特別企画

Fontan術後の患者さん

  • 掲載:2026年10月
  • 文責:メディカ出版
Fontan術後の患者さん
サッとわかる

見てわかる解剖・疾患


《 クリックで拡大 》

《 クリックで拡大 》

《 クリックで拡大 》

解剖・疾患解説

Fontan手術の適応疾患

Fontan手術は、右心室あるいは左心室のいずれか一方の発達に障害があり小さくなっている低形成や、三尖弁や僧帽弁のいずれかが異常であるために、2つの心室を使用した修復術(二心室修復)が困難である複雑な先天性心疾患の患者さんに適用されます。これらの患者さんは、全身の循環と肺の循環を支える心室が1つであるため、単心室循環で成り立っている病態です。一般的に、チアノーゼ性先天性心疾患である単心室、純型肺動脈弁閉鎖、三尖弁閉鎖、左室低形成などが含まれます。

Fontan術前は低酸素血症(チアノーゼ)を認め、術後には解消されますが、手術の有無にかかわらず機能的単心室循環の病態です。したがって、Fontan術後の患者さんは修復術後の単心室循環患者さんといえます。

Fontan術式

Fontan手術の術式は旧式の右心房と肺動脈の直接吻合(APC法)から、心房収縮の影響の少ない上下大静脈肺動脈吻合(TCPC法)に改良されました。APC法では心房不整脈や血栓など合併症が多いため、循環効率のよいTCPC法が導入され、最近はTCPC法のなかでも下半身の静脈血の心外導管を用いて肺動脈に吻合する心外導管法によるTCPC法が主流です。

Fontan循環について

正常循環との違いはFontan循環では肺循環を支える右心室が欠如していることです。肺循環は中心静脈圧(CVP)を上昇させて肺動脈へ血液を送っています。したがって、CVPは健常者より著しく上昇し、肝臓、腎臓、消化管などの内臓臓器は慢性的にうっ血しています。このため多臓器の形態・機能の異常が進行します。そのためこれら心臓以外の臓器の状態を定期的に評価することが重要です。

小児期の主な治療・手術解説

Fontan手術到達のための準備手術

Fontan手術の適用条件は厳格で、良好な心室機能と十分な肺動脈の成長が必要です。心室機能については駆出率(EF)がおおむね50%以上と良好で、房室弁機能も良好であることが必要です。肺動脈については肺血管サイズの指標であるPA indexが200mm2/m2以上に成長して、肺動脈圧がおおむね15mmHg未満、肺血管抵抗も2 Wood unit・m-2以下と血液が肺に流れやすいことが条件となります。

前述したFontan手術の準備として肺動脈の条件を満たすために、大きく分けて高肺血流と低肺血流という2つの準備パターンの患者さんが存在します。

高肺血流の患者さん

肺血流が過剰で、生後すでに肺動脈が十分に発達しています。このような患者さんでは、肺血管抵抗が上昇しない(肺に血流が流れにくくなる変化をしない)ように肺動脈絞扼術(図1-a)を施行し、肺血流を制限して患者さんの成長を待ちます。最近救命率が改善している左心低形成症候群(HLHS)が高肺血流の典型例です。


図1Fontan 手術到達のための準備手術
《 クリックで拡大 》
低肺血流の患者さん

肺動脈のサイズを大きくするため体肺動脈短絡術(BTシャント術)など(図1-b)を施行し、肺血流を多くして肺動脈を成長させます。肺動脈閉鎖を合併した複雑な単心室血行動態の先天性心疾患は、低肺血流の場合が多いです。

いずれの場合でも、これらの準備手術で前述した良好な心室機能と肺動脈の成長の条件を整えて、Fontan手術の準備手術の第2段階であるGlenn手術を待つことになります。Glenn手術は心室の容量負荷を減らしスムーズなFontan循環への適応をめざす準備手術です(図1-c)。一般的にGlenn手術は1~2歳頃までに行います。

これらのFontan手術への準備期間は循環が不安定な心不全病態であり、栄養や神経発達にもさまざまな影響を及ぼすため、患者さんと家族への教育と支援が欠かせません。

Fontan術後の問題

手術適応基準を満たした患者さんのFontan手術の成績は良好です。しかし、Fontan循環が健常者とは大きく異なることから、さまざまな問題が生じます。これは、Fontan循環の中心静脈圧が高いため心拍出量が低く、全身臓器が低灌流であることに加え、軽度ですが低酸素血症であることが原因です。これらの問題点を、全身の臓器の機能障害も含めて解説します。

循環器病態

心機能

心室の収縮・拡張機能は低下しています。特に成人期では拡張障害の進行が示唆されています。

評価法

心機能の評価は心エコー図検査、心臓MRIや心臓カテーテル時の心室造影などで行います。心エコー図検査は簡便かつ非侵襲的で臨床的有用性が高いです。心臓MRIは心室形体や容積解析に有用です。心臓カテーテル検査時の心室造影は侵襲的で、心室機能評価ではMRIに劣ります。

収縮能の指標には駆出率(EF)や心筋ストレインなどがあります。Fontan術後患者さんの拡張能の評価は困難ですが、心室拡張末期圧の上昇(≧12mmHg)が目安とされています。BNPは心機能を反映しますが、Fontan循環では前負荷障害があるのに加えて、Fontan術式、低酸素血症、貧血、肥満、腎機能や不整脈などの影響を受けやすいので、解釈には注意を要します。

治療法

収縮性が低下していれば心不全の治療を行います。利尿薬などによる体液管理に加えて、薬物治療ではアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)などのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬・β遮断薬・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)・SGLT2阻害薬を、非薬物療法では心室再同期療法などを考慮します。

心室拡張低下では体液管理以外に有用な管理法が不明です。房室ブロックや極端な徐脈の場合はペースメーカ治療が有効です。房室弁閉鎖不全で重症の場合には、外科的治療を行います。

血行動態

一般的にFontan循環の特徴として、慢性的な①CVPの上昇、②低心拍出量による臓器低灌流、③軽度の低酸素血症が挙げられます。これらのいずれかの病態が著しく重症である、または難治性合併症を伴う場合の病態をFontan循環破綻(failing FontanやFontan failure)とよびます。

診断法

心臓カテーテルによる心血管内圧の測定が欠かせません。Fontan循環破綻の様式には、術後早期に多い高CVP-低COタイプ(low CO failure)と、遠隔期に多い多臓器障害に由来する、高CVP-高COタイプ(high CO failure)が存在します。

治療法

総合的な評価の結果をもとに管理方針を決定します。CVPが高い場合、その原因を同定する必要があります。原因は大きく分けて①右心循環異常、②左心循環異常、③前負荷異常、④調律異常の4つの要因あるいはこれらの組み合わせになります。詳細と管理・治療について表に示します。

表CVP 上昇要因と管理・治療

《 クリックで拡大 》
不整脈

術後経過に伴い、上室不整脈の頻度が増加します。

診断法

定期的な心電図、ホルター心電図、運動負荷試験による不整脈評価が必要です。特に成人では検査頻度を増やす必要があります。

治療法

上室頻拍ではカテーテル焼灼術を考慮します。心外導管タイプのTCPCでは心房到達法が困難なため、経験豊富な施設での治療が勧められます。カテーテル焼灼術が困難あるいは効果が不十分な場合には、抗不整脈薬を投与します。徐脈性不整脈ではペースメーカ治療を考慮しますが、房室ブロックでは心室再同期を常に意識した治療が必要です。

非循環器病態

呼吸

多くの症例で拘束性換気障害を認めますが、閉塞性換気障害は少ないです。また、呼吸筋力は低下しています。

診断法

スパイロメトリーを用い、肺活量と1秒量から判断します。低酸素血症の原因検索のために、心筋血流シンチグラフィが有用な場合があります。

治療法

低酸素血症の場合は酸素投与します。Fontan術後に多く生じる低酸素の原因となる比較的特異な肺循環異常に、肺動静脈瘻(PAVF)と体静脈肺静脈側副血行路(VVC)があります。

肺動静脈瘻(PAVF)

PAVFにはびまん性と孤立性、あるいはこれらが混在して発症する場合があります(図2-a)。肝静脈血が肺を灌流しない場合に生じるため、Glenn手術・川島手術後に高頻度で発症します。

孤立性の場合は造影CTや血管造影で診断し、びまん性の場合は肺動脈へのコントラスト注入による超音波検査(コントラストエコー)で診断します。

術後経過に伴いPAVFは増加し、特に多脾症候群(左側同心)で頻度が高いとされています。小児期Fontan循環患者さんでは、肝静脈灌流をPAVF 側に均等に流入させるFontanルートの変更術が有効な場合があります。孤立性ではカテーテル塞栓術の適用です。孤立性の予後は良好ですが、びまん性の予後は不良です。


図2肺動静脈瘻と体静脈肺静脈側副血行路
《 クリックで拡大 》
体静脈肺静脈側副血行路(VVC)

上下大静脈や無名静脈から肺静脈や左心房へ側副血行路が発達します(図2-b)。大きなVVCはときに低酸素の原因になるためカテーテル塞栓治療を考慮しますが、CVPが高い(>18mmHg)の場合は塞栓術後の死亡率が高いため、経過観察します。

Fontan関連肝臓病
(Fontan-associated liver disease;FALD)

肝うっ血と肝線維化の進行が病態の特色です。一部の患者さんでは肝臓がんが発症します。

診断法

血液学的検査では肝機能(血清アルブミン濃度、総ビリルビン濃度、肝酵素、FIB-4 index、M2BPGiなどの肝臓線維化指標)、MELD-XIスコアなどで評価します。画像診断も有用であり、超音波エコー図、造影CT、造影MRIなどで評価します。腫瘤の検出には超音波エコー図より造影CT、造影MRIが優れています。遠隔期では肝臓がんのスクリーニングが重要で、AFP(α-フェトプロテイン)やL3分画の推移を評価します。重症のFALDでは肝性脳症のリスクがあるため、血中アンモニア濃度の推移にも注意が必要です。

対処法

CVPを降下させ、肝うっ血を軽減します。肝線維化マーカーの上昇例ではAFPやL3分画の変化に注意し、術後10~15年以降は肝臓専門医への紹介が勧められます。

腎機能障害

Fontan術前、手術侵襲や術後に継続する低酸素血症に加え、腎うっ血が腎機能の障害の原因となり、術後経過に伴い進行します。

診断法

腎機能は推算糸球体濾過量(eGFR)とアルブミン尿から評価します。eGFR 90mL/min/1.73m2未満から機能低下とされます。Fontan術後患者さんの血清クレアチニンから算出するeGFRでは、障害を過小評価するおそれがあるため、血清シスタチンCからeGFRを算出することが推奨されています。

一方、有意な微量アルブミン尿は30mg/gCr以上で、顕性アルブミン尿は300mg/gCr以上です。eGFR低下がみられ、微量アルブミン尿陽性の患者さんの予後は不良です。

治療法

CVPを低下させ腎うっ血の軽減をめざします。微量アルブミン尿が陽性の場合、ACE阻害薬やSGLT2阻害薬を考慮します。

蛋白漏出性胃腸症
(protein-losing enteropathy;PLE)

図3PLE患者の腸シンチグラフィー
《 クリックで拡大 》

CVP上昇や炎症による全身のリンパ灌流の増加と、うっ滞によるリンパ管内圧上昇が原因で小腸(特に十二指腸周辺)からリンパ液が小腸管内に漏出する病態です。

診断法

血中から糞便に移行するα1-アンチトリプシンの上昇したクリアランス値からPLEを診断します。わが国では腸シンチグラフィーで99mTc標識アルブミンの漏出を確認することで容易に診断できます(図3)。

治療法

リンパ流うっ滞軽減とリンパ液産生抑制が治療・管理の柱です。リンパ流うっ滞軽減のためCVPを低下させ、リンパ液産生抑制のために炎症を抑える必要があります。食事療法では摂取する脂質を、リンパ管経由で取り込む長鎖脂肪酸から、小腸上皮から門脈経由で吸収する中鎖脂肪酸に変えます。さらにアルブミンやIgGが低い場合は補充します。リンパ流抑制にミドドリンが有効な場合があります。これらの治療効果が不十分な場合は十二指腸に向かうリンパ管塞栓を考慮します。

耐糖能異常

Fontan術後患者さんは糖尿病を含め耐糖能異常を生じる頻度が高いです。

診断法

空腹時血糖やヘモグロビンA1cを測定し、メタボリックシンドロームの診断基準から評価します。食後高血糖の頻度は高いですが、脾機能亢進のためヘモグロビンA1cを過小評価する必要があり、ブドウ糖負荷試験が推奨されます。軽度のヘモグロビンA1c上昇や家族歴のある場合にも糖負荷試験を行います。

対処法

耐糖能異常、特に糖尿病型の場合は食事や運動などの生活習慣の管理が必要です。また、代謝内科併診を勧めます。

鋳型気管支炎

小児期の発症がほとんどです。PLEと同様の病態と考えられ、リンパ液が気管支に漏出し粘液栓(cast)を形成し、気管支内を占拠します。湿性咳嗽や呼吸困難で発症し、致死的な場合もあります。蟹肉様のcastの喀出で診断が確定されます。

対処法

蟹肉様のcastを取り除くことで症状は改善されます。リンパ管造影によって気管支への漏出部位を同定し、カテーテルによる塞栓術を行うことが有効な場合があります。cast形成予防には血行動態の改善に加え、ステロイド投与やエアロゾルt-PAが有効な場合があります。

血栓症

Fontan循環での血栓は術後急性期・慢性期にかかわらず生じ、経過とともにリスクが増加します。発症頻度は5~30%です。また、無症状の血栓患者さんも少なくありません。血栓の形成は抗凝固薬非投与例で多いとされています。血栓形成要因として、Virchow の3徴*が関与します。
一般に、成人期のFontan循環患者さんは止血凝固因子が低下し、内皮機能は障害され、血小板機能は亢進しています。加えて、Fontan循環では右心系の血液はうっ滞しています。

*①血液凝固因子の亢進、②血管壁性状(内皮機能異常)、③異常な血流性状(うっ血、乱流)の3つの要素のこと。

診断法

血液検査ではDダイマーが上昇します。画像診断では経胸壁、経食道心エコーやCTが有用です。

治療法

大きな血栓に対して早急に外科的治療あるいは抗凝固療法などが必要となります。なんらかの抗血栓療法を受けている患者さんの血栓発症率は低いとされています。血栓予防には直接経口抗凝固薬(DOAC)が優れていますが、出血合併症を考慮すると、アスピリンが有益な血栓予防薬とされています。一方、女性では出血の頻度が高いので注意が必要です。小児ではDOAC(リバーロキサバン)のみが保険適用となっています。

出血

Fontan術後遠隔期には喀血が少なくありません。発達した大動脈肺動脈側副血行路が原因です。一方、消化管出血はまれな合併症で、原因は不明ですがPLE病態の増悪と関連するといわれています。

診断法

喀血では胸部CTで出血部位が予測可能です。消化管出血は内視鏡でも出血部位の同定が困難であることが多いです。

治療法

喀血では原因となっている大動脈肺動脈側副血行路に対し、カテーテルによるコイル塞栓術を行います。喀血、消化管出血ともに、大量出血の場合は輸血を行います。

体組成(肥満)

肥満はFontan循環へ悪影響を及ぼし、心不全の原因となります。Fontan術後患者さんでは体格指数(BMI)について、健常者と差はないものの体脂肪率が高く骨格筋量が少ないサルコペニアの頻度が高いとされています。

診断法

体組成の計測にはDEXA法、生体電気インピーダンス(BIA)法、超音波法や皮下脂肪厚法などがあります。BIA法は簡便で脂肪量、筋量や水分量を推定できますが、ペースメーカ装着患者さんでは使用できません。

対処法

体脂肪率が高く、サルコペニアを合併していればレジスタンス運動や有酸素運動療法などの運動リハビリテーションが推奨されます。

月経異常・妊娠出産

妊娠・出産を希望するFontan術後女性が増加しています。Fontan術後は月経異常の頻度が高いので、婦人科を受診する必要があります。

管理法

医学的にはNYHA分類Iで主要な合併症がなく、運動負荷試験による心肺機能を含めた心血行動態指標が良好であれば、妊娠出産時の事故は少ないとされています。妊娠中の合併症では上室不整脈が最も多く(10~20%)、ついで血栓症です。妊娠中や出産後に心不全が発症する場合もあります。また、流産の頻度が高い(30~50%)とされています。わが国での出産方法は帝王切開がほとんどです。在胎週数は33~34週と短く、出生体重は2,000g前後ですが、先天性心疾患の合併は少ないとされています。

母子の合併症リスクが高いにもかかわらず、妊娠関連の死亡例は報告されていません。しかし、これまでのFontan術後患者さんの知見を本人、パートナー、そして両親が十分に理解する必要があり、妊娠前のプレコンセプションケアが重要とされています。小児および循環器内科、産婦人科、心臓血管外科などの集学的な医療体制でこの問題に取り組むことが重要です。


【引用・参考文献】

  1. Ohuchi, H.Adult patients with Fontan circulation:What we know and how to manage adults with Fontan circulation?.J Cardiol.68(3),2016,181-9.
  2. Ohuchi, H.et al.Hemodynamic determinants of mortality after Fontan operation.Am Heart J.189,2017,9-18.
  3. Mackie,A,S.et al.Plastic Bronchitis and Protein-Losing Enteropathy in the Fontan Patient:Evolving Understanding and Emerging Therapies.Can J Cardiol.38(7),2022,988-1001.

提供元:HEART nursing 2025 vol.38 no.5(メディカ出版)

関連商品

関連商品はありません。

関連記事

関連記事はありません。

アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

このページは、医療関係者の方へ弊社の販売する商品・サービスに関連する情報をご提供することを目的として作成されております。一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

あなたは医療関係者ですか?
▲TOPへ