第45回日本救急医学会総会・学術集会 ランチョンセミナー「心肺蘇生時の呼吸管理 -最新のトピックスと今後の課題-」
- 掲載:2017年12月
- 文責:レスピラトリ・ケア部
日時 : | 2017年10月26日(木)12:00~13:00 |
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会場 : | 第11会場 リーガロイヤルホテル大阪 タワーウィング2F「ゴールデンルーム」 |
演者 : | 島崎 淳也先生 大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター 特任助教 |
座長 : | 井上 貴昭先生 筑波大学附属病院 救急・集中治療部 教授 |
抄録 : | ※pdfが開きます(66KB) |
2017年10月24日~26日に開催されました第45回日本救急医学会学術集会・総会(会長 大阪大学大学院医学系研究科 救急医学 教授 嶋津 岳士先生)において、共催セミナーを開催させていただきましたのでご報告致します。
まず、講演の冒頭に島崎先生は、「日々、救急専門医として活動していると、ガイドラインが決定された背景やなぜそのようになったのかという疑問がわいてくる。本セミナーではその背景や疑問について調べてみたこと、また経験したことをみなさんにお伝えしたい」と講演内容についてご説明されました。
また、島崎先生が強調されたことは、島崎先生が研修医であったころと比べて「蘇生における人工呼吸の地位が低くなってきているのではないか?」ということでした。
早期電気的除細動や絶え間ない胸骨圧迫の推奨など、時代に則した形でガイドラインは変化しますが、人工呼吸については具体的な記述がとても少ないのが現状です。
その中から、JRC蘇生ガイドライン2015に記載されている人工呼吸に関連する項目として、BLS(一次救命処置)とALS(二次救命処置)における人工呼吸について、過去のガイドラインから現在に至るまでの経緯を交えながらご解説されました。
ちなみに、BLS(一次救命処置)とは特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置、ALS(二次救命処置)とはBLSのみでは心拍が再開しない場合に、救急車内や病院などで救急救命士や医師が気管挿管、高濃度酸素や薬剤の投与などを行う処置です。
BLSの人工呼吸については、JRC蘇生ガイドライン2015に記載されている項目の中から、[人工呼吸の1回換気量の目安]、[人工呼吸1回の送気が1秒になった理由]、[胸骨圧迫と人工呼吸の割合が30:2になった理由]について論文を交えながらご解説されました。
また、BLSでそもそも人工呼吸が必要なのか?という疑問には、「胸骨圧迫のみのCPRと従来法を比べて予後に差がなかった、という論文が多く存在するが、15分以上の蘇生や非心原性心停止においては胸骨圧迫+人工呼吸の方が予後が良好であった、という論文もある。よって非心原性心停止や救急車が到着するまでに時間がかかるような場合は人工呼吸が有効かもしれない」と意見を述べられました。しかし、Bystander(救急現場に居合わせた人、発見者、同伴者など)がそれを判断できるのか?という疑問もあわせて述べられていました。
一方、ALSの人工呼吸については、[挿管した場合とBVM(バッグバルブマスク)を使用した場合で予後に差はあるのか?]、[CPR中の適切な酸素濃度は?]、[CPR中の適切な換気回数は?] という内容で、論文を交えながらご解説されました。
特に、挿管した場合よりBVMを使用した場合の方が予後は良好であるという論文が多数あるものの、そのほとんどがプレホスピタルにおける観察研究であることから他の質の高い研究を探した結果、フランス・ベルギーの研究においては挿管とBVMがほぼ同等な結果になっていることに言及され、現在のBVMが良いとされる流れに一定の疑問を述べられていました。
また、「胸骨圧迫中の換気で人工呼吸器を使用する際の適切な換気モードは?」という点について、自験データを交えてご解説されました。
MONNAL T60ベンチレータのCPVモード(Cardio Pulmonary Ventilation mode)は、CMV(調節換気)中の胸骨圧迫による高値の気道内圧を許容することで、胸骨圧迫時のエネルギーを心臓に伝え、ガスを肺内に送気することを可能にしている。「高値の気道内圧=肺損傷」のリスクが懸念されるが、ICUに入室されていた経肺圧測定中の患者の心肺蘇生時のデータからは、胸骨圧迫時の高気道内圧は胸腔内圧を反映しており、経肺圧はむしろ低く、CPVモードの「高値の気道内圧を許容する」という考え方は理にかなっている、との評価をされておられました。
講演の最後のトピックスとして、ROSC(自己心拍再開)後の呼吸管理の至適なPaO2/PaCo2レベルについて、論文を交えながらご解説されました。
ガイドラインにも記載があるように、現時点では「ROSC後の動脈血液ガスはPaO2、PaCO2も高すぎず、低すぎずが望ましい」という結論になってしまいますが、その基になっている論文を読み解くことで、なぜその結論に至ったのか?を理解することができる、と述べられていました。
講演のまとめとして、島崎先生から「蘇生にはまだまだ解明されていない部分が多いが、アイデアひとつで調べたり解明できるものもあるので、今後も治療の発展のために努めてまいりたい」とのお言葉を述べられ、講演は終了となりました。
最後に今回の共催セミナー座長をお勤めいただいた井上先生、ご講演いただいた島崎先生にこの場をお借りして御礼申し上げます。
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