セミナー情報

第46回 日本集中治療医学会学術集会 教育セミナー 「嵐の目の中へ:瞳孔計による脳幹の危険状態の評価」 ご報告

  • 掲載:2019年04月
  • 文責:クリティカル・ケア部
第46回 日本集中治療医学会学術集会 教育セミナー  「嵐の目の中へ:瞳孔計による脳幹の危険状態の評価」 ご報告
日時 : 2019年3月3日(日)12:40~13:40
会場 : 第2会場 国立京都国際会館 2F Room A
演者 :

ステファン メイヤー先生

Stephan A. Mayer

アメリカ ヘンリーフォード ヘルスシステム 神経学講座

Chair, Department of Neurology, Henry Ford Health System

座長 :

永山 正雄先生

国際医療福祉大学大学院医学研究科神経内科学 教授
国際医療福祉大学熱海病院 副院長

抄録 :

※pdfが開きます(208KB)

第46回 日本集中治療医学会学術集会(2019年3月1~3日、会長:京都府立医科大学付属病院集中治療部 橋本悟先生) にて教育セミナーを共催させて頂きましたのでご報告申し上げます。

座長:永山 正雄先生
▲ 座長:永山 正雄先生

演者:ステファン メイヤー先生
▲ 演者:ステファン メイヤー先生

演者のMayer先生は、ニューヨーク コロンビア大学神経科・脳神経外科教授、マウント・シナイ病院神経集中治療部長を務められた後、アイカーン医科大学で集中治療部を創設。2009年~2011年にはNeurocritical Care Societyの会長を務められるなど集中治療、神経集中治療、神経学分野において第一人者としてご活躍されておられます。

過去には、2010年の第13回日本脳低温療法学会に来日されて「発熱コントロールとシバリング」に関するご講演をして頂きました。また本学会中には海外招請講演「Neurocritical care 2019: Recent advances and future frontiers」として、Neuro ICUの重要性、神経集中治療において重要な管理ポイントなど、神経集中治療全般の2019年の見通し、今後の取り組みについてご講演されました。

本教育講演では、デジタル瞳孔測定が正確な脳幹の危険状態の評価を行い、心停止後の神経メカニズムの損傷に対する明確な指標となりうる可能性についてご講演頂きました。

  • 脳幹は非常に重要な臓器であり、脳幹の観察には瞳孔測定が有用である。
  • 瞳孔測定は確立された重要な臨床所見であり、古くから懐中電灯やペンライトを用いて瞳孔測定を行っている。
  • しかし、ペンライトを使用した瞳孔評価は、観察者間での数値のばらつきが大きく(最大39%)、信頼性は著しく低いことが報告されている。

とされ、瞳孔測定の機器として、瞳孔記録計NPi-200をご紹介されました。

NPi-200の有用なポイントとして

  • 観察者と関係なく、正確で信頼でき、そして客観的な瞳孔の大きさと反応性のデータを測定すること。
  • 瞳孔の大きさと反応性は数値や図表で表示されるため、他のバイタルサインと同様に、潜在的な変化を経時的にトレンドとして捉えることができる。

を、挙げられました。アメリカではすでに345施設以上の病院でNPi-200を使用しており、アメリカの脳神経センターTop50のうち68%の施設で、NPi-200を採用しているとのことです。また、AANN (米国脳神経看護協会)やAACN(米国クリティケア看護協会)のガイドラインにおいて、瞳孔測定に関する新しいセクションが設けられ、瞳孔記録計の使用について記述されていることも、お話しされました。

データ表示 結果画面2

12時間(両眼)トレンド

瞳孔記録計に関する文献紹介では、主な内容として、[ペンライトによる瞳孔反応の判断は、主観的であり、観察者によるばらつきがある]、[NPi (神経学的瞳孔指数)とICPには相関性がある]、[瞳孔記録計を使用することにより看護時間の削減ができる]などです。多くの文献をご紹介頂きましたが、その中でも特に印象に残った2つの文献が以下になります。

外傷性脳損傷の症例報告
(Saved by the Pupillometer! – A role for pupillometry in the acute assessment of patients with traumatic brain injuries?, 掲載:Brain Inj. 2018;32(5):675-677.)

  • 手術前室にて、ペンライトを用いた標準的な瞳孔検査では、両側の対光反射は消失していると判定され、神経学的状態を考えると手術をしても回復は非常に厳しい状態であると判断され、手術は中止となり、脳死判定を待つためにNeuro ICUへ移送された。
  • Neuro ICUにて、瞳孔記録計NPi-200を用いた瞳孔測定を行った所、瞳孔反応が見られ、脳外科医が再び討論し、緊急開頭血腫除去術を施行することとなった。
  • 片側右半身不全麻痺は残ったものの、術後の回復は良好であり、リハビリ施設へ転院となった。
  • 本症例の患者は瞳孔記録計(NPi-200)によって救われた。

ヨーロッパで行われた多施設共同研究
(Quantitative versus standard pupillary light reflex for early prognostication in comatose cardiac arrest patients: an international prospective multicenter double‑blinded study, 掲載:Intensive Care Med. 2018 Dec;44(12):2102-2111)

  • 心停止後昏睡状態である患者において、[神経学的瞳孔指数;NPi]は、心停止後患者の不良転帰の予測値として、陽性的中率(PPV)、特異度ともに100%であった。
  • 瞳孔記録計(NPi-200)を用いた定量的測定は、ペンライトを用いた標準的な瞳孔検査よりも、正確に3ヶ月後の神経学的転帰不良を予測した。

ペンライト(主観的定性観察)によるバラツキと、瞳孔記録計(客観的定量計測)による正確性について、これまでにも多くの文献がありましたが、1つ目の内容は、瞳孔記録計NPi-200が臨床判断に用いられたことによって、患者様の予後を改善された具体的事例でした。今後日本においても、さらにNPi-200が普及されることにより、皆様の一助になるのではないかと感じました。2つ目の内容から、瞳孔記録計を使用し、信頼性の高い心停止後の予後予測によって[蘇生後ケアのカスタマイズ]が行えないかと感じました。

最近の学会発表において、瞳孔記録計だけでなく、脳波モニタリングのaEEGパターンを用いることによる[心停止蘇生後患者の神経学的予後予測]ができる可能性や、これらを用いることによって、患者様の重症度にあわせた[蘇生後ケアのカスタマイズ]が可能となりうるとの発表があります。

現在、予後予測に関して、瞳孔記録計、脳波モニタの何れかを使用して、ROSC後、0時間に予測できたものから、24時間後以内、もしくは48時間以内に予測できたものなど、複数の発表があります。しかし、両機器を併用した発表はありません。瞳孔記録計とaEEGモニタの両機器を用いることで[蘇生後ケアのカスタマイズ]の推進となるとなるのではないかと感じています。

弊社では、[神経モニタリング]をはじめ、[脳神経蘇生][神経集中治療]に関する学術情報のご提供を目的とした会員制サイト【Neuroモニタリング倶楽部】を設けております。瞳孔記録計(NPi-200)の要約付き文献リストのご提供や、これまでの学術集会での共催講演の動画配信もございます。是非、ご登録ください。

最後に、円滑な進行で活発なセミナーに導いてくださった座長の永山先生、素晴らしいご講演をされたMayer先生に心より感謝申し上げます。

【Neuroモニタリング倶楽部】 ~良好な神経学的予後のために~

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アイ・エム・アイ株式会社 IMI.Co.,Ltd

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