コロナ禍における熱中症への対応についてご説明されました。「COVID-19のパンデミックは、2020年1月に初めて確認され、それ以来、私達の生活は一変してしまった」と話され、COVID-19患者の現在の感染者数や回復者数、死亡者数をスライドで示されました。


次に、COVID-19と熱中症について、下記のように、複数の類似性があり、症状だけでCOVID-19か熱中症かの判別はできない、PCR検査などを行わなければ判別は困難であったとご説明されました。

  • 人口が密集している地域に多く、[地政学的類似性]がある
  • COVID-19の第2波のピーク時に、熱中症の発生者数が増加する[時間的類似性]がある
  • 重症化しやすいのは60歳代以上の高齢者であるなどの[病態的類似性]がある

また、診療のご様子を撮影された動画をお示しになりながら、「実際の診療下では、患者様が搬送された際、COVID-19と熱中症の両方の可能性を考え、関わるスタッフ全員が、患者毎に、PPE(Personal Protective Equipment:個人防護具)を装着しつつ、陰圧室で対応せざるを得ない、困難を極めた夏であった」とご説明され、過酷な状況で治療にあたっておられたことが伺えました。

加えて、下記のことを危惧していたとお話されました。

  • COVID-19と熱中症によって医療が逼迫するのではないか
  • COVID-19であるか熱中症であるかを現場では判別しにくく、救急搬送に苦慮する可能性
  • COVID-19と熱中症の判別のため、治療介入に時間を要する可能性

前記のとおり、「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ」が発足され、熱中症で救急医療を逼迫させないために、国民への発信を目的として、2020年6月「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」が公開されました。

横堀先生は、その中から、“熱中症予防のための5つの提言”についてご説明されました。

  • ① 換気と室内温度
  • ② マスク装着と水分摂取
  • ③ 暑熱順化(※徐々に体を暑さに順応させること)
  • ④ 熱中症弱者への対応
  • ⑤ 日頃の体調管理

また、ワーキンググループでは、熱中症の治療法として、「迅速に冷やして暑熱環境から救うことが大事であること」「冷却法は冷水浸漬法、蒸散冷却法、対流法、ジェルパッドを使用した冷却法などがあるが、どの冷却方法が安全か」が議論されたこと、2591件の論文を参照し、ワーキンググループから医療従事者向けの「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」を発刊されたことをご紹介されました。本手引きは、クリニカル・クエスチョンを用い、予防や診断、治療などについて、とてもわかりやすく記載されています。


熱中症の治療としては、下記の様にご説明されました。

  • 蒸散冷却法を使用するとエアロゾルの発生が危惧される
  • エビデンスは少ないが、蒸散冷却法は、高齢者では死亡率が高いと言われているため、クーリングファンを使用して温度を下げるのは効率が悪く、日本の高齢者が多い環境には適さない
  • エアロゾル発生のリスクもあるため、利点とリスクのバランスを考えたうえで、手引きの中では、蒸散冷却法は原則使用しない

また、「今後、今年のデータを蓄積・分析し、今年のコロナ禍から得られる知見を纏め、次世代へ活かしたい」とお話しされ、最後に、以下の纏めを示されました。

【Take Home Message】

COVID-19と熱中症予防

  • 換気と室内温度
  • マスク装着と水分摂取
  • 暑熱順化
  • 熱中症弱者への対応
  • 日頃の体調管理

COVID-19と熱中症治療

  • PPEにて対応、蒸散法・対流法に注意

横堀先生のご講演を拝聴し、コロナ禍における熱中症対応の現状や、医療従事者の方々が如何に過酷な状況の中で日々診療にあたっているのかを知る、非常に貴重な機会となりました。

ご多忙を極める中、このような素晴らしいご講演をしていただいた横堀先生に心より感謝申し上げます。また、日々医療現場でご尽力されている医療従事者の皆様にも心から敬意を表するとともに、深く感謝を申し上げます。

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