当院における実態調査から構築したArctic ジェル™パッド管理基準
~限られたマンパワーでも継続できる皮膚障害対策~
宝塚市立病院 滿田 幸士さま
- 掲載:2026年09月
- 文責:カスタマーソリューション推進部
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宝塚市立病院 |
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| 滿田 幸士 さま | |
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[ 略歴 ]
[ 資格など ] クリティカルケア認定看護師 特定行為研修修了(8区分15行為) 日本DMAT隊員 |
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[ 宝塚市立病院 webサイト ] |
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宝塚市立病院について
当院は兵庫県宝塚市に所在する436床の急性期病院であり、そのうち4床をICUとして運用しています。ICUはセミクローズド方式を採用しており、日勤帯は患者1名に対して看護師1名を配置する1対1看護体制を整えています。一方、夜勤帯は看護師2名でICU入室患者全員を担当しており、限られた人的資源の中で重症患者管理を行っています。
はじめに
2022年以降、PCAS症例の増加に伴い、Targeted Temperature Management(TTM)の実施件数は年々増加しています。それに伴い、現在2台所有しているArctic Sun™5000 体温管理システム及びArctic Sun™STAT 体温管理システム(以下、Arctic Sun)を使用する機会も増え、当院において欠かせない体温管理デバイスの一つとなっています。現在は36℃を72時間維持する体温管理を標準運用として実施しています。
Arctic Sunは迅速かつ安定した体温管理が可能であり、重症患者管理において重要な役割を担っています。一方で、Arctic ジェル™パッド(以下、ジェルパッド)長時間貼付に伴う皮膚障害は、注意すべき合併症の一つでした。しかし、皮膚障害予防のために単純に観察回数やケアを増やすことは、夜勤2名体制という人的制約から継続的な実践が困難な状況でした。
そこで当院では、「限られたマンパワーでも継続可能な皮膚障害対策の構築」を目標としました。まず過去症例を振り返り、皮膚障害の発生状況を調査しました。その結果をもとにジェルパッド使用管理基準を新たに作成し、誰が担当しても一定水準のケアを実践できる運用体制の構築に取り組みました。
実態調査から見えてきた課題
2022年度~2024年度までにArctic Sunを使用した83例を対象に後方視的調査を実施したところ、皮膚障害は6例(7.2%)に認められ、発生件数は計10件でした。発生部位は腋窩が6件と最も多く、次いで脊柱2件、乳頭1件、前胸部1件でした(図1)。
また、入院時アルブミン値や昇圧薬使用の有無では明らかな関連は認められず、患者背景のみでは皮膚障害の発生を十分に説明できませんでした。
一方で症例を振り返ると、患者の体格に対して適切ではないサイズのジェルパッドが選択されていた症例や、上半身用ジェルパッドの辺縁が腋窩へ接触していた症例がみられました。これらの結果から、皮膚障害の発生には患者要因だけでなく、ジェルパッドのサイズ選択や貼付方法といった運用面も関与している可能性が示唆されました。そのため、当院ではジェルパッドの使用方法を見直し、運用の標準化を図る必要があると考えました。
調査結果を管理基準へ反映
調査結果をもとに、当院ではジェルパッド使用管理基準を作成しました(図2)。
管理基準では、「誰が担当しても同じように実施できること」を重視し、サイズ選択、貼付位置、皮膚保護、皮膚観察方法を標準化しました。
①透明フィルムによるサイズ選択
ジェルパッドは経験や感覚ではなく、見本型の透明フィルム*1(図3)を用いて患者体格に合わせて選択する方法を採用しました。貼付前に適切なサイズを確認することで、不適切なサイズ選択を防止するとともに、貼付位置の再現性向上につなげています。
1:見本型の透明フィルムはIMI(株)より提供可能
②貼付位置の標準化
| 不適切な貼付例 | 標準的な貼付例 |
|---|---|
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| 上半身ジェルパッドが頭側へ貼付され、ジェルパッド辺縁が腋窩へ接触()している状態。 不適切な貼付では辺縁部の圧迫や摩擦が生じやすく、皮膚障害のリスクとなる。 |
ジェルパッド辺縁が腋窩へ接触しない位置で貼付し、腋窩には保護材(アドプロテープ®・クッション*2)を貼付した状態。当院ではこの貼付方法を標準としているが、体温管理の質が低下しないようにジェルパッド内側に貼るアドプロテープ®の面積は必要最小限にしている。
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調査では腋窩への皮膚障害が最も多かったことから、上半身ジェルパッド辺縁が腋窩へ接触しない貼付位置を標準化しました。また、導入時には腋窩や膝周囲など皮膚障害リスクの高い部位へ保護材を貼付し、長時間管理による摩擦や圧迫を軽減しています。
2:アドプロテープ®はアルケア株式会社の登録商標です。
③役割分担による継続可能な運用
管理基準では、日勤帯と夜勤帯の役割を明確にしました。
日勤帯は、TTM導入後初回の保清時はすべてのジェルパッドをゆっくり剥離し、全身の皮膚状態を観察するとともに、必要に応じて貼付位置の調整や保護材の追加を行います。2回目以降の皮膚観察時はジェルパッドをすべて剥離する必要はありませんが、2~3時間毎(体位変換毎)に辺縁部の皮膚状態を観察するようにしています。
一方、夜勤帯は4時間毎に皮膚障害の発生しやすい重点部位(腋窩・脊柱・乳頭)の観察を中心とし、限られた人員体制の中でも無理なく継続できる運用としました。
さらに、管理基準を用いた実技形式の勉強会を実施し、選択方法や適切な貼付位置についてスタッフ全員で共有し、認識の統一を図りました。経験年数に左右されることなく、誰もが一定水準の管理を実践できる体制の構築を目指しています。
導入後の成果と今後の展望
管理基準を運用開始した2025年4月から2026年7月までに、68例のTTMを実施しましたが、皮膚障害の発生は認めていません。
本取り組みは、特別な機器の導入や人員配置の増強は行っていません。過去症例の実態を分析し、その結果をもとに管理基準を作成・標準化したことで、限られたマンパワーの中でも継続可能な皮膚障害対策を実現できたと考えています。
今後も症例を蓄積し、皮膚障害発生率の推移を継続的に評価していく予定です。また、本取り組みがArctic Sunを使用する他施設における安全なTTM運用の一助となれば幸いです。
【補足】本記事に登場する「宝塚」の「塚」の字は、本来は点(、)がつく旧字体(塚)ですが、WEBサイトの表示環境を考慮し、通常の「塚」で表記しています。
販売名:Arctic Sun STAT 体温管理システム
医療機器承認番号:30600BZX00022000
分類:管理医療機器 特定保守管理医療機器
販売名:Arctic ジェルパッド
医療機器認証番号:226ADBZX00175000
事前に必ず電子添文(注意事項等情報)を読み、本製品の使用目的、禁忌・禁止、警告、使用上の注意等を守り、使用方法に従って正しくご使用ください。
本製品の電子添文(注意事項等情報)は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページで閲覧できます。
製品の仕様・形状等は、改良等の理由により予告なく変更する場合もございますので、あらかじめご了承ください。
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