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どうする? 人工呼吸器非同調 発見と対策のポイント

  • 掲載:2023年11月
  • 文責:メディカ出版
どうする? 人工呼吸器非同調 発見と対策のポイント

ヒトの肺には換気を自ら行う能力はなく、肺胞内の換気は呼吸筋の運動に依存している。
人工呼吸器は患者自身の換気能力不足を補助する装置で、呼吸筋がつくる胸腔内陰圧と人工呼吸器がつくる気道内陽圧の合力で肺胞は拡張する。
呼気は呼吸筋の弛緩と気道内陽圧の低下で受動的に行われる。努力呼吸時は、呼気呼吸筋の収縮で強制的に呼出を促す場合もある。吸気も呼気も患者の呼吸筋と人工呼吸器の同調性が重要で、タイミングがずれると呼吸筋力を無駄に使って非効率な換気になるだけでなく、肺傷害の原因にもなる。

ミストリガー

図1はプレッシャーサポート換気(PSV)で換気中の波形だが、3回の大きな換気の間に気道内圧の小さな凹み(矢印)がある。これは患者の自発吸気を人工呼吸器が認識していない状態で、ミストリガーという。
患者の吸気努力が弱い場合や、人工呼吸器のトリガー感度が鈍いことで生じる。トリガー感度を鋭敏にしても改善されない場合は、強制換気モードにする必要がある。

図1:PSV換気時の波形
矢印は人工呼吸器をトリガーできなかった自発吸気。

オートトリガー

自発呼吸がない状態で強制換気している場合に、実際の換気回数が設定値を上回ることがある。自発呼吸と無関係にトリガーされている状態で、オートトリガーと呼ばれる。放置すると過換気になる可能性がある。
オートトリガーは、回路リーク・心拍動による気道内圧振動・結露水貯留・痰貯留などで生じる。対処は原因の除去だが、心拍動が原因の場合はトリガー感度を鈍くする必要がある。一般に、トリガーはオートトリガーしない範囲で最も鋭敏に設定する。

二段呼吸

図2はPSVで換気中の気道内圧波形で、続けて2回の吸気波形が観察される。吸気の終了基準を満たしたため人工呼吸器は吸気を終了したが、患者は自発吸気を続けていたので再度トリガーされて2回目の送気(矢印)が開始されたものである。これを二段呼吸という。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者で生じやすい。呼気トリガー値(ESENS)を小さくして吸気時間を延長させることや吸気立ち上がり速度を抑えることで対処する。対応が難しい場合はプレッシャーコントロール換気(PCV)に変更する。

図2:PSV換気時の二段呼吸
患者の1回の吸気の間に、人工呼吸器が2度の送気を行っている。

リバーストリガー

二段呼吸と似た波形にリバーストリガーがある。これは、強制換気による気道内圧上昇や肺拡張が引き金となって自発呼吸が誘発されることをいう。
自発呼吸がちょうど消失する程度の麻薬投与時に生じやすい。麻薬の投与量を減量して自発呼吸モードにするか、増量して調節換気にすることで対処する。

PCVの非同調

図3はPCVの非同調の例である。フロー波形の実線の◯印は呼気から吸気への転換点だが、呼気フローが流れているうちに次の吸気が開始されている。これは呼気終了時の肺胞内圧が設定した呼気終末陽圧(PEEP)より高いことを意味し、内因性PEEPまたはauto-PEEPが発生していることを示す。
内因性PEEPの値を知ることは難しく、原因不明の循環抑制の原因にもなる。可能なら呼気終了時のフローがゼロとなるように呼気時間を延長させる。
点線の◯印は吸気から呼気への転換点だが、吸気フローが続いている間に呼気相に移っている。これは時定数が大きい(気道抵抗または肺コンプライアンスが大きい)肺胞が十分拡張していないことを意味し、肺胞間の不均等換気の原因となる。可能なら吸気終了時のフローがゼロとなるように吸気時間を延長させる。
呼気時間と吸気時間をともに十分確保すると、換気回数が減少して二酸化炭素呼出に支障を生じる場合がある。これは患者の肺で適正換気を望むことに限界があることを意味している。
内因性PEEPの発生・不均等換気・動脈血二酸化炭素分圧正常化のバランスを見ながら設定を微調整する。

図3:PCV換気時の吸呼気時間不足の概念図
実線の◯印は呼気時間不足、点線の◯印は吸気時間不足を表す。いずれもフローが基線に戻っていないことが特徴。

VCVの非同調

図4は量規定換気(VCV)の気道内圧波形である。
本来は点線のような波形だが、実線のように吸気時に低下する場合は自発吸気があることを意味する。
図4の程度は許容されるが、それ以上の大きな低下や陰圧になる場合は人工呼吸器の供給吸気流量が大きく不足している。自発吸気との同調性が良いPCVかPSVに変更すると改善する。

図4:VCV換気時の気道内圧波形
自発呼吸がある場合(実線)は、自発呼吸がない場合(点線)に比べて吸気時の気道内圧が低下する。

人工呼吸器との非同調発見のポイントについてグラフィック波形を中心に解説したが、最も大事なことは患者さんをよく診ることである。
胸郭や上腹部の動きのほか、胸鎖乳突筋や前斜角筋の収縮で吸気のタイミングや強さがわかる。肋弓下の触診で横隔膜の動きが間接的にわかることもある。腹筋群の視触診で呼気努力の有無や呼気のタイミングがわかる。
これらの所見を人工呼吸器の動作と併せて評価することで、非同調だけでなく、換気量や吸気圧設定の適切さのほか、呼吸困難の有無も明らかとなる。このようなアナログで職人的な診断はデジタルやグラフィック全盛の現在では流行らないかもしれないが、人工呼吸管理で最も重要なことの一つではないかと思う。

アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

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