特別企画

電池(バッテリー)のお話

  • 掲載:2010年07月

電池、バッテリーは、懐中電灯、携帯電話、デジタルカメラ、自動車など、私たちの身の回りにある様々な製品に使用されており、現代社会において、なくてはならないものとなっております。また、ご存知のとおり、バッテリーは医療機器のバックアップ電源としても利用されており、弊社取り扱い機器においても、VELA、AVEA、レジェンドエア、TOSCA、Daisyなど、多くの器械にバッテリーが搭載されております。

主な電池(バッテリー)の放電、充電の仕組み

電池とバッテリーの違い

バッテリーも電池の一種です。電池の主な働きには放電と充電があり、働き方の違いによって2種類の電池に大別されます。充電ができない使い切り電池を『一次電池』、充電が可能であり何回も使用できる電池を『二次電池』(以下、バッテリー※1と呼びます。

※1日本では、従来、自動車に用いられてきた鉛蓄電池(二次電池)を「バッテリー」と呼んできた歴史があることから、単に「バッテリー」といえば、通常、二次電池を指します。ここでは二次電池⇒バッテリーに統一表記します。

バッテリーの放電

電池とは、様々な反応により発生する電位差から変換された電気を直接取り出す装置であり、乾電池など化学反応を利用した「化学電池」と、太陽電池など光や熱エネルギーを利用した「物理電池」に大きく分類されます。尚、弊社取り扱い機器において「物理電池」は使用されていませんので、ここでは「化学電池」(以下、電池)について触れることとします。

電池は、+極と-極の2種類の金属、および電解液から構成されており、それらの化学反応を利用して電気を取り出す仕組みになっています。
異なる2種類の金属のうち、イオン化傾向※2の小さい金属が+極となり、大きい金属が-極となります。

電池の仕組みを理解するのによく利用されるボルタ電池(+極:銅、-極:亜鉛、電解液:希硫酸)を取り上げ(右図)、以下放電の仕組みについてご説明します。

まず、銅(Cu)よりもイオン化傾向の大きい亜鉛原子(Zn)が、電子を残して亜鉛イオン(Zn2+)になり希硫酸中に溶けていきます。

亜鉛板では溶けた分だけ電子の数が増え、導線を伝って銅板に移動していきます。

さらに希硫酸(H2SO4)に含まれている水素イオン(H+)が銅板に移動してきた電子とくっついて水素ガス(H2)になります。

電池は、+極と-極の2種類の金属、および電解液から構成されており、それらの化学反応を利用して
電気を取り出す仕こうして電子が消費されると、また亜鉛板から電子が移動してきます。この一連の流れによって、電子の流れと反対に電流が流れて電気エネルギーが生まれます。

※2イオン化傾向:金属が金属イオンを含む溶液と接する際に、イオンとなって溶液中に入ろうとする
傾向の度合い。

様々な新しい電池が開発されていますが、基本的な原理はどれも同じです。

2種類の金属間でのイオン化傾向の差が大きいほど、電池の起電力(取り出せる電圧)は大きくなることから、電極に使われる金属、電解液の違いによって、起電力や性質の違う様々な種類の電池となります。主な電池の種類については下記にてご紹介いたします。

バッテリーの充電

充電とは、外部電源などを用いて放電時とは逆方向に電流を流すことで、放電時と逆の化学反応を発生させて、バッテリーの起電力を回復、放電前の状態に戻すものです。

◆ 放電、充電反応の例:鉛蓄電池(車などに使用されているバッテリーです)

鉛蓄電池の構成・・・+極:二酸化鉛(PbO2)、-極:鉛(Pb)、電解液:希硫酸(H2SO4

   -極(鉛:Pb)の反応  +極(二酸化鉛:PbO2)の反応
放電時 Pb + SO42- ⇒ PbSO4 + 2e PbO+ 4H + SO42- + 2e ⇒ PbSO4 + H2O
充電時 PbSO4 + 2e ⇒ Pb + SO42- PbSO4 + H2O ⇒ Pb02 + 4H + SO42-

放電時には、-極の鉛(Pb)、+極の二酸化鉛(PbO2)の両極に硫酸鉛(PbSO4)が付着し、電解液である希硫酸(H2SO4)硫酸鉛(PbSO4)が溶け出し、再度、希硫酸(H2SO4)の濃度が上昇します。

尚、一次電池も基本的な原理は同じですから、一部充電可能(乾電池用の充電器も売られているよう)ですが、電池メーカーは一次電池の充電を一切認めておりません。理由は、充電時、化学反応により発生するガスによって電池内部の圧力が上がり、液漏れ・破裂が発生するなどのリスクがあるためです。
バッテリーは、ガス発生により内部圧力が上がらない構造になっています。

主な電池(バッテリー)の種類、ならびに電圧、容量

電池バッテリーの種類

前回、充電ができない使い切り電池を『一次電池』、充電が可能であり何回も使用できる電池を『二次電池』(バッテリー)に分類されることをご紹介しましたが、日常生活で馴染みが深いマンガン乾電池やアルカリ乾電池、車に使用される鉛蓄電池など、用途別にさらにいくつかの種類に分類されます。代表的なものを以下ご紹介いたします。


【一次電池】


    ・マンガン乾電池(円筒形)

  • 古くから使われており、休み休み使用すると一時的に起電力が回復するため
    リモコンや懐中電灯など時々使う機器の使用に適しています。


    ・アルカリ乾電池(円筒形)

  • 乾電池の大半を占めます。マンガン乾電池よりも3~5倍長持ちするため、CD、DVDプレーヤー など、
    連続使用する機器の使用に適しています。


    ・オキシライド乾電池(円筒形)

  • 出力と容量はアルカリ乾電池の約1.5倍で、長時間の使用でも電圧が下がらないため、デジタルカメラなど、中~大電流を必要とする機器の使用に適しています。


    ・アルカリボタン電池(ボタン型)

  • 低価格で高性能、形状がボタン型で小型・薄型機器の使用にも適しており、電卓やカメラなど幅広い機器に使用されています。


    ・酸化銀電池(ボタン型)

  • 電圧が非常に安定しており、寿命直前までほぼ同じ電圧を保つことから、クオーツ時計、精密機器などの使用に適しています。


    ・空気亜鉛電池(コイン型)

  • 正極の材料に大気中の酸素を使用することから、電力容量が大きく、寿命も長い電池です。補聴器など、小型で頻繁な電池交換ができない機器の使用に適しています。


    ・リチウム一次電池(円筒型、コイン型、ピン型)

  • 様々な形状があり、電圧が高く、寿命も長いことから、コンパクトカメラなど大電流を必要とする機器の使用に適しています。
    また、使用可能な温度範囲が広いことから、ガスメーターのような全国の寒い地域~暑い地域で使用される機器にも使用されています。
  • 弊社取り扱い機器:VELAのビデオPCB用電池(日時データの保持する電池、1年毎の定期交換パーツ)


【二次電池(バッテリー)】


    ・鉛蓄電池

    Tバード
  • メモリー効果※3がなく、安定した品質で信頼性が高い電池です。車のバッテリーに使用されていることが有名ですが、病院の非常用電源など産業設備のバックアップ用にも使用されています。
  • (弊社取り扱い機器:CVシリーズ、T-Bird、LP6Plus、LP10、BearCub750、TOSCA)

  • ※3メモリー効果・・・完全に放電しきらずに充電を繰り返すことで、実際の容量よりも短時間しかバッテリーが使えなくなるという現象が起こります。これがメモリー効果です。メモリー効果は、例えば、満充電したバッテリーを50%しか利用していない状態で再充電を開始すると、その50%を0%として誤認識してしまうことにより起こります。


      ・ニッカド電池

    • 自然放電が 多く、メモリー効果も大きいことから、長期間使用には不向きなバッテリーです。尚、携帯電話やノートパソコンなどのバッテリーとして過去によく利用されていましたが、メモリー効果の影響が大きいことから、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった充電池が普及した今では、携帯機器においてはそれほど利用されていません。
      現在は、コードレス電話、電動歯ブラシなどに使用されています。

      ・ニッケル水素電池

      人工呼吸器VELA
    • ニッカド電池に続く新世代のバッテリーとして登場し、ニッカド電池に比べるとメモリー効果の影響が少ないという特徴があることから、携帯電話やノートパソコンなどのバッテリーとしてよく利用されていました。
      しかしながら、メモリー効果の影響がほとんどないとされているリチウムイオン電池の登場と普及に伴い、現在ニッケル水素電池をバッテリーとして使用する機器は減ってきています。
    • (弊社取り扱い機器:VELA、AVEA、Daisy)

      ・リチウムイオン電池

      人工呼吸器レジェンドエア
    • メモリー効果の影響がほとんどないという特徴があります。また、前述のバッテリーに比べてエネルギー密度高いことから、小型化が可能なうえ、持続時間も長いという携帯機器向けの特性を持っています。
      そのため、現在は携帯電話やPDA、デジタルカメラにDVカメラ、ノートパソコンと携帯機器では非常に広く電源として採用されています。
    • (弊社取り扱い機器:レジェンドエア)

    電池(バッテリー)の電圧、容量

    前項にて代表的な電池を挙げましたが、それぞれの電池が持っている電流(電子)を流すパワー=電圧は違います(但し、乾電池など互換性を持たす必要がある電池は同じです)。
    この電圧は、+極の持つ電位と-極の持つ電位の差によって決まります。電位は用いる材料固有のものであり、イオン化しやすいもの(電子を生み出す力が強いもの)は電位が低く、イオン化しにくいものは電位が高くなります。このような金属の「イオン化しやすさ」をイオン化傾向と言います。以下に、各金属のイオン化傾向についての表を示します。

    例えば、この表を元に、+極が銅、-極が亜鉛のボルタ電池の電圧を求めると、0.337V-(-0.763V)=1.1Vとなることがわかります。

    尚、この電圧は、電池を通常の状態で使用した場合に得られる端子間電圧の目安として「公称電圧」と呼ばれます。

    各電池におけるプラス極材料、マイナス極材料、および公称電圧を以下に示します。

    上表のとおり、公称電圧は同じ種類の電池では一定ですが、電池の容量(どれだけ長持ちするか)は電池を大きくすることなどで増やすことができます(例:単3アルカリ乾電池>単4アルカリ乾電池)。尚、この電池の容量はAh(アンペア アワー)で表記され、「公称容量」と呼ばれます。

    例えば、2.0Ahの容量を持つ電池は、2Aで1時間、1Aなら2時間、電流を流すことができます。

    また、使用用途に応じて電圧を上げる必要がある場合は電池を直列に接続します。一般的に普通車に使用される12Vバッテリー(鉛蓄電池)は、1個 2Vの鉛蓄電池 6個が直列に接続され、ひとつのバッテリーとして構成されております(大型車の24Vバッテリーは、12個直列接続)。

    主な電池(バッテリー)の特性、寿命

    懐中電灯を使っていると、そのうち暗くなっていき最終的には点灯しなくなります。これは、使用されている電池の電圧が低下したことが原因です。
    電池、バッテリーは使っていくと電圧が下がり、この使用時間経過に伴う電圧の変化を表したものを放電曲線といいます。

    放電が理論通りに進めば、+極と-極の材料が反応している間は「公称電圧」が供給され、+極と-極の材料を使用し尽くした時点で電圧がゼロになります(理想曲線)。

    しかし実際の放電時には、放電反応の進行を妨げる内部抵抗が増加するため電圧は徐々に下がります。
    内部抵抗が小さく、使用を終了する直前まで一定の電圧を保つ電池は、長時間効率良く機器を作動させることができる放電特性の優れた電池といえます。

    上図のとおり、リチウムイオン電池は、乾電池に比べると比較的平坦な放電曲線を示すことから、放電特性に優れた電池といえます。

    一方で電圧低下が緩やかであることによって、バッテリーの電圧とバッテリーの充電残量の間に比例関係が成立しません(僅かな電圧低下から充電残量を推定しなくてはなりません)。
    携帯電話には主にリチウムイオン電池が使用されておりますが、皆様ご存知のとおり、その残量表示は『%』ではなく、『3段階の電池表示』になっています。

    これは、バッテリー電圧と充電残量に比例関係がないことに加え、携帯電話は持ち歩きされるため外部の温度や湿度の変動が大きく、バッテリーの状態(電圧)も常に変化し、残量を『%』で正確に表示することが困難であることから、前述のような大雑把な残量表示になっています。

    電池、バッテリーを使用していないにも関わらず、時間の経過と共に徐々に残量が減少する現象を自己放電(自然放電)といいます。乾電池では、製造時に保持している残量が1年で数%減少するといわれています。
    長期間保存した乾電池では、未使用であっても残量がなくなり、使えなくなることもあるため、消費期限が定められている乾電池もあります。

    電池、バッテリーは化学反応で放電することから、温度が高くなるほど自己放電は活発になります。
    真夏に車のダッシュボードなどにバッテリーを放置しておくと、あっという間に放電して空になってしまうこともあります。

    鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池といったバッテリーの自己放電は大きく、1ヶ月程度で残量が数十%減少することも珍しくありません(リチウムイオン電池の自己放電は少なく、ニッカド電池、ニッケル水素電池の1/10程度)。

    そのため、これらのバッテリーは、充電して非常時に備えてしまっておくといった使用方法には向かず、常に充電を行うか、定期的に充電を行い、満充電状態を保っておく必要があります。
    そのため、弊社のバッテリー搭載器の添付文書には、以下のようにバッテリー充電についての記載をしています。

    ◆Tバードは内部バッテリを搭載しています。使用しない時は最低でも2ヶ月に一度、充電を行なってください。

    ◆本器は内部バッテリを搭載しています。使用しない場合でも、充電のため常にAC100V電源に接続しておいてください。

    ◆保管中に充電を忘れた場合バッテリ寿命が短くなります。また、完全に放電したバッテリは本体にダメージを与えます。交換が必要な場合、IMIが認定するサービスマンに連絡してください。

    [弊社取り扱い機器]

    鉛蓄電池 CVシリーズ、T-Bird、LP6Plus、LP10、BearCub750、TOSCA、
    無停電電源装置9100シリーズ、無停電電源装置REMiOシリーズ
    ニッカド電池 メドシステムⅢ
    ニッケル水素電池 VELA、AVEA、Daisy、NIRO200NX
    リチウムイオン電池 レジェンドエア、METIman、iStan

    どのバッテリーも充電、放電を繰り返すと、電解液の涸れ、+極、-極の極間距離が近づくことなどによって、徐々に最大容量が減っていきます。
    一般的には、数百回の充放電にて、初期の容量から数十%は減少するといわれており、弊社においてもバッテリーは機器毎に定期交換パーツに指定しています。バッテリーはあくまで消耗品であるとご理解ください。

    尚、極端な高温・低温環境での保管や充電忘れなどは、バッテリーの劣化を早めてしまいます。
    各機器の添付文書、取扱説明書には適正な保管環境などについて記載していますので、適正な使用環境をお守りいただき、長く安全にバッテリーをご使用いただければ幸いです。

関連商品

関連商品はありません。

関連記事

関連記事はありません。

アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

このページは、医療関係者の方へ弊社の販売する商品・サービスに関連する情報をご提供することを目的として作成されております。一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

あなたは医療関係者ですか?
TOPへ