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ワダイのネブライザーを学ぼう
HFNC、NPPV施行中の吸入療法の注意点

  • 掲載:2026年09月
  • 文責:メディカ出版
ワダイのネブライザーを学ぼう<br>HFNC、NPPV施行中の吸入療法の注意点

はじめに

吸入療法は、気管支喘息やCOPDなどの閉塞性肺疾患治療において、薬剤を標的臓器である気道へ直接到達させることができる、極めて重要な治療手段です。しかし、重症呼吸不全によりNPPV(非侵襲的陽圧換気)やHFNC(高流量鼻カニュラ酸素療法)を使用している患者においては、マスクやカニュラが装着されているため、通常の吸入療法のように単純には実施できません。

本稿では、最新の国際的なコンセンサスステートメント1)と、筆者がNPPV・HFNC下の吸入療法について概説した報告2)を参考に、特にNPPVおよびHFNC施行下における吸入療法の手技・手法、デバイスの選択、そして回路への組み込み方について解説します。

NPPV/HFNC中の患者に吸入療法が必要となる場面

NPPVやHFNCは、吸入薬剤を気道へ効率的に送達できる呼吸補助療法です。特に自発換気能力が低下した患者や気道抵抗が高い患者では、加圧されたガス流により薬剤粒子が病変部位まで運ばれ、薬剤沈着が促進されると考えられています。

臨床的に吸入療法が必須となる代表的な病態として、閉塞性肺疾患の増悪および感染症が挙げられます。

閉塞性肺疾患(喘息、COPD)増悪時

喘息は世界で約3億3,900万人が罹患し、日本でも約1,000万人の患者が存在するとされています。日本では2022年時点でも年間約1,200人の喘息死が報告されており、厚生労働省が推進する「喘息死ゼロ作戦」とは依然として乖離があります。

喘息増悪は即時型反応と遅発型反応から成り、即時型反応では気道平滑筋の急激な収縮により気道狭窄が生じます。このため、短時間作用性β2刺激薬(SABA)が第一選択薬となります。一方、遅発型反応では気道炎症が主体であり、ステロイド治療が重要です。喘息発作時には、SABAとステロイドの両者を適切に併用することが不可欠です3)

COPDも日本で500万人以上が罹患していると推定されていますが、未診断例が多い疾患です。下気道感染などを契機に初めてCOPDと診断されるケースも少なくありません。COPD増悪では、感染や環境因子により気道平滑筋収縮、分泌物増加、リモデリングが進行し、気道狭窄が生じます。このため、COPD増悪時においても第一選択薬はSABA吸入です。

このように喘息とCOPDは異なる疾患であるものの、増悪時には「気道平滑筋収縮を抑制する」という共通の治療目標があり、SABAがキードラッグとなります(図14~6)

図1:気管支喘息、COPD増悪時の気道(文献4~6を参考に作成)

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COPD増悪では、NPPVが気管挿管率および死亡率を低下させることがメタアナリシスで示されています。HFNCも忍容性に優れ、二酸化炭素の洗い流し効果により有用であり、NPPVと同等の効果が報告されています。喘息においても、NPPVやHFNCは従来の酸素療法と比較してPaO2の改善、呼吸数・心拍数の低下をもたらすことが示されており、重症喘息発作時にも有用な非侵襲的呼吸補助療法と考えられています。

以上より、呼吸不全を合併する閉塞性肺疾患増悪患者ではNPPV/HFNCが使用される場面があり、そのような重症患者にこそ吸入療法を併用することが重要です。

吸入療法の注意点

ジェットネブライザー(JN)使用時の駆動ガス

呼吸性アシドーシス悪化を防ぐため、JNは酸素ではなく圧縮空気で駆動することが望ましいとされています。

去痰薬吸入時の注意

去痰目的で吸入療法を行う場合、SABAを併用しないと気道刺激による気道攣縮を起こす可能性があります。アセチルシステインの添付文書にも、重篤な副作用として気管支攣縮が記載されています。

下気道感染に対する抗菌薬吸入療法

抗菌薬吸入療法は、薬剤を直接感染部位へ高濃度に送達できる点が利点です。全身投与と比べて副作用を軽減できるほか、耐性菌出現を抑制する可能性も示されています。実際に、耐性緑膿菌感染やVAPに対してトブラマイシンやアミカシンの吸入療法が有効であった報告があり、感染治療のみならず感染予防効果も報告されています7)

今後、ネブライザー技術や抗菌薬製剤の進歩により、人工呼吸管理のみならず、NPPVやHFNC下での抗菌薬吸入療法のエビデンス構築が期待されます

NPPV施行中の吸入療法(図21)

NPPVを中断せずに実施する

NPPV装着中の患者に吸入療法を行う際、マスクを外して通常のネブライザーや加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)を使用することは推奨されません。NPPV回路にネブライザーを組み込んだ場合でも、マスクやマウスピースを用いた通常の吸入と同等の効果が得られることがわかっています。むしろ、マスクを外すことによる酸素化の悪化や肺胞の虚脱(デリクルートメント)のリスクを避けるため、NPPVを継続したまま回路内で吸入を行うことが基本となります。

デバイスの選択と回路への接続位置

NPPV回路内で使用可能なデバイスには、pMDIとネブライザー(ジェット式、振動メッシュ式)があります。図21)に示す推奨配置に従って接続します。

図2:NPPV中の吸入療法における推奨ステートメント(文献1を参考に作成)

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pMDIの場合

スペーサー付きのpMDIを使用し、「マスクと呼気弁(リークポート)の間」に接続します。使用時のポイントは、吸気開始に合わせて同調させて噴霧することです。呼気中に作動させると吸入量が減少してしまうため、タイミングを合わせることが重要です。

ネブライザーの場合

単回路のNPPVの場合、pMDIと同様に「マスクと呼気弁の間」に装着します。肺モデルを用いた研究において、この位置が最も薬剤到達効率が良いことが証明されています。推奨されるデバイスは、振動メッシュネブライザー(VMN)です。最新の『COPD診断と治療のためのガイドライン2026〔第7版〕』8)においても、VMNが推奨されています。JNと比較して、以下の理由からVMNが適していると報告されています。

1.高い吸入効率
ネブライザーの配置やNPPVの設定にかかわらず、JNよりも多くの薬剤を肺に送達できます。
2.換気設定への影響がない
JNは駆動に圧縮空気を使用するため、回路内の流量や酸素濃度が変化し、NPPVのトリガー感度や換気量に影響を与える可能性があります。一方、VMNは駆出ガスを用いないため、これらのパラメーターに影響を与えません。
3.JN使用時の駆動ガス
もしJNを使用せざるを得ない場合、COPDなどCO2貯留のリスクがある患者では、呼吸性アシドーシスの増悪を防ぐため、駆動ガスには酸素ではなく圧縮空気を使用する方が安全です。

設定や加湿に関する注意点

加温加湿器は止めない

かつては「加湿により薬剤の沈着率が下がる」として、加温加湿器の一時停止が考慮されることもありました。しかし、加湿の中断による気道攣縮のリスクや、再開忘れ(ヒューマンエラー)のリスクを考慮すると、臨床的には加温加湿器を作動させたまま吸入療法を行うことが推奨されています。

使用薬剤の濃度

使用薬剤の濃度については、量の変更や希釈は必要ありません。

換気モードや設定を変更しない

エアロゾルの到達効率を上げるためだけに、NPPVの設定(圧設定など)を変更することは推奨されません。あくまで患者の呼吸状態に合わせた設定を優先します。

HFNC施行中の吸入療法(図31)

図3:HFNC中の吸入療法における推奨ステートメント(文献1を参考に作成)

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HFNCを継続したまま回路内から吸入療法を実施する

HFNC装着中も、鼻カニュラを外したり、HFNCの上からフェイスマスクを当てたりする必要はありません。HFNCの設定流量を維持したまま、回路内にネブライザーを組み込むか、pMDIを使用する方法が推奨されます。

HFNCは高流量システムであるため、回路外からエアロゾルを吸入させようとしても、高流量のガスによって薬剤が押し流されてしまい、十分な効果が得られない可能性があります。

デバイスの選択と回路への接続位置

ネブライザーの場合
VMNの場合
HFNCにおいても、推奨されるデバイスはVMNです。接続位置については、使用するHFNCの機種によって異なります。一般的な構成の場合は、加温加湿器の「手前(ドライ側)」に装着するのが最も薬剤沈着効率が良いとされています。
Airvo™2(フィッシャー&パイケル社)の場合1)
加湿チャンバーと本体が一体化しているため、加湿器の手前に装着すると薬剤が本体内部に入り込み故障の原因となる可能性があります。そのため、専用のアダプターを用いて「加湿器の後(患者側)」に装着します。
pMDIの場合

スペーサーを用い、「鼻カニュラ(プロング)の直前」に配置して吸入する方法があります。

HFNCにおける注意点

NPPVと同様に、加温加湿器の停止は推奨されません。高流量のガスが乾燥した状態で気道に送られることは、気道粘膜へのダメージや不快感につながるため、加湿を継続した状態で吸入を行います。

臨床現場での実践例

シームレスな吸入療法

急性期においては、患者の呼吸状態の変化に伴い、デバイスが「挿管人工呼吸管理」→「NPPV」→「HFNC」と移行していくことがあります。

例えば、当院で経験したCOPD増悪の症例では、挿管中からVMN(Aerogen Solo™など)を回路に組み込み、抜管後はNPPVマスクに、その後はHFNC 回路にと、同じ吸入デバイスを付け替えるだけでシームレスに吸入療法を継続することができました。

どの呼吸管理フェーズにあっても、気道閉塞を解除するための気管支拡張薬(SABAなど)の吸入を途切れさせないことが、早期回復への鍵となります。

おわりに

NPPVやHFNC中の吸入療法は、一見複雑に見えますが、適切なデバイス選択と接続位置を理解していれば、安全かつ効果的に実施可能です。特に、VMNの普及により、呼吸回路を開放することなく、高い効率で薬剤を投与できるようになりました。今後は抗菌薬吸入なども含め、この分野でのエビデンスがさらに蓄積され、より確立された治療法となっていくことが期待されます。


【引用・参考文献】

  1. Li. J. et al. Aerosol therapy in adult critically ill patients: a consensus statement regarding aerosol administration strategies during various modes of respiratory support. Ann Intensive Care. 13(1), 2023, 63.
  2. 奥田みゆき.非侵襲的呼吸補助療法(NPPV/HFNC)における吸入療法.呼吸療法.41(2),2024,190-6.
  3. Global Strategy for Asthma Management and Prevention 2024.
    https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2025/05/GINA-2024-strategy-report_24_05_22-WMSA.pdf
  4. Billington, CK. et al. cAMP regulation of airway smooth muscle function. Pulm Pharmacol Ther. 26(1), 2013, 112-20.
  5. Sapey, E. et al. Building toolkits for COPD exacerbations: lessons from the past and present. Thorax. 74(9), 2019, 898-905.
  6. Hall, S. et al. Key mediators in the immunopathogenesis of allergic asthma. Int Immunopharmacol. 23(1), 2014, 316-29.
  7. Ehrmann, S. et al. Inhaled amikacin to prevent ventilator-associated pneumonia. N Engl J Med. 389(22), 2023, 2052-62.
  8. 日本呼吸器学会COPDガイドライン第7版作成委員会編.COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第7版 2026.東京,日本呼吸器学会,2026,193.

提供元:みんなの呼吸器 Respica 2026 vol.24 no.2(メディカ出版)

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