セミナー情報

IMI WEBセミナー「蘇生後ケアと集中治療 ~瞳孔記録計の臨床使用例~」ご報告

  • 掲載:2024年01月
  • 文責:カスタマーソリューション推進部
IMI WEBセミナー「蘇生後ケアと集中治療 ~瞳孔記録計の臨床使用例~」ご報告

2023年12月12日(火)、IMI WEBセミナーを開催いたしました。

「蘇生後ケアと集中治療 ~瞳孔記録計の臨床使用例~」と題し、前半の宍戸肇先生からは心停止後症候群患者において、ガイドラインでは予後評価がどのように提案されているのか、TTM(体温管理療法)の実際と定量的瞳孔測定を使用した予後評価について、後半の野坂宜之先生からは集中治療領域で自動瞳孔計をどのように使用しているのか、実際の運用例を用いてご講演いただきましたので、ご報告申し上げます。

IMI WEBセミナー
日時 :

2023年12月12日(火)18:30~19:30

会場 : Zoomウェビナー アイ・エム・アイ株式会社 東京本部より配信
講演① :

「自動瞳孔計(NPi-200)を用いた心停止後症候群患者の神経学的予後評価」
宍戸 肇 先生
香川大学医学部附属病院 救命救急センター 助教

講演② :

「NPiのICUにおける実際の運用」
野坂 宜之 先生
東京医科歯科大学大学院 生体集中管理学分野 講師

座長 :

黒田 泰弘 先生
香川大学医学部・医学系研究科 救急災害医学 教授

座長:黒田 泰弘 先生
座長:黒田 泰弘先生
演者:宍戸 肇 先生
演者:宍戸 肇先生
演者:野坂 宜之先生
演者:野坂 宜之先生

まずはじめに、宍戸 肇先生より、「自動瞳孔計(NPi-200)を用いた心停止後症候群患者の神経学的予後評価」と題して、心停止後症候群(以下:PCAS)患者に対する自動瞳孔計の役割について自験例などを交えながらご講演いただきました。

神経集中治療とは

神経集中治療とは重症の脳・神経疾患に加えて、疾患の種類にかかわらず二次性脳障害を起こしうる病態に対して脳指向型全身管理を実践し、神経学的転帰改善を目指した集中治療である。
脳はブラックボックスであり、頭蓋内評価をどうするかが重要である。自動瞳孔計をはじめ、様々なデバイスを駆使【Multi Modality Monitoring ( MMM ) 】し、脳の状態を客観的に評価することが神経集中治療の第一歩である。

自動瞳孔計と瞳孔反応評価

ペンライト法による評価は主観的になり、検者間で評価に違いが生じる。一方検者を問わず客観的に評価できるのが自動瞳孔計である。自動瞳孔計は意識障害あるいは鎮静患者に対して検者を問わず、ベットサイドで短時間に簡便かつ非侵襲的に施行することが可能である。
測定項目は瞳孔径(最大/最小)、瞳孔収縮率、収縮速度(平均/最大)、拡張速度、反応時間といった 7 つのパラメーターとそこから算出される神経学的瞳孔指標 ( NPi : Neurological Pupil index ) を算出する。NPi は 0-5 で表示され、3 未満を異常と評価する。ただし NPi の算出アルゴリズムは未発表であるため数値の解釈には注意が必要である。

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香川大学医学部附属病院救命救急センターにおける自動瞳孔計の使用目的

  • 心停止後症候群 ( PCAS : Post Cardiac Arrest Syndrome ) の重症度評価と神経学的転帰予測
  • 脳ヘルニアの早期察知
  • 頭蓋内圧亢進状態の評価
  • 頭蓋内血腫量の推定 など

High quality TTM とは

High quality TTM とは PCAS 患者に対する Targeted Temperature Management ( 以下 : TTM ) の有効性を高め、TTM 実施標準化を目的として提唱された概念である。今回 High quality TTMの重要性を解説し、PCAS 患者に対する香川大学医学部附属病院救命救急センターでの取り組みや治療プロトコルについて紹介した。

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PCAS患者に対する重症度評価と神経学的転帰予測を行う意味

実臨床において、PCAS 患者の多くはその後生存できない、あるいは神経学的転帰不良で生存するという現状がある。PCAS 患者に神経学的予後予測を行う意義は、以下の点で重要である。

  • 適切な治療戦略の確立
  • 患者家族への現実の説明
  • Withdrawal of life-sustaining therapyの決断

神経学的予後予測

PCAS 患者の神経学的予後予測として、瞳孔反応は重要な重症度評価の一つである。ただし、単一の予後評価項目のみで判断してはいけない。特に、治療制限を考慮する予後評価は自己心拍再開 ( ROSC : return of spontaneous circulation ) 後 72 時間以内に行うべきではない。

神経学的予後予測における自動瞳孔計の位置付け

JRC 蘇生ガイドライン 2020 において 「 ROSC 後に昏睡状態にある成人の神経学的転帰を予測するために、ROSC 後 72 時間以降に定量的瞳孔径測定を使用することを提案する」 ( 弱い推奨、エビデンスレベル : Grade 2C ) と記載されており、自動瞳孔計はエビデンスとしても必要かつ標準的になってきている。

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香川大学医学部附属病院救命救急センターにおける自動瞳孔計の使用経験

PCAS 患者の NPi の経過や転帰などについて自験例を検討した結果

  • 来院時 NPi = 0 は全例転帰不良であった
  • 転帰良好例は転帰不良例に比べ、有意に ROSC 後 NPi が高値であった

Take Home Message

最後に、以下の通りまとめられました。

  • 自動瞳孔計により PCAS 患者の予後予測が高い特異度と低い偽陽性率で早期に推測できる可能性がある
  • PCAS 患者の神経学的転帰不良予測因子として ROSC 後48時間後の瞳孔収縮率 ( PLR : Pupillary Light Reflex ) < 13% および ROSC 後48時間後のNPi < 2.4 が報告されている
  • 神経学的転帰良好例は転帰不良例に比べ、有意にROSC 後の NPi 高値であった
  • あくまで瞳孔反応という 1 つの側面からの評価であり、現時点では最終的な神経学的予後判断は ROSC 後 72 時間以降に多角的な評価の上行うべきである

後半は、野坂 宜之先生より、「NPiのICUにおける実際の運用」と題して、東京医科歯科大学病院では「自動瞳孔計はICUの看護師が中心に使いこなされており、自動瞳孔計の認知度が上がることにより、瞳孔所見の立ち位置が上がった印象がある。」と前置きされ、自動瞳孔計の普及への取り組みや、現在の運用方法などについてご講演いただきました。

自動瞳孔計の優位性は既に確立している

  • 従来法では検者間のみならず同一検者でも測定結果にバラツキが発生
  • 自動瞳孔計を用いることで検者によるバラツキがなく、客観的に測定が可能
    • 正確性の向上:瞳孔所見が、心拍数やSpO2などのバイタルサインと同等の信頼性を獲得
    • 評価の標準化により経時的評価が可能となり、経時的評価が意味のあるものになる
    • 報告・情報共有・医師の指示の明確化
  • 対光反射が「ない」ことを客観的に示す利点
    • 脳死判定

またCOVID-19患者に対しての有用性についてもご自身のご経験をもとにお話しされました。

自動瞳孔計は普及していない

  • スタッフへの教育不足
  • 業務手順の整備不良
  • アクセス不良

東京医科歯科大学病院では、2021年4月からNPi-200の運用を開始するにあたり、上記3点の改善に注力し、特に瞳孔評価を日々観察されている看護師の視点を意識して使用環境の整備を進められたとのことでした。

スタッフ教育

導入前より、必要性・重要性・使用方法・使用対象患者の設定・測定頻度・記録方法・報告基準などについて15分の動画を用いて教育を行った。

業務手順の整備不良

  • 対象患者と測定頻度などを決定
  • 使用方法や、結果の解釈に関するポスターを作成し、機器の横に配置
  • 看護師の業務負担を考慮し、記録の入力が簡素化できるよう、NPiとSizeの2つの記録を指示し、重症部門システム内へ2つの項目を追加作成

アクセス不良

  • 各病棟の中央に充電ステーションを配置
  • 患者ごとに使用が必要なスマートガード(備品)を定数化

自動瞳孔計の導入直後と比べ、使用頻度は増加したものの、平均2回/日程度の使用頻度にとどまっていたため、看護師に使用頻度を上げるためのアンケート調査を実施され、「数が足りない」、「電子カルテへの結果の記載が面倒」などの回答が多かったようです。
全病室に自動瞳孔計を配備することは予算面で非現実的だったため、使用頻度の改善に向け、電子カルテへの自動入力が整備されたそうです。ご講演では自動入力システムの概要ついてもご紹介いただきました。

まとめ

  • 瞳孔の測定において、自動瞳孔計の優位性は既に確立している
  • スタッフ教育、業務手順の整備、さらに病棟における必要な物品へのアクセス改善が自動瞳孔計の導入・使用定着化の鍵である
  • 全計測結果の電子カルテへの自動入力は、業務効率の改善や誤入力の回避など医療の質向上のみならず、decision makingの根拠となる。ひいては研究応用まで発展性がある
  • 自動瞳孔計のさらなる臨床普及のために、医師の教育、そして医療経済面での妥当性の評価が今度の課題だと考えている

前半、後半の内容ともに、自施設での経験などを交えてお話いただき、とてもわかりやすく、学びの深まる機会となりました。
最後に、スムーズにセミナーを導いてくださった座長の黒田先生、素晴らしいご講演を頂いた宍戸先生、野坂先生に心より感謝申し上げます。


弊社では、【神経モニタリング】をはじめ、【脳神経蘇生】【神経集中治療】に関する学術情報のご提供を目的とした会員制サイトを設けております。脳波計(Arc Essentia、NicoletOne)、瞳孔記録計(NPi-200)の要約付き文献リストのご提供や、これまでの学術集会での共催講演の動画配信も行っています。

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