セミナー情報

第29回日本脳低温療法・体温管理学会学術集会 教育講演
「熱中症診療の最新のトピックス:気候変動時代の熱中症対策を考える」ご報告

  • 掲載:2026年08月
  • 文責:カスタマーソリューション推進部
第29回日本脳低温療法・体温管理学会学術集会 教育講演<br>「熱中症診療の最新のトピックス:気候変動時代の熱中症対策を考える」ご報告

第29回日本脳低温療法・体温管理学会学術集会(2026年7月4~5日)にて教育講演を共催いたしました。
本セミナーでは、座長に櫻井 淳先生(日本大学医学部付属板橋病院 救急集中治療医学分野 診療教授)、演者に横堀 將司先生(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野 教授)をお招きし、「熱中症診療の最新のトピックス:気候変動時代の熱中症対策を考える」についてご講演いただきました。

教育講演
日時 : 2026年7月4日(土)
16:10~17:10
会場 : 国際医療福祉大学 東京赤坂キャンパス 3階 302号+303号
演題 : 熱中症診療の最新のトピックス:気候変動時代の熱中症対策を考える
座長 : 櫻井 淳先生
日本大学医学部付属板橋病院 救急集中治療医学分野 診療教授
演者 : 横堀 將司先生
日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野 教授
学会HP : https://jabh29.umin.ne.jp/
抄録 : ※pdfが開きます(206KB)
座長:櫻井 淳先生
座長:櫻井 淳先生
演者:横堀 將司先生
演者:横堀 將司先生

横堀先生は、熱中症診療ガイドライン2024のタスクフォースメンバーであり、担当理事としてもご活躍されています。冒頭で、医学誌「Lancet」の報告などをもとに、気候変動に伴い熱中症による健康被害は世界的に深刻化していることを解説され、熱中症について4つの項目に分けてご講演されました。

熱中症ってどんな病気?

熱中症の病態は、中枢神経(視床下部)からのコントロールを失った体温異常であり、熱の放出よりも熱産生が増加してしまい、体内にたまった熱を十分に放散できなくなる状態であること、重症化すると臓器障害を引き起こす可能性があることをご説明されました。

また、熱中症は感染症による発熱とは異なり、体温調節中枢の設定温度(セットポイント)が変化しているわけではないため、解熱薬は基本的に熱中症そのものには効果がない点についてもご解説されました。

我が国における熱中症のトレンド

日本でも平均気温の上昇や猛暑日・熱帯夜の増加が続いており、熱中症による死亡者数は年間1,500~2,000人規模に達しています。特に65歳以上の高齢者の被害が多く、暑い屋外よりも、エアコンを適切に使っていない住居内での死亡例が多いことから、エアコンの適切な利用や暑さから身を守る行動の重要性が説明されました。

また、近年は梅雨明けが早まり、暑熱順化が十分にできないまま真夏日が到来するケースが増えているため、例年以上の注意が必要であると注意喚起されました。

熱中症ガイドライン2024

2024年版熱中症診療ガイドラインでは重症度分類が見直され、従来のⅠ~Ⅲ度分類に加え、最重症群を「Ⅳ度」として新たに分類されたことについてご説明されました。

Ⅳ度は、深部体温40℃以上と重度意識障害(GCS≦8)を伴うケースで、迅速な冷却治療が必要とされます。
また、深部体温を測定できない現場での迅速な判断を支援するため、表面温度40℃以上と意識障害を組み合わせた「qⅣ度(クイックⅣ度)」も導入されました。熱中症治療で最も重要なのは早期発見と迅速な冷却であると、講演の中でも繰り返し強調されていました。
熱中症になったときにどのような冷やし方がいいのかについて、Ⅳ度の重症熱中症患者に対しては、深部体温を測ることを前提とした上で、冷水浸漬法(Cold Water Immersion)、ジェルパッドを用いた冷却、血管内冷却装置などのActive Coolingが有効であり、特にジェルパッドで冷却するArctic Sunは令和8年の診療報酬改定により熱中症に使用することが可能※1となり、労作性の熱中症に有効である可能性を示されました。

1.令和8年度 診療報酬改定(赤字は改定箇所)

L008-3 体温調節療法(一連につき)

  1. 中心静脈留置型経皮的体温調節装置を用いる場合5,000点
  2. ウォーターパッド特定加温装置を用いる場合11,000点

ウォーターパッド特定加温装置を用いる場合

[対象患者]

  • ①重症熱中症(深部体温40℃以上かつGCS8点以下の状態にある熱中症)
  • ②偶発性低体温症(深部体温32℃以下の状態にあるものに限る。)

[算定要件]

ウォーターパッド特定加温装置コントロールユニット及びウォーターパッド加温装置を用いて体温調節を行った場合に、一連につき1回に限り算定する。使用するパッド等の消耗品の費用は、所定点数に含まれる。

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001693569.pdf 令和8年度診療報酬改定 15.医療技術の適切な評価 より抜粋>

また、熱中症の早期発見を支援するため、日本救急医学会では熱中症診断支援アプリ“JoinTriage”を開発されています。
利用者が年齢や既往歴、発症状況、症状などを入力すると、熱中症の重症度を判定し、応急処置や受診の必要性を案内する仕組みです。近隣の医療機関への案内機能も備えており、一般市民が適切な行動を取るための支援ツールとしてだけではなく、熱中症発生状況のデータ収集にも活用され、熱中症の実態把握や予防対策の研究に繋がっているとご説明されました。

最後に以下のまとめ(Take Home Message)とともに、「救急医学に携わる人たちが早く患者様を冷やすことができるような環境を作っていくことも引き続き進めていきたい」と締められました。

Take Home Message
  1. 熱中症ってどんな病気?
    → 体温中枢からのコントロールを失った体温異常
  2. 我が国における熱中症のトレンド
    → 死者増加“超”災害級・高齢・非労作性・要配慮者
  3. 熱中症ガイドライン2024
    → Active Coolingの重要性・Ⅳ度の定義・適切な水分・電解質の補給:ORS※2の有効性
    2.Oral rehydration solution
セミナーの様子

厳しい暑さを迎えるにあたり、熱中症への理解を深めることができた非常に貴重な講演となりました。

最後に、座長をお引き受けいただいた櫻井 淳先生、素晴らしいご講演をしていただいた横堀 將司先生に、心より感謝申し上げます。

アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

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