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TOSCA 経皮pCO2/SpO2 モニタリングシステム TOSCA 500
KKR札幌医療センター 福家 聡先生

  • 掲載:2007年12月
  • 文責:レスピラトリ・ケア部
TOSCA 経皮pCO<sub>2</sub>/SpO<sub>2</sub> モニタリングシステム TOSCA 500<br>KKR札幌医療センター 福家 聡先生

はじめに

低酸素血症を呈している呼吸不全患者に対して、適量の酸素吸入を行うことは日常的に行われる治療行為ですが、患者の状態により適切な酸素吸入量は変化しますし、またCOPDをはじめとする慢性呼吸器疾患患者については動脈血酸素分圧もしくは動脈血酸素飽和度のモニターのみではなく、動脈血二酸化炭素濃度のモニターも必要であることは言うまでもありません。

不用意に酸素吸入量を増加するとCO2ナルコーシスを呈する可能性があるからです。また換気量の減少を 認識できると補助換気や人工呼吸への移行をタイムリーに判断できるからです。

通常、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)についてはAラインを挿入したり、動脈血を穿刺採取して測定をする必要があり、これは侵襲的であり患者負担も大 きいと思われます。そのような方法でも経時的、持続的にモニターすることは不可能です。

また重症呼吸不全を呈していない患者さんに対するスクリーニングや 外来での経過観察では、さらにPaCO2のモニタリングは困難です。

そこで何かいい方法はないものかと探しておりました。研修医の頃には先輩医師から経皮的にPaCO2を測定する方法はあるが、

短時間(4時間程度)しか測定できず、値もあまり信頼できないと聞いていたので、あまり期待していませんでした。

実際これまでに経皮的測定法が広く日常臨床に普及してきたとは思えま せん。しかし最近開発された経皮的動脈血二酸化炭素濃度測定装置(TOSCATM)は、従来の経皮的測定装置を改良し、最大12時間の測定が可能となり、我々の行った基礎的な検討においても臨床使用に耐えうる信頼性を確認できました。

基礎的検討

我々は、健常ボランティアに対して任意に様々なレベルのPaCO2へ変化させ、経時的にPtcCO2を直接比較することにより、この装置の精度を検証しま した。その結果,それぞれの個人内でのPaCO2とPtcCO2の相関関係、平均反応時間は良好であり(図1a, b)、経時的にPaCO2を変化させた際にもPtcCO2の追従性は良好であり(図1 c, d)、以上の結果より最低2回程度の動脈血採血により得られたPaCO2とPtcCO2の関係を求めることで、臨床応用可能であることが示されました。


【図1】※クリックで拡大

臨床使用経験

I;急性呼吸不全治療時のTOSCAの使用経験

症例1 COPD 【図2】
COPD急性増悪にて入院。入院時の血液ガス分析では、マスク2L酸素吸入下でpH 7.22, PaCO2 66.4mmHg, PaO2 63.8mmHgでした。入院後に直ちにNPPVを装着し、図2のようにPtcCO2は低下し、その後夜間のモニタリングをしながら経過を観察できた症例。


【図2】※クリックで拡大

症例2 肺結核後遺症【図3】
肺結核後遺症の急性増悪で来院。NPPVを装着し、徐々にPtcCO2が低下し、人工呼吸器を装着することなく、最終的にはNPPVより離脱しえた症例。


【図3】※クリックで拡大

II;慢性呼吸不全症例でのTOSCAの使用経験

症例3 GOLD stage IIIのCOPD 【図4】
日中のモニタリングでは,PtcCO2の上昇や変動は認めず、PtcCO2は40mmHg程度でしたが、夜間のモニタリングにおいてベースラインが上昇 し、平均PtcCO2は50mmHg程度でした。ポリソムノグラフィーによる確認では睡眠時無呼吸症候群と診断されました。夜間の経時的モニターにて合併 症の診断や夜間の低換気を捉えることができました。


【図4】※クリックで拡大

症例4 安定期肺結核後遺症患者でのNPPV導入例【図5】
酸素吸入やNPPVを使用していない高齢の患者さんでしたが、頭痛を主訴に入院されました。入院後TOSCAとポリソムノグラフィーでの検討で夜間低換気 を確認しましたので、まず酸素吸入のみを行いました。しかし低換気による問題は解決せず、次にNPPVを使用したところ、低換気は改善し、低酸素、高炭酸 ガス血症は改善しました。


【図5】※クリックで拡大

III;睡眠呼吸障害

重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群において、無呼吸とともに鋸状に変化するPtcCO2の所見を認めました。本症例では、CPAPを導入しSpO2とPtcCO2の安定化を確認できました。【図6】


【図6】※クリックで拡大

おわりに

呼吸器疾患患者の日常臨床現場ではSpO2と同様にPtcCO2モニターが重要であり、TOSCAは基礎的検討とともに臨床使用でも非常に有用であると考えられました。集中治療室や手術室では動脈ラインを確保でき、PaCO2を比較的容易にモニターできますが、呼吸器一般病棟や外来診療などにおいては、非 侵襲的手段として有用です。

経時的に変化を捉えることができることも非常に大きなメリットです。また看護師にとっても患者の容態が変化したときや医師が不在であるときに迅速な状況把握につながり、医師への的確な状態報告が可能となります。医師にとっても治療のタイミングを計る上で心強いツールであることは 間違いないと思います。今後は疾患ごとに症例を集積し、それぞれの疾患におけるPtcCO2の動態や呼吸管理のための指標としての有用性が詳細に検討して いきたいと思います。

当院呼吸器科・腫瘍内科の紹介

KKR札幌医療センターは、昭和27年に札幌の南のはずれのりんご園が広がるのどかな地域に、道内の国家公務員およびその家族のための結核対策病院として154床の幌南病院として発足しました。その後昭和60年に結核病棟は閉鎖されましたが、昭和62年には呼吸不全集中治療病棟を新設しました。平成18年 4月には、名称をKKR札幌医療センターと改称し、450床の地域基幹病院として歩んでいます。

当院では臓器別の一貫した診療を念頭にセンター制を導入し、呼吸器内科は呼吸器外科と同一病棟の呼吸器センターとして58床で診療しています。また後述の腫瘍内科、緩和ケア科とは一心同体で診療にあたり、それぞれ腫瘍内科10床、緩和ケア科10床の診療も行っています。担当医師は総勢7名です。

対応疾患としては、肺炎や気管支喘息などはもちろんのこと、歴史的背景から、肺結核後遺症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などに起因する慢性 呼吸不全患者が多く、在宅酸素療法の処方患者は約80人/月を数えています。

また呼吸不全患者の急性増悪に対応すべく、ICUとは独立したRCU病床を呼吸器センター内に4床備えています。

そのほか、睡眠検査センターとして5つの専用病床を備え、1泊入院で睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断を行い、外来でCPAP導入、さらに1泊入院でのtitrationを行っています。

SAS診療については、市内および近郊の開業医の先生と連携した札幌いびきネットワークというユニークなシステムも確立し、ひとりでも多くの潜在患者さんに診断と治療を行う取り組みも行っています。

肺癌診療については、腫瘍内科と連携し約60名の入院診療を行っています。当院は検診センター、64列CT、コンベックス走査式超音波気管支鏡(CP- EBUS)や蛍光気管支内視鏡、3次元放射線治療装置、22床の緩和ケア病棟などを備えていますので、診断から終末期まできめ細かい肺癌診療を実践しています。


福家先生プロフィール 

1997年3月 香川医科大学医学部卒業

2005年3月 北海道大学大学院医学研究科修了

先生のコメント:

大学院ではおもにCOPDにおける細気管支での炎症、酸化ストレスなどについての研究に従事しました。またTOSCAについての基礎的検討を行うチャンス をいただきました。今後は、一般病院でこそ得られる臨床的なデータの集積や解析を行って現場にフィードバックしたいと思っています。

KKR札幌医療センター(https://www.kkr-smc.com/)

アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

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