ボストン小児病院訪問記
- 掲載:2008年06月
- 文責:レスピラトリ・ケア部
2008年5月16日~21日にカナダのトロントで開催されたATS(米国胸部疾患学会)の展示会に参加した後、ちょっと寄り道をして、米国マサチューセッツ州ボストンにあるボストン小児病院を訪問し、院内を見学させて頂きましたのでご報告します。
病院の正面玄関を入ると、そこはまるでどこかのテーマパークかと見間違うような光景が目に飛び込んできました。待合室の中央には熱帯魚が優雅に泳ぐ大水槽と大きな遊具が置いてあり、その奥に薬局と売店があるのですが、とてもカラフルな配色で、まるでテーマパークのお土産屋さんのようでした。この待合室で私たちは、今年2月に長野県大町市で開催された第10回新生児呼吸療法・モニタリングフォーラムにおいて、小児のシミュレータ教育の必要性をご講演頂いた、同院救急集中治療部麻酔科医のPeter Weinstock先生と再会し、院内を案内して頂くことになりました。
院内には、未熟児・新生児の集中治療を行うNICU、循環器系疾患の治療を行うCCU、長期の呼吸管理が必要な患者のためのICU、そして術後患者さんなど外科系疾患患者さんの治療を行う外科系ICUの4つのICUが有り、私たちは外科系ICUに案内されました。
ICUに入るとCardinal Health 207社製(旧VIASYS Healthcare社製)人工呼吸器AVEAが各ベッドに配置されており、全てのAVEAに特注のトップシェルフが取り付けられ、それぞれEtCO2モニタが搭載・使用されていました。日本ではやっと人工呼吸中のパルスオキシメータの使用が標準化されつつあるという状況の中、ボストン小児病院のICUでは人工呼吸中にEtCO2を測定することが、それも小児でスタンダードになっているのには驚きました。
パルスオキシメータよりもEtCO2モニタの方がより早く異変を察知でき、人工呼吸器の設定を変更する上でも有益なデータが得られることは周知のことですが、日本の人工呼吸器による呼吸管理を行っている現場でEtCO2モニタが標準で使用されているケースは少なく、今後、我々人工呼吸器販売会社からもEtCO2モニタの併用を啓蒙する活動が必要なのではないかと感じました。
小児専門の同院では、上記のAVEAが約30台採用され、重症患者さんの呼吸管理に使用されています。AVEAの採用理由をWeinstock先生に伺ったところ、他の機種には無い特徴として、圧縮空気の代わりにヘリウムと酸素の混合ガスであるヘリオックスが使用できること、及び、バルーンカテーテルを使用した食道内圧計測(日本では薬事未承認)が可能なためであるとのことでした。特にヘリオックスは小児の喘息患者さんの狭窄した気管支にガスを送り込むことに有効で、しばしば使用されているそうです。
日本では昨年岡山で開催された第29回日本呼吸療法医学会学術総会の弊社共催ランチョンセミナーにおいて、デューク大学のRRTであり、Clinical Research CoordinatorであるJohn D. Davies先生にヘリオックス使用による人工呼吸の有効性についてご講演いただいております。実際にヘリオックスを臨床現場で使用されている貴重なお話しを伺い、今後日本でも、ヘリオックス使用による呼吸管理を普及させるべきであるとの強い使命を感じました。次回のWebマガジンでは昨年のJohn D. Davies先生の講演内容の掲示を予定しておりますので、ご期待ください。
また、同院ではNPPV(マスクベンチレーション)やHFOV(高頻度陽圧換気法)の取り組みにも積極的で、世界のHFOV器のスタンダードであり、 AVEAと同じCardinal Health 207社製の3100A(新生児・小児用)及び3100B(小児・成人用)が十数台使用されており、従来の換気様式では救命できなかった、たくさんの小さな命を救っているとのことでした。
ICUのベッドサイドを見せて頂いた後に、ICUの中心にあるシミュレータ室に案内されました。小児用高機能シミュレータとしてMETI社製 PediaSIMがベッドに横たわり、AVEAに繋がれて人工呼吸を受けていました。Weinstock先生は、シミュレータ教育で重要なことは、高性能なマネキンと臨床現場と同じ医療機器を使用し、きちんとしたカリキュラムに基づいて行われることであると力説されていました。また、この部屋の天井と壁にはビデオカメラと大型の液晶ディスプレイが設置してあり、トレーニング中の内容を録画し、直後にその画像を見ながら自分達の手技が正しかったのか、また、どのような問題があったかをディスカッションすることもできるようになっており、これも非常に重要な教育の一部で有るともコメントされていました。 日々、患者シミュレータは、より人間に近付く為の進化を続けていますが、この進化と平行して、日本においても、各病院施設内におけるシミュレーション室・カリキュラムの整備が早急に必要なのではと考えさせられた病院見学でした。
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