MONNAL T60 ベンチレータ
医療法人南労会 紀和病院 慢性呼吸器疾患看護認定看護師 白石菜保子さま、2F東病棟看護師長 中山カヨ子さま
- 掲載:2019年05月
- 文責:レスピラトリ・ケア部
慢性呼吸器疾患看護認定看護師 |
白石 菜保子(しらいし なほこ)さま |
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2F東病棟看護師長 |
中山 カヨ子さま(なかやま かよこ)さま |
[ 医療法人南労会 紀和病院 webサイト ] http://www.nanroukai.or.jp/ |
まずは、医療法人南労会 紀和病院についてご紹介ください。
[ 中山さま ] 当院は医療療養型病棟を有する地域密着型の中規模病院です。急性期一般病棟54床、回復期リハビリテーション病棟54床、障害者施設等一般病棟51床、地域包括ケア病棟45床、緩和ケア病棟14床、医療療養病棟58床、HCU4床を有し、急性期から慢性期までの病床を有効に利用してシームレスな医療ができる体制を構築しています。
ホームページの病院理念には「私たちは命の輝き(QOL)を大切にする医療・介護を行います」とありますが、達成するために普段からどのようなことに取り組まれていますか?
▲中山 カヨ子さま
[ 中山さま ] 例えば2F東病棟で言いますと、寝たきりの患者様が多いので「普通の人だったら当たり前にできること」ができない方がほとんどなんです。
[ 白石さま ] だからこそ、日常生活の中で患者様の尊厳を守りつつ、スタッフみんなで力を合わせてケアをするように心がけています。
[ 中山さま ] ベッドの上で過ごしている1日って長いと思うので、普通だったらお散歩に行けない人でも、何とか車椅子を工夫してお散歩できるようになったり、外の風にあたるだけでも、ちょっとした楽しみを持ってもらえたらと、そういう所を大切にしています。
[ 白石さま ] この病棟の対象患者様は、ここが終の住処なんですよね。なので、最後まで穏やかに毎日を過ごしていただけるようにと考えています。
ところで、白石様は「慢性呼吸器疾患看護認定看護師」でいらっしゃいますが、これはどのような認定資格なのでしょうか?
▲白石 菜保子さま
[ 白石さま ] そもそも認定看護師には[実践、指導、相談]という3つの役割が期待されていますが、施設によって求められる活動は異なります。慢性呼吸器疾患看護は認定看護の20番目に新しく新設された分野です。私は和歌山県で第1号なんですよ。まだ認知度が低いからかもしれませんが・・・。
当院は地域密着型の施設ですので、急性期病院から転院して来られる長期人工呼吸器使用患者様を受け入れられるように呼吸器ケアに関する勉強会を開催したり、現場において実践指導をしています。当院にも同じ分野の認定看護師が何名かいてくれたらな、と思います。
[ 中山さま ] (深く頷き)うん、思います。
[ 白石さま ] 対象の患者様はとても多いんですよ。
この資格をお持ちの方は、今は何人くらいいらっしゃるのでしょうか?
[ 白石さま ] 2018年までの7期で293名です。私は2期生ですが、県内にはまだ2名です。
「慢性呼吸器疾患」という名前の認定資格なので、慢性期に特化した資格と考えて良いのでしょうか?
[ 白石さま ] 例えば、慢性の患者様が急性増悪で運ばれて来るケースも有りますから、呼吸器疾患看護は慢性と急性を区別するべきではないかもしれません。日本看護協会も認定看護師制度の再構築を打ち出していまして、2020年には「慢性呼吸器疾患看護認定看護師」は「呼吸器疾患看護認定看護師」となります。資格の名称においても「慢性」と「急性」を区別する必要がなくなるということです。
この認定資格を活かして、院内ではどのような活動をされていますか?
[ 白石さま ] 一般的な呼吸ケアサポートチーム(RST)の活動とは、患者様が人工呼吸器から離脱することを目的としています。紀和病院には侵襲的陽圧換気(IPPV)の患者様はほぼいらっしゃいませんし、非侵襲的陽圧換気(NPPV)から離脱する患者様もほぼいらっしゃいません。ですので、「独りぼっち慢性RST」というのをやっています。
それは、月に2回、私一人で人工呼吸器を使用している患者様の観察、生命維持装置の確認、VAP予防の遵守などを見て回っています。本来ならばRSTとしてPT、CE、看護師、医師でラウンドしたいと思っているのですが、当院はIPPV症例が少ないこともあり設立に至っていません。そこで、認定資格を取得して2年目に口腔ケアチーム(OCT)を立ち上げました。2019年6月で丸5年になります。
最初の切っ掛けは誤嚥性肺炎を予防したかったからなのですが、今は違います。色々な研究会に参加して、多くの方から様々なことを学ばせていただく内に、どんどん考えが変わってきて、障害者病棟では難しいのですが、「食べる喜び」というところも支援していきたいんです。
ですので今は食べながら誤嚥性肺炎を予防できたらいいなと思います。また、介護ケアの一環として2年前から口腔ケア事業に取り組んでいます。地元の医師会、歯科医師会、保健所と私がメンバーで各施設を回っています。そこでは、口腔ケアとポジショニングの座学と演習を全3回くらいでやっています。
「口腔ケアチーム」とは一般的なものなのでしょうか?
[ 白石さま ] 私は、口腔ケアは最も優先すべきケアのひとつだと考えているのですが、残念ながら認識度は高いのですが優先度は低い、というのが現実です。なので口腔ケアチームが存在していないと実際にケアを行うことは難しいと思います。当院には歯科衛生士が2名いますので、とても助かっています。また、この2F東病棟もとても頑張ってくれていて、日勤体で1日1回の口腔ケアを行い、チェック表に記入してくれています。私も呼吸器疾患患者様の口腔ケアを担当しています。
口腔ケアをこれから始めようと考えている病院さんには、ぜひ当院にご連絡いただければと思います。
ここで、MONNAL T60についてお聞きしたいと思います。
白石さまと中山さまがMONNAL T60をお知りになられた経緯を教えてください。
[ 中山さま ] 長く使用している人工呼吸器が有るのですが、その人工呼吸器でトラブルが続きまして、修理に出しても古いモデルで部品が無く、新たな人工呼吸器を購入することになりました。でも、何種類もの呼吸器を導入するとスタッフも混乱するので、購入してから後悔しないように様々なメーカーから説明を受けました。その中にアイ・エム・アイのMONNAL T60があったんです。
[ 白石さま ] どこで初めて見たのかはっきりとは覚えていないのですが、私は学会で見たのかも。でも、見た瞬間に一目ぼれでしたね。小さくて薄いし。新しい人工呼吸器を選定するためのメーカー説明会は、「障害者病棟における次世代人工呼吸器の選定」を目的としていましたので最新式の人工呼吸器を取り揃えてもらったのですが、その中でもMONNAL T60は、コンパクト!搬送性と操作性が良い!軽い!で当院の要望にぴったりでした。
▲ベッド移動の様子
[ 中山さま ] 病棟から検査に行くにはエレベーターで1階まで降りないといけないのです。そうすると、人工呼吸器を一度外してアンビューを揉みながらベッドを運ぶ。検査中に使用する人工呼吸器はまた別のスタッフが持っていかないといけませんでした。さらにルート交換となると、どこに何を繋いだら良いのかなど非常に煩雑な作業でした。でもMONNAL T60を見た時に、ベッドに引っ掛けられるという手軽さと本体の軽さ、シンプルな回路が非常に良かったです。
[ 白石さま ] そうですね、今までは人工呼吸器を運ぶスタッフが1名、ベッドを運ぶスタッフが2名とアンビューするスタッフが1名の計4名必要だったのが、たった2名のスタッフでできるようになりました。
[ 中山さま ] 今回は呼吸器メーカー8社から説明を受けましたが、MONNAL T60以外の説明は頭に入らなかったですね。心が決まっていましたから。
MONNAL T60のおかげで、障害者病棟ができて14年になりますが、去年の4月には患者様を車椅子に乗せて、初めてお花見に行くことができたんです。
[ 白石さま ] 去年のお花見は普通の車椅子とベッドを使用しました。せっかくMONNAL T60が採用になったのに当院の車椅子では搭載できず、結局はトロリーボンベを持ち運ばなければなりませんでした。その後も長期TPPV患者様が気軽で安全に屋外の散歩を楽しめるリクライニング車椅子を探していたところ、アイ・エム・アイのホームページに掲載されている「ユーザーの声」で黒石厚生病院さんの車椅子の情報を見て、「探し求めていた車椅子はこれだ!!」と思いました。
▲専用車椅子は患者様のご家族でも安定した移動が可能
その車椅子は、呼吸器を背面に、酸素ボンベは座面の下に収納するので、車椅子を押しながらどこへでも行けるんです。すぐに黒石厚生病院さんに連絡させていただいたのですが、石原院長自ら色々な資料を送ってくださって、先生には本当にお世話になりました。
その甲斐あって、今年はMONNAL T60専用車椅子で4名のTPPV患者様とお花見散歩を楽しむことができました。
▲お花見散歩の様子
最初にMONNAL T60を使用された時はどのように感じられましたか?
[ 中山さま ] 換気設定も実測値もアラーム設定値も、一目で解るということが良いと思いましたね。
[ 白石さま ] ひとつの画面に見たい情報が全部出ていますからね。そろそろ導入して1年になりますけど、操作方法がシンプルでみんな使い慣れています。
MONNAL T60には[PS-Pro]という自動換気モードがありますが、どのような使い方をしているか教えていただけますか。
[ 白石さま ] 慢性期で落ち着いてきてその患者様の呼吸リズムが解ってくると、夜間のレム睡眠期に換気量も呼吸数も低下してしまう患者様が結構いらっしゃるんですよね。そんな時はまさにPS-Proですね。PS-Proは目標Vt(換気量)を設定すると吸気圧を自動調節してくれますし、呼吸が止まってもサポート回数で設定した呼吸回数分はPSVで換気されます。
サポート回数は通常のバックアップ換気とは違うので、夜間のアラーム音に悩まされることもありません。
他の人工呼吸器のPSVではバックアップ換気が入ってしまうのでどうしても夜間はアラーム音が煩わしいんです。
PS-Proの最大の魅力は、自発を活かしながらアラームを鳴らさずに最小の呼吸を保証してくれるところですね。
▲ 経皮血液ガス測定装置 TCM5
あと、PS-Proではないんですが、MONNAL T60に乗せ換えたおかげで自発呼吸が有ることが解った患者様がいらっしゃるんです。以前使用していた人工呼吸器は旧式だったのでトリガー感度が鈍く、波形では完全同調にしか見えなかったのですが、MONNAL T60だと自発をトリガーしてしまうんです。自発がないと思っていたのでずっとCMVで換気していました。過換気ではないか調べるために血ガス計測したかったのですが、動脈血を採取するのは少し躊躇していました。
そうしたら、アイ・エム・アイの営業さんがTCM5(経皮血液ガス測定装置)を持って来てくれて、すぐに測ってみたらCO2が飛んでいることが解りました。その後で実際に血ガスを採取しても結果は同じでした。
ほぼ誤差ないです。患者様の適正な換気設定を判断するためにとても有効なツールだと思いましたね。
やはりMONNAL T60は最新なので色々なことに気付かされます。今まで鳴らなかったアラームが鳴るんです。なので、旧式の人工呼吸器と同じ換気設定では上手くいかないこともあり、調整しながらやっています。
あとは最近、急性期から慢性期に他院から転院された患者様がいまして、離脱も試みたいけど、まずはPS-Proを使いたいなと思っています。
自動吸気圧調節モード[PS-Pro]とは?
換気量保証型のPSVです。過去3回分の換気を参考に吸気圧を自動調節します。患者さんの自発がない場合は強制的なPSVを、自発がある場合は同調した本来のPSVにより患者さんの呼吸をサポートします。強制換気もPSVで行われるため、患者さんの自発呼吸を阻害することがありません。
患者さんの呼吸状態が変化するたびに換気設定を調節する必要がないため、手術後のウィニングや夜間に換気量・呼吸数が低下する患者さんの換気に最適です。
1人での呼吸管理は難しく、病棟であればチームで取り組むことだと思うのですが、皆さんで特に取り組まれていることがあればお教えください。
[ 白石さま ] 先ほどもお話しした「独りぼっち慢性RST」なんですが、いつも病棟に現れるのでスタッフが私に色々なことを訊いてくれるんです。現場の生の声というか、日頃の悩みにタイムリーに相談に乗れるのがとても嬉しいです。あと、中山師長さんが「白石さん頼りにしてるで」とか「いつもありがとうね」と言ってくださるのも何より嬉しくて。コツコツと地道にやってて良かったなと思います。
みんなで取り組んでいると言ったら、カフ上部吸引とか、カニューレの見直しですね。きちんと人工呼吸器管理をしたかったから、みんなで様々なカニューレを試したり、どうしても抜けてしまう患者様のためにオーダーメイドで特注カニューレを作ったり。
ただ、カニューレのシール性が高まると、気切孔周囲から物凄く分泌物が漏れ出してしまうんです。対策のために何かいい物はないのかな?と探していたら、呼吸ケア・リハビリテーション学会でカフ上部吸引の専用機を見つけたんです。それはみんなと取り組んで看護研究になったんですけど、ほんとに素晴らしい効果があるという結果になりました。
[ 中山さま ] カフの件では白石さんに病棟学習会を開いてもらったりもしました。
模型を用いて模擬唾液を使用してやってみて、カフ上部に溜めるんです。それでカニューレによってどのように引けるかとか、試しました。
[ 白石さま ] 模擬でも解ることは色々有ったけど、模擬はやはり模擬で、実際に患者様の体内では引き具合は人によって違うし、すぐ壁に当たってしまうんですよ。なんでやろ?なんでやろ?と思って、色々な人の意見を吸い上げて、結局、私達は自分達で商品を開発してしまいました。カフ上部吸引にアダプターを付けて、ピンホールの穴を開けたような物を接続するだけで、抜群に痰が引けるようになりました。これこそチームで試行錯誤した成果だと思います。
チームの結束力を高めるために何か工夫していることはありますか?
[ 中山さま ] 病棟に良い雰囲気を作りたくてスタッフお揃いのTシャツを作りました。
夏は院内がとても暑くて、50人の患者様のおむつ交換やお風呂に入れるのも汗だくなんです。なので、お揃いでタオルか何か作ろうか?という話が出たのですが、結局Tシャツにしようよということになり原案から作成しました。
これがそのTシャツで、バックプリントはインターネットで「フィッシュ!哲学」を検索した時の絵と文字を拝借しました。フロントの絵は、スタッフの娘さんが手描きで描いた鮟鱇(あんこう)の絵です。これを着るのは、夜勤のおむつ交換時と日勤帯は入浴介助の時に着ていいよということになっています。
[ 白石さま ] メッシュですぐ乾くし、とても涼しいんですよ。
[ 中山さま ] Tシャツ自体も何種類かある中からこれに決めました。少しでもスタッフのモチベーションが上がってくれると嬉しいです。今後もこういった活動は続けていきたいですね。
[ 白石さま ] やっぱりチームの雰囲気ってとても大切ですよね。
本取材を通して、スタッフの皆さんと患者様、そして何より患者様のご家族の笑顔がとても印象的でした。
本日はお忙しい中インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
▲2F 東病棟スタッフの皆さん
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