瞳孔記録計NPi-200「NPiによって早期発見・早期治療介入できた症例」
社会医療法人警和会 大阪警察病院
看護師 仁科 典子さま、林 実美さま、前田 綾さま
- 掲載:2024年03月
- 文責:カスタマーソリューション推進部
副看護部長 |
仁科 典子さま |
---|
3F 東病棟 師長 |
林 実美さま |
摂食・嚥下障害看護認定看護師 | 前田 綾さま |
[ 社会医療法人警和会 大阪警察病院 webサイト ] https://www.oph.gr.jp/ |
今回、大阪警察病院様で瞳孔記録計 NPi-200*(以降NPi-200)を用いて、患者様の異常の早期発見・早期治療介入できた事例について、ご使用されていた看護師様に状況をお伺いしました。
*瞳孔記録計 NPi-200は、瞳孔に光を当てた際の瞳孔径・収縮率・収縮速度など、7つの測定パラメータから神経学的瞳孔指数〔NPi:Neurological Pupil Index〕を算出する測定機器です。
今回、NPi-200を使用して、早期発見・早期治療介入できた際の状況を教えてください。
[ 林さま ] 当該事象の患者様は、新人の看護師が受け持ちをしており、報告があったというよりは、何回もNPi-200を使って測定していたので、何か困っているのかなと思い、リーダー看護師が声をかけたことにより発見に至りました。
[ 前田さま ] 当日、私が夜間帯でリーダー看護師をしており、新人の担当看護師が、何回もNPi-200を使って測定しているのを見て「どうしたの?」と確認したら、担当看護師が数値を報告してくれ、私もその数値はおかしいと思いました。もともと瞳孔に左右差がでているとの申し送りはあったのですが、担当看護師と話し「左右差が広がっているから先生に言った方がいいね」となりました。
[ 林さま ] 新人看護師なので、自分が間違っていると思って何回も測定していたみたいです。
看護師の報告後に先生は動き始めましたよね。
[ 前田さま ] 当直時間帯で主治医が不在だったため、どのような方針にするか当直医に確認してもらい、再度手術に行くことになりました。
術後、NPiの左右差は消失し、正常値に戻りました。
もし、NPi-200を使用していなかったらどうでしたか?
▲林 実美さま
[ 林さま ] もう少し発見が遅れていたと思います。日勤帯に左右差があるとの報告はしており、先生の判断として、様子観察でいいという話になっていました。今までのように、ペンライトを使っていた場合、今回の時点で左右差があると思ったとしても、勤務交代があったのもあり「先生は様子観察でいいって言っていたなあ」という感じになり、今回の発見した時間よりも、少し遅れての報告になっていたと思います。
NPi-200を使用して、よかったなと感じる点などはございますか?
▲前田 綾さま
[ 前田さま ] 今回の事例もそうですが、数値で多角的に評価できるため、みんなが一緒の視点で評価できます。瞳孔対光の反射があるかないかがわかりづらい患者様もいますが、それを数値化してくれる点がいいなと思います。新人などの経験値が少ない看護師でも、数値で評価し、数値を見て異常に気づくことができ報告してくれるため、異常が発見しやすいのかなと思う点が、導入して良かったと思います。
急変時のデータを弊社がフィードバックさせていただきましたが、その際に、新たな気づきやプロトコルの変更などされましたか?
[ 林さま ] プロトコルは作成段階だったので、特に変更はしていませんが、今回はいい事例だったので参考にさせていただきました。救急外来や救命ICUなど、脳外科病棟に入室する前の段階においても、継続して数値を観察できるように、救急外来や救命ICU入室時にも測定した方がいいのではないかと、救急外来や救命ICUの師長とは話合いました。
※データフィードバック内容
異常を発見された時点より、4時間前から数値が低下していきていること。入室時(初期値)からの数値の変化を捉えることでさらに早期発見につながる可能性が高いことをフィードバック。
計測時期 | NPi(神経学的瞳孔指数) | 瞳孔径(mm) | 所見 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
左 | 右 | 左右差 | 左 | 右 | 左右差 | ||
病棟入室時(初期値) | 4.5 | 4.6 | なし | 3.2 | 3.3 | なし | – |
① 異常時の4時間前 | 3.2 | 4.3 | 1.1 | 3.7 | 2.7 | 1 | 入室時と比較して 左のNPiが1.3低下 |
② 異常発見時 | 1.2 | 4.3 | 2.1 | 4.8 | 3.3 | 0.7 | 左のNPiは更に低下 瞳孔径はやや左右差あるものの、散大等なし |
【結果報告】
瞳孔径においても、左右差は認めるが、異常発見の判断材料としては難しい。
NPiは異常発見時の時点で確実に低下してきているが、異常発見時の4時間前の時点でも、NPiの左右差が0.7以上あること、入室時より明らかに低下してきているため、NPiの継続的な観察によりさらに早期発見につながる可能性あり。
4時間毎の測定ではなく、低下の可能性がある方は、2時間毎の測定によって、さらなる早期発見につながる可能性あり。
NPi-200はどの診療科でご採用いただいていますか?
[ 林さま ] 脳外科、神経内科中心で、院内ICUもあり、全科術後の深鎮静で挿管している方に使用しております。過去には救命科では脳死判定で使用しました。
現在どのような患者様にご使用いただいていますか?
[ 林さま ] 現在は、脳外科疾患、神経内科疾患や、救命科から来られる頭部外傷、意識レベルに異常のある患者様に使用しています。また、院内急変の心肺停止症例で脳にダメージを受けたと考えられる患者様にも使用しています。
[ 前田さま ] 術後の鎮静下の患者様や、低酸素脳症の方などにも使用しています。
特に先生の指示がなくても看護師が使用した方がいいかなと思えば使用しています。
どれぐらいの頻度で測定されていますか?
[ 林さま ] バイタルサインの測定指示に従って測定しています。2時間毎や4時間毎のように、バイタルサインと同様に測定しており、その他、気になった時にも測定しています。
初めてNPi-200を使用された時、どのような印象を持たれましたか?
[ 林さま ] 機械の説明を聞いた時よりは、簡単な印象でした。
[ 前田さま ] 最初は、患者様が開眼できず、測定できないためリスキャンになった時には手間を感じましたが、コツをつかめば問題なく測定できるようになりました。
NPi-200をご採用いただいた理由は何でしょうか?
[ 林さま ] 私事ではありますが、もともと循環器内科で勤務しており脳外科病棟に移動した時に、瞳孔の微細な変化は重症となる兆候があるにもかかわらず、蛍光灯の明るさなどで瞳孔測定が左右されてしまうことや、微細な変化は熟練しないと判断できないという経験があったので、このお話をいただいた時に飛びついた感じはありました。私自身もすごく苦労していたので「そんないいものがあるんだ!!」という思いで使わせていただきました。
NPi-200の導入時に何か苦労されたことなどはありますか?
[ 前田さま ] 苦労はあまりなく、比較的みんな積極的に使ってくれていました。
[ 林さま ] スタッフはもともと苦労していたのかなと思います。1番は、「患者様は仰臥位で寝ているので、蛍光灯などの少しの光の影響によって測定が左右されて、見づらかったり、微細な変化に気づけず、完全に瞳孔の左右差が生じてから医師に報告している」という経験がみんなにある程度あったので、病棟では、導入時に機械を使いたくないなどの話はありませんでした。
私ではどうしようもないところの話であり、費用面が高いところがありますが、それ以外は問題ありませんでした。
プロトコルなども認定看護師が頑張って作ってくれました。
先生の受け入れはいかがでしたか?
[ 林さま ] 最初は、医師への報告数が多くなるのではないかと思い、部長先生などには「微細な変化による報告が多くなるかもしれません」との話はしていました。しかし、そういうことも特にありませんでした。NPi-200に対し、良くも悪くもないと思っていた先生の一人が、導入時には積極的ではなかったですが、最近は「血管内治療中にNPi-200を使いたい」と話をされるようになったので、良さは少しずつ浸透しているのかなと思います。
▲仁科 典子さま
[ 仁科さま ] 何よりも集中治療センター長や脳外科部長先生の後押しや触れ込みから、救命科の安全管理の先生なども是非使っていきたいという話がありました。安全管理という視点から考えると、ペンライトによる瞳孔測定は、個人の能力・技術の差があからさまに生じます。ペンライトで測定するリスクよりは、だれが測っても同じ数値がでる機械は、数値で表示されるため、安全で、現場にとってはすごくありがたいものです。
スタッフは、目新しいものに関心は大きいので「とにかく使ってみたい」ということと、何よりもそれが、私達が異常の早期発見をし、患者様のご家族に一番いい影響を与えるという意味では、看護師たちもやりがいを感じながら日々ケアに励んでくれているのではないかと思います。
ペンライトは電池がなくなれば薄暗くなったりもするため、様々な側面からも、このような機器が使えることはありがたいと思います。
NPi-200を導入いただいて、どのような変化がありましたか?
[ 林さま ] 報告などを聞いて、1年生などが、自信をもって報告できています。数値の報告になるので「何か変化あるかもしれない」とかではなく「〇〇mmと〇〇mmだから瞳孔の左右差でています」や「NPiが〇〇になっています」など、報告がスムーズになっているのではないかと思います。ペンライトを使用していた時は、自信がなかったら「リーダーさん見てください」「ちょっと見てください」などの流れになっていましたが、今は数値ででているので「異常な数値をしっかりと報告しやすくなっているな」とスタッフを見て思います。
NPi-200は看護師の皆様や患者様にお役たちできますか?
[ 前田さま ] 必要な患者様に先生から指示が飛んできます。「NPiが3以下なら、左右差0.7以上あれば報告してください」との指示がある場合、数値も見るだけでなく、異常な数値ではないかという点も意識して見るようになってきています。
[ 仁科さま ] 感染面においても気をつけている点もあります。
[ 前田さま ] スマートガードは使い回さない。1患者様、1スマートガードにしています。機械は2台しかないので、機械は使い回しにはなりますが、測定後の消毒を徹底しています。患者様に直接触れるところは使い回さないようにしています。
NPi-200に何か要望などはございますか?
[ 林さま ] 画面が英語表記なので、日本語表記の方がイメージしやすいかなと個人的には思いますね。
最後に、社会医療法人警和会 大阪警察病院についてご紹介ください。
[ 仁科さま ] 当院のポリシーは、救急医療とがん医療に特化している病院で、救急に関しては、断らないというのをモットーにしています。 さらにホットラインも救命科と、脳卒中科と、循環器科の3つ抱えながら、日々救急車を受け入れていることが自慢です。院内では、集中治療室も上記の各科があり、集中治療室も多く稼働している超急性期の病院です。7000件/年の搬送数があります。
[ 林さま ] 心肺停止の搬送数は去年300件で今年はすでに400件超えています。
[ 仁科さま ] 2025年には新病院になるので、28床の集中治療室が設立され、新型モデルのNPiー300も10台ほど購入予定になっています。
貴重なお話を伺うことができました。本日はお忙しい中インタビューのご協力いただき、ありがとうございました。
大阪警察病院 施設概要
所在地:大阪市天王寺区北山町10-31
病床数:580床
診療科:消化器内科・消化器外科/糖尿病・内分泌・代謝内科/呼吸器内科・呼吸器外科/循環器内科/心臓血管外科/小児科 /乳腺・内分泌外科(乳腺外科)・(内分泌・甲状腺外科)/整形外科/リハビリテーション科/形成再建外科・美容外科/脳神経外科・脳神経内科/泌尿器科/産婦人科/耳鼻咽喉科・頭頸部外科/放射線診断科/放射線治療科/歯科口腔外科/病理診断科/麻酔科/ER・救命救急科
センター:ER・救命救急センター/がん診療センター/心臓センター/呼吸器センター/脳卒中・神経センター/外来化学療法センター/消化器内視鏡センター/手術医療センター/顔面神経・難聴センター/前立腺がん治療センター/女性骨盤底センター(ウロギネセンター)/脊椎・脊髄センター/血管内治療センター/集中治療センター/外傷センター
ウェブサイト:https://www.oph.gr.jp/
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