セミナー情報

第49回日本集中治療医学会学術集会 教育セミナー2「今後の体温管理療法(TTM)の展望と洞察」ご報告

  • 掲載:2022年05月
  • 文責:カスタマーソリューション推進部
第49回日本集中治療医学会学術集会 教育セミナー2「今後の体温管理療法(TTM)の展望と洞察」ご報告

第49回日本集中治療医学会学術集会(2022年3月18日~20日、会長:川前 金幸先生 山形大学医学部麻酔科学講座 主任教授)がWeb開催されました。弊社では、株式会社メディコンと共に、「今後の体温管理療法(TTM)の展望と洞察」 と題した教育セミナー(イブニング)2を共催いたしました。

本セミナーでは、2名の先生方により、心停止後症候群(PCAS)におけるTTMについてご講演いただきましたので、ご報告申し上げます。

イブニングセミナー2
日時 :

2022年3月19日(土)16:10~17:10

会場 : Web配信 第10会場
講演① :

「PCAS TTM レスポンダーは脳損傷の程度から見つけよう!」
黒田 泰弘 先生
香川大学医学部・医学系研究科 救急災害医学 教授

講演② :

「重症度分類で選択した心停止後症候群患者の体温管理療法の効果:多施設無作為化比較試験の挑戦」
内藤 宏道 先生
岡山大学学術研究院医歯薬学域 救命救急・災害医学 准教授
JAAM R-CAST OHCA study group

座長 :

志馬 伸朗 先生
広島大学大学院医系科学研究科 救急集中治療医学 教授

共催 :

第49回日本集中治療医学会学術集会
株式会社メディコン
アイ・エム・アイ株式会社

抄録 :

※pdfが開きます(106KB)

講演①:「PCAS TTM レスポンダーは脳損傷の程度から見つけよう!」
演者:黒田 泰弘 先生(香川大学医学部・医学系研究科 救急災害医学 教授)

黒田先生は、TTMに関するガイドラインの動向や、低体温療法の有用性を示す過去の研究をご紹介された上で、TTMレスポンダーを見つけることの重要性や、脳損傷の程度を知るためのパラメータについてご講演されました。

低体温療法の脳保護効果は何十年も前から繰り返し報告されていることや、2013年にTTM trial1) が発表された後、目標体温を上昇させたことで転帰が悪くなった国があることをご説明され、TTMに対して効果を示す患者を選択し、層別化することが重要であるとお話しされました。患者の層別化を行うためには、全身パラメータや脳パラメータが重要であり、その中でも持続脳波モニタリングやNPi、バイオマーカー、CT所見などが有用である可能性について詳しくご解説されました。

今後はTTMレスポンダーを探す研究が必要であり、TTMレスポンダーが見つかるまでは早期冷却が必要であることや、NPiや脳波を使用した層別化ができる可能性があること、High Quality TTMを行うために目標体温に関わらず体温管理デバイスを使用することが重要であると纏められました。

講演②:「重症度分類で選択した心停止後症候群患者の体温管理療法の効果:多施設無作為化比較試験の挑戦」
演者:内藤 宏道 先生(岡山大学学術研究院医歯薬学域 救命救急・災害医学 准教授 JAAM R-CAST OHCA study group)

内藤先生は、TTMの有効性や、PCASの重症度とTTMの関係についてご説明された上で、現在内藤先生が中心となって計画されているRCT(JAAM R-CAST OHCA study※1)の概要についてご解説されました。

< 用語解説 >

※1 日本救急医学会の学会主導研究「中等度障害の心停止後症候群に対する低体温療法と常温療法の30日神経学的予後に関する比較:多施設無作為化比較試験」(https://www.jaam.jp/info/2021/info-20211105.htmlより)

< 用語解説 >

※1
日本救急医学会の学会主導研究「中等度障害の心停止後症候群に対する低体温療法と常温療法の30日神経学的予後に関する比較:多施設無作為化比較試験」(https://www.jaam.jp/info/2021/info-20211105.htmlより)

PCAS患者へTTMを行うことについて、「TTMの重要性については疑う余地はないが、低体温療法と常温療法ではどちらが良いのか議論の余地がある」とし、日本とTTM2 trial2) の背景の違いや、様々な重症度によるTTMに関する過去の論文についてご説明されました。

それらを踏まえ、「重症度を選択した上で、TTMを行う必要があるのではないかと考えている」とお話しされ、現在計画中の日本発の多施設研究の概要についてご紹介されました。2021年に日本から発表された重症度によるTTMの効果について検討した研究3)でも使用されたrCASTスコアを用いて、最もTTMの効果が高いと推測される重症度(中等症)の患者を選択し、低体温療法または常温療法を行った後、30日後の神経学的予後の違いを検証されるという内容です。2022年度内に症例組み込みが開始される予定であり、参加施設は現在もまだ募集されています。日本発のRCTが公開される日を楽しみにしています。

最後の質疑応答では、診療報酬の内容が改定されたこと※2や、日本でRCTを行う意義、TTM中の管理についても詳細にお答えいただき、講演終了となりました。

< 用語解説 >

※2 2022年4月より、「L008-2 低体温療法」は「L008-2 体温維持療法」に名称が変わり、算定条件の目標温度が35℃以下から36℃以下に、維持時間が12時間以上から24時間以上に変更されています。

< 用語解説 >

※2
2022年4月より、「L008-2 低体温療法」は「L008-2 体温維持療法」に名称が変わり、算定条件の目標温度が35℃以下から36℃以下に、維持時間が12時間以上から24時間以上に変更されています。

開催形式の急な変更にも臨機応変にご対応いただき、素晴らしいご講演をされました黒田先生、内藤先生、座長をお務めいただき、スムーズにご進行いただきました志馬先生に、心より感謝申し上げます。

↓本セミナーのDVDは、下記よりお申込みください。↓

DVD・ハンドブック等 無償提供のご案内

【 論文 】

  • 1) N Nielsen et al. Targeted Temperature Management at 33°C versus 36°C after Cardiac Arrest. N Engl J Med 2013; 369:2197-2206
  • 2) J Dankiewicz et al. Hypothermia versus Normothermia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest. N Engl J Med 2021; 384:2283-2294
  • 3) Nishikimi M, Ogura T, et al. Outcome Related to Level of Targeted Temperature Management in Postcardiac Arrest Syndrome of Low, Moderate, and High Severities: A Nationwide Multicenter Prospective Registry. Crit Care Med. 2021 Aug 1;49(8):e741-e750.

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