IMI WEBセミナー 「明日から使える人工呼吸器管理の基本 ~呼吸器疾患編~」 ご報告 及びオンデマンド配信のご案内
- 掲載:2024年12月
- 文責:急性期ケアエリアチーム
2024年11月5日(火)、IMI WEB セミナー「明日から使える人工呼吸器管理の基本~呼吸器疾患編~」を開催いたしました。
本セミナーでは、生理学的な観点から基本的な人工呼吸器管理における注意点や、疾患別の対応方法についてご講演いただきましたので、ご報告申し上げます。
IMI WEBセミナー「明日から使える人工呼吸器管理の基本 ~呼吸器疾患編~」
オンデマンド配信のご案内
本セミナーを期間限定でオンデマンド配信いたします。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご視聴をお申し込みください。
視聴方法並びにセミナー概要については以下をご参照ください。
―オンデマンド配信 視聴方法―
下記URLより視聴登録をお願いいたします。
https://form.k3r.jp/imi_co_ltd/20241105online
お申込み時のメールアドレスへご視聴用リンクをお送りいたします。
配信期間:2024年12月2日(月)~ 2025年12月2日(火)18:00
IMI WEBセミナー「明日から使える人工呼吸器管理の基本 ~呼吸器疾患編~」ご報告
日時 : | 2024年11月5日(火)19:00~20:00 |
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会場 : | Zoom オンライン |
演題 : |
明日から使える人工呼吸器管理の基本 ~呼吸器疾患編~ |
演者 : |
中澤 太一 先生 |
はじめに
気管挿管の適応はMOVES(M:意識障害、気道確保、O:低酸素血症、V:高二酸化炭素血症、E:去痰不全、予想される経過、S:ショック)として知られているが、人工呼吸器の主な適応は、「O:低酸素血症」「V:低換気(高二酸化炭素血症)」「S:ショック」の三つである。人工呼吸器の使用により、「酸素化の改善」「換気の改善」「呼吸仕事量の軽減による酸素消費量の軽減」が期待できる。
人工呼吸器は肺の状態を改善する治療法と捉えられがちであるが、実際には治療法ではなく、原疾患の治療により病態が改善するまでの間の橋渡しの役目を担っている。つまり人工呼吸器は治療法ではなく、対症療法の1つの手段であり、人工呼吸器管理において最も重要なことは患者の肺や横隔膜などを悪化させないことである。不適切な人工呼吸器管理、特に過度に高い気道内圧は、肺障害を引き起こすリスクを伴う。図1は、気道内圧を45cmH2Oに設定して人工呼吸器管理を行った動物実験モデルであり、時間の経過とともに肺障害が発生している様子を示している。
これらのことから、不適切な人工呼吸器管理は患者の状態を悪化させるリスクをはらんでおり、適切な知識を持つことが極めて重要である。
人工呼吸器の基本モードの設定
人工呼吸器には、多くの換気モードが搭載されているが、アシストコントロール(AC)と自発呼吸モード(SPONT)を使用することが多い。以下に2つの換気モードの特徴を記載する(図2)。
- アシストコントロール(AC):自発呼吸をトリガーして設定した換気を行う補助換気(アシスト)と、自発呼吸がなくても設定した呼吸回数、強制換気を行う調節換気(コントロール)を行う。
- 自発呼吸モード(SPONT):患者の自発呼吸をトリガーして設定された圧力でサポートする。自発呼吸がある患者に使用する。
人工呼吸器の基本設定について
酸素化
人工呼吸器管理において、酸素化は主にFiO2(吸入酸素濃度)とPEEP(呼気終末陽圧)によって規定される。FiO2およびPEEPの設定方法として、Lower PEEP/higher FiO2テーブルが広く知られている(図3)。
また、酸素化に関わる設定を行う際には、高濃度の酸素投与による吸収性無気肺のリスクを考慮する必要がある。このため、SpO2の目標は88~96%(目安として92~94%前後)の範囲に設定する。
換気を規定する設定項目
換気はPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)を規定し、分時換気量に大きく影響を受ける。
分時換気量は、理想体重×0.1(L)を目標とすることが一般的である。理想体重は対象の身長を基に計算される(図4)。実際の体重ではなく、理想体重を指標とする理由は、体重の増減によって肺の大きさが変化しないためである。
一回換気量の設定について様々な文献で議論されているが、ARDSでない場合では一回換気量は6~10ml/kgに設定することが一般的である。また、呼吸回数はPaCO2のモニタリングと呼気フローが基線まで戻ってきていることを確認しながら慎重に調整する必要がある。
代表的な換気モードの設定について
VC-AC
- 一回換気量:6~10ml/kgに設定する。
- 呼吸回数は呼気フロー波形と分時換気量で決定する(通常10~16回)。
- フローは40~60L/minに設定する。
- Pplat≦30cmH2O、⊿P*<15cmH2Oとなるように調節を行う。
Ppeakは高くても問題ない。
*⊿P=Pplat-PEEP
PC-AC
- 一回換気量が6~10ml/㎏となる吸気圧に設定(ただし⊿P<15cmH2O)。
- 吸気時間は吸気フローが基線に戻るように設定する。
- 呼吸回数は呼気フロー波形と分時換気量で決定する(通常10~16回/分)。
PSV
前提条件:十分に自発呼吸が行われていることを確認する。
- 一回換気量が6~10ml/kgとなる吸気圧に設定。
- 基本は吸気流量の25%で送気終了するように設定する。
- 呼吸回数は患者によって規定される。
閉塞性肺疾患の人工呼吸器管理について
Auto PEEPの予防を意識する
閉塞性肺疾患の人工呼吸器管理ではAuto PEEPの発生を経験することがある。Auto PEEPは呼気時に吐ききれなかった空気が肺に残った状態となり、肺胞内圧が高くなる現象で、ミストリガーの原因となる。そのため、Auto PEEPの予防は非常に重要である。
Auto PEEPの予防と対策
- 気管支拡張薬を使用する。
- 吸気時間を短くすることにより、相対的に呼気時間を延長させる。
- 呼吸回数を下げる。
- 一回換気量を少なくする。
- 設定のPEEPを上げる(カウンターPEEP)。
換気モードについて
閉塞性肺疾患に人工呼吸器管理を行う場合、PCVで管理を行うと、特に急性期では一回換気量が減少することがある。閉塞性肺疾患にPCV管理を行うと、気道抵抗高いため、気道を通すために吸気圧が使用され、換気に関与する肺胞が十分に広げられない状態が発生する(図5)。そのため、閉塞性肺疾患患者、特に急性期ではVCVで管理することが多い。
閉塞性肺疾患の人工呼吸器管理のまとめ
- 急性期はAC-VCで管理をする(PC-ACでは換気が入らないことが多い)。
- 気道内圧上限を上げて、設定した換気が入るようにする。
- 換気が入らない場合はDOPE*で換気が入らない原因検索を忘れずに行う。
*DOPE:D(チューブ位置の異常) O(気管・チューブ閉塞) P(気胸) E(機器の不具合)。
- Auto PEEPを予防する。
- 相対的に呼気時間が長くなるよう、吸気時間は短めに設定する。
- それでもAuto PEEPがある場合、カウンターPEEPをかける。
- 基本は呼吸筋を休ませるために、少なくとも24時間は挿管管理を継続する。
最後に
ICUにおける重症患者管理では、人工呼吸器管理が重要な役割を果たし、必要不可欠なデバイスである。しかし、人工呼吸器は治療が奏功するまでの橋渡しに過ぎず、管理を誤ると容易に患者の呼吸器系に損傷を与える可能性があるため、慎重な対応が求められる。
本レポートは中澤先生のご講演内容から一部抜粋したものです。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひオンデマンドセミナーのご視聴をお申し込みください。