セミナー情報

日本臨床麻酔学会 第40回大会 共催セミナー20
「心停止蘇生後患者への体温管理療法と脳神経モニタリング
(TTM and neuro-monitoring in postcardiac arrest patients)」ご報告

  • 掲載:2020年12月
  • 文責:クリティカル・ケア部
日本臨床麻酔学会 第40回大会 共催セミナー20<br>「心停止蘇生後患者への体温管理療法と脳神経モニタリング<br>(TTM and neuro-monitoring in postcardiac arrest patients)」ご報告

日本臨床麻酔学会 第40回大会(会期:2020年11月12~14日)において、座長に東京医科大学病院・麻酔科学分野・内野 博之先生、演者にスウェーデン ルンド大学 Hans Friberg先生をお招きし、「心停止蘇生後患者への体温管理療法と脳神経モニタリング(TTM and neuro-monitoring in postcardiac arrest patients)」と題したセミナーを共催しましたので、ご報告申し上げます。

共催セミナー20
配信期間 :

2020年11月6日(金)~11月30日(月)

演者 :

Hans Friberg(ハンス・フリーバーグ)先生
ルンド大学(スウェーデン)
麻酔・集中治療医学 教授

座長 :

内野 博之先生
東京医科大学 麻酔科学分野 主任教授

抄録 :

※pdfが開きます(138KB)

Hans Friberg(ハンス・フリーバーグ)先生

Hans Friberg先生は、神経保護、神経学的予後TTMなど蘇生後ケアを中心とした様々な研究の第一人者であり、これまでも日本集中治療医学会学術集会において「心停止後低体温療法時における脳機能モニタリングとしてのaEEG」、「心停止後の脳動向が見える!持続脳波モニタリングとaEEG」、「NeuroMonitoring in the ICU -ICUにおける神経モニタリング-」などご講演いただいております。

心停止蘇生後患者への心拍再開後ケアにおいて、心肺蘇生国際ガイドライン(ILCOR)2010では、[目標体温32℃~34℃の低体温療法]が推奨されていました。2013年、Niklas NielsenらによるTTMトライアルの発表(以下:TTMトライアル2013)により、ILCOR2015では、[32℃~36℃の体温管理療法]の推奨に変更されました。それらの背景を踏まえ、本セミナーでは、Hans Friberg先生が取り纏めを行う[TTM2トライアル]についての近況や、心停止後ケアにおける脳モニタリング、ヨーロッパ蘇生協議会2020ガイドラインドラフト版について、ご講演いただきました。

「Targeted Temperature Management at 33°C versus 36°C after Cardiac Arrest」 N Engl J Med 2013; 369:2197 – 2206
概要:院外心停止後昏睡状態の患者において、33℃と36℃の体温管理療法を比較。死亡率、転帰良好の割合に有意差を認めず、33℃の低体温療法が36℃の体温管理と比較し、利益が得られるという証拠は得られなかった。

< 用語解説 >

心停止 :cardiac arrest(以下CA)
院内心停止 :In-Hospital Cardiac Arrest(以下IHCA)
院外心停止 :Out-of-hospital cardiac arrest(以下OHCA)
目標体温管理 :Targeted temperature management(以下TTM)

< 用語解説 >

心停止
cardiac arrest(以下CA)
院内心停止
In-Hospital Cardiac Arrest(以下IHCA)
院外心停止
Out-of-hospital cardiac arrest(以下OHCA)
目標体温管理
Targeted temperature management(以下TTM)

【最適な体温は何度か?】

最近の大きい研究(2017年)では、35,000人を対象に正常体温を調査し、中枢温の平均は36.6℃であり、正常体温の上限は37.7℃だったと報告がありました。これらをもとに、以下のようにお話しされました。

  • TTM2トライアルの発熱の定義を37.8℃に設定
  • CA後のTTMにおいては、未だにに最適な体温の模索が継続されている
  • 最適な体温の研究には、[より深いTTM][長いTTM][TTMのタイミング][個別ケア]など様々な異なるオプションが必要である
  • その中でも、1つの目標体温やTTMのタイミングが、すべての患者に最適ではないため、[個別ケア]も非常に重要である

次に、TTMトライアル2013発表後に[TTMがどのように変化したか]、また[最近のTTMに関する研究]について文献を用いてご説明されました。

TTMトライアル2013発表後のTTMの変更

Changes in Temperature Management of Cardiac Arrest Patients Following Publication of the Target Temperature Management Trial

TTMトライアル発表後のCAの体温管理の変化(Crit Care Med 2018 Nov)

オーストラリア/ニュージーランドで実施された大きいトライアル。16,200人を対象に、TTMトライアル2013発表後のCA患者の体温管理の変化を調査したところ、広範囲で目標体温の変化が生じ、ICUでの平均最低体温の上昇と発熱頻度の増加がみられ、院内死亡率も同様に上昇した。

最近のTTMスタディ

Targeted temperature Management for Cardiac Arrest with Nonshockable Rhythm

ショック非適応リズムのCAに対するTTM(N Engl J Med 2019 Oct)

CA患者(OHCA:73%、IHCA:27%)のショック非適応リズムの患者581名(asystole:80%、PEA:10%、不明:10%)に対する、33℃と37℃のTTMを比較。ショック非適応リズムで自己心拍再開(以下:ROSC)した患者のうち、33°Cで24hの低体温で管理された群は、37℃の平熱管理で管理された群よりも、90日後の転帰良好(CPC1-2)となった患者が多かった(33℃:10.2%、37℃:5.7%、正常体温群との差 4.5%、95%CI 0.1-8.9(p = 0.04))。死亡率に差は認めなかった。

サブグループ解析にて、15分以内にROSCした群としなかった群を比較したところ、15分以内にROSCした群の方が、33℃の低体温療法群で明らかに転帰良好だった。また、IHCAとOHCAの両群において、33℃の低体温療法は、軽度の重症度患者の転帰改善と関連していた。

Association of Initial Illness Severity and Outcomes After Cardiac Arrest With Targeted Temperature Management at 36℃ or 33℃

36℃または33℃でのTTMを実施したCA患者の初期の重症度と転帰との関連(JAMA Netw Open 2020 Jul)

1,319名のCAを対象とした単一コホート研究。重度の脳浮腫および高度に悪性度の高いEEG患者408名(30%)を除外した911名を初期(<6h)の重要度PCAC(ピッツバーグCAカテゴリー)1-4によって層別化。最も重症度が高いCA患者は、36°CのTTM群よりも33℃のTTM群が、より高い生存率と関連していた。軽度から中等度のCA患者は、36℃のTTM群で、より高い生存率と関連した。また、重度の脳浮腫または高度に悪性の脳波を有する患者は、TTMに関係なく転帰が不良だった。

冒頭でHans先生が述べられたように、まだまだ最適な目標体温は明確ではなく、今後、患者様の状態や重症度など、患者様の状態にあわせた個別体温、個別のケアが重要になってくると感じました。

TTM2トライアル < アップデート >


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そして、TTM2トライアルについて、ご説明されました。

この研究では、14ケ国の61の地域、20か月間(2017年11月~2020年1月)に1,900人の患者が登録(3.9人/日)され、データ収集は終了しており、2021年3月に結果を発表予定とのことです。

  • TTM2トライアルでは、心疾患が原因であるOHCA後の患者を対象に[低体温療法(33℃)]と[早期の発熱治療(> 37.7℃)]を比較している。
  • 33℃へ急速冷却を行う低体温療法は、[正常体温]および[発熱の早期治療]と比べ、生存および転帰を改善するのではないかと仮説をたてた。
  • 研究デザインは、OHCA患者を[33℃群]と[>37.7℃群]にランダムにわけ、両群とも体温管理機器を用いて体温管理を行った。
  • 主要転帰は、6か月後の死亡率と24か月後の転帰を調査。

【CA後ケアにおける神経モニタリング】

CA後ケアにおける神経モニタリングについて、[脳波][バイオマーカー][定量的瞳孔測定]を使用したCA後の予後評価の有用性について、文献を用いてご説明されました。

Quantitative versus standard pupillary light reflex for early prognostication in comatose cardiac arrest patients:an international prospective multicenter double-blinded study

昏睡状態のCA患者における早期予後予測のための定量対標準瞳孔光反射計測:国際前向き多施設二重盲検試験(Intensive Care Med 2018 Dec)

瞳孔記録計 NPi-200
瞳孔記録計 NPi-200

CA後昏睡状態の患者に対し、標準的な手動瞳孔測定と定量的瞳孔測定の予後予測精度を比較。定量的瞳孔測定は、CA後1日目と3日目に神経学的瞳孔指数(以下:NPi)が2以下の患者の転帰不良の予測に対し、51%の陰性適中率と100%の陽性適中率を示した。定量的瞳孔測定は、転帰不良を予測する優れた予測精度があり、偽陽性はなく、標準的な手動瞳孔検査よりも有意に高い特異度を示し、標準的な手動瞳孔測定よりも優れたパフォーマンスを示した。

TTMの個別ケアを行うには、患者様の重症度を知ることが大事であると言われています。定量的瞳孔測定だけではなく、脳波やバイオマーカーも優れた予後予測精度があり、様々なモニタリングを組み合わせることで重症度の判定が早期より可能となり、TTMの個別ケアが行うことができるようになるのではないかと感じました。

【CA後ケアにおける神経モニタリング】

最後に、ヨーロッパ蘇生協議会2020のガイドラインのドラフト版についてお話しされました。

蘇生後ケアでの推奨事項としては(2015年と大きな変化はなく)、以下の通りです。

  • 体温管理:一定体温32~36℃ 24h以上:発熱を72h以上予防
  • 正常酸素状態と正常炭酸ガスを維持:保護換気
  • 血行動態を最適化する
  • 心エコー検査
  • 正常血糖を維持
  • 発作の診断/治療(EEG、鎮静、抗けいれん薬)
  • 予測を少なくとも72h遅らせる

これに加え、予後のための臨床検査にて、定量的瞳孔測定を可能にする瞳孔記録計(NPi)の使用が新しく追加推奨されました。


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また、2020年は、[CAから72h以上経過しても、GCS-Mスコアが3以下で、少なくとも2つの神経学的予後評価を用いて診断する]アルゴリズムに変更され、2015年のアルゴリズムより、簡便に評価できることなどをご説明されました。

本講演は、蘇生後ケアにおける最近の傾向や、TTM2トライアルのアップデート、ヨーロッパ蘇生ガイドラインのドラフト版など、新しい情報を早く知ることができ、多くのことを学べた貴重な内容でした。

最後に、COVID-19 の影響によりHans Friberg先生も日本に来日していただくことはできませんでしたが、Web開催という特殊な状況の中、円滑にWeb講演を導いてくださった座長の内野先生、素晴らしいご講演をして頂いたHans Friberg先生に心より感謝申し上げます。

なお、本講演は、近日中にDVD化する予定です。ご要望のあるかたは、IMIのホームページ、もしくは、営業担当者までお問合せください。ご視聴いただき、少しでも皆様のお役にたてれば幸いです。


弊社では、【神経モニタリング】をはじめ、【脳神経蘇生】【神経集中治療】に関する学術情報のご提供を目的とした会員制サイトを設けております。瞳孔記録計(NPi-200)の要約付き文献リストのご提供や、これまでの学術集会での共催講演の動画配信も行っていますので、是非、ご登録ください。

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